よみびとしらず。

あいどんのう。

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2021-06-27 08:46:09 | 散文
潮の巡りを勘繰(かんぐ)るなかれと逆さまになったお月様に同じく逆さまに落ちていった真っ向勝負の鳥の果て矢の落ちた場所にあなたは佇(たたず)みなにが運命だと鼻で笑ったどうにかして遠ざけたかった毎日に操るすべもなく時間は進む出会うはずもないあなたとの再会を果たさないための道標をば海に求めてわたしは足を捨てて鰭(ひれ)を得た逆さまに歩めばいつしか重なる本当に避けたかったわたしとあなたは交えずにそれでも繋 . . . 本文を読む

夜と海

2021-06-26 11:52:50 | 散文
異なる海に放り出されたわたしの肌にこの塩は合わぬと自分の涙でその水を埋め尽くそうとしたさかなはひとり泳ぎ方も忘れて瞳を閉じたそのまま空に落ちていくことも能わずにただ彼を慰めるためだけの夜が訪れる力強く否定された力強さに押し負けてさかなは息の仕方も忘れてしまうくらいの孤独を堪(た)えるただ愛しいのだとそれだけの思いに囚われて海の水の違いにも最早気づかないさかなはあるべき場所を見失い海を離れて地を駆け . . . 本文を読む

星と舟

2021-06-24 11:06:50 | 散文
忘れないことしかできないのにそれでも忘れてしまったいくつかの出来事は星になった誰も信じないそんな戯れ言を夜空に託してわたしは眠れないまま朝を迎えるそうしてやってきた希望にあふれて笑うしかない朝の入り江に待ちわびた荷を乗せないままの舟は着く夢も現実も枯れ果てたとて進むしかない舟のみよしにいつしか瞬いた光は浮かぶ星になれないままで肩を落としたあの日の思い出に涙は揺らぎもう覚えていない昔の話を魚は歌い継 . . . 本文を読む

レイン

2021-06-23 14:11:51 | 散文
ダイレクトには伝わらないこの感情に大きな声で馬鹿野郎だとそう叫んだ心の正しさを反映した空は土砂降りの雨泣いて笑えばどこ吹く風ぞとさらわれて此処にあるのはただの青空こんなにも綺麗じゃないと少し俯いたこの目は渇いて雨を求める優しい嘘で塗り固められながらこんなふうに形成された星のかたちに届かぬ願いはその場所に贈られた何度でも空には大切な約束事だけが取り残されて雲は重なるさあ雨降れよと草木はそよぎわたしの . . . 本文を読む

Hello

2021-06-21 08:39:06 | 散文
長き日に乾杯と口づけを交わしたのはもう覚えていない約束事ひとつただいまとさようならを幾重にも繰り返した今日からはまたお帰りなさいの声響くまで遥か彼方の空のそば近くあなたはわたしの隣で微笑んでいる . . . 本文を読む

雷雨

2021-06-20 10:45:27 | 散文
夜に寝たからと怒るあなたの理不尽な苛立ちを受け入れた滂沱(ぼうだ)にあふれたあなたの思いを汲み取った夜空に一閃の嘆いて音の鳴る稲光春に似たあなたは泣き濡れてわたしは塞いでいた耳を研ぎ澄ます明かりは隠した夜の陰りにわたしは欠伸ひとつして雨を待つあなたに降る雨を待ちわびてふたりは黙って鼓動を重ねた  雷雨は夜のおとなしさを引き連れるわたしを眠りから引き剥がす雷雨は訪れて明かりは音を立てて夜を破壊するす . . . 本文を読む

2021-06-19 11:12:38 | 散文
つながりが保てないと嘆くあなたはだから痛いメに遭わせてやろうと嵐を呼んだふたりの距離はますます離れて四季は遠からじ天と地のあいだの全てを満たしたこの網膜ではとらえきれない場所にあるのはあなたの本音と隠した涙なんにも見えないとあなたは俯くわたしの閉ざされた眼光に夜昇る月はとてもよく似ていて唾を吐く噛みしめた思いは幾重にも偽物の空に美しい星々を語り継ぐこの目に落ちてきたお星様ひとつずつみんな誰にも見え . . . 本文を読む

HOPE

2021-06-18 12:26:52 | 散文
透明な身体は光を受けてその姿かたちに色を与えられたそれは誰も気がつかない窓の内側持ち合わせた翼は背負ったままで外して軽くなることも動かして空を飛ぶこともともに望んでどちらも選ばずこの手のひらにある不幸せを虫けらはひとり鼻で笑った透明な身体は光を浴びて色づいた姿かたちはとても誰かに見せられたものではないと自虐を重ねて空を仰げばいつも何処かで聞いたことのある優しい言葉ばかりが宙をさすらうそんなことはも . . . 本文を読む

色彩

2021-06-15 01:41:10 | 散文
水を食み身体は燃えてその赤を知る情熱に水を差したあなたは傘を差す降る雨に触れたくて傾けたその傘は藍色未だ水を得た魚に憧れてわたしはさして上手くもない歌を口ずさむ泡沫(うたかた)の弾かれた黄色い閃光にくらくらと目眩(めくらま)し瞳を閉じたその暗闇の向こう側にある草原に立つみどり生(お)ふ風に流された雲は遠くに有りてわたしのすぐ隣にいつだってあなたは微笑んでいた紫色の夜の月めがけて   空を駆けていく . . . 本文を読む

アチコチ

2021-06-14 18:04:21 | 散文
コチラだけ見てろという声の根拠もないままわたしは次第に傾いてどちらがコチラなのかも定まらずふらりふらりと現実と鏡を行き来するやがて音は途絶えた此処は何処かと誰に問へば返ってくるのかわたしの本当の在処とは定点にある光の指し示す方角を其れはコチラで此れはアチラだと正反対の回答に立つわたしはそのまま落下してくるくると渦を巻いた海は全てを拒絶したそして現れた大きな鯨がぜんぶを飲み干せば朝はやって来る誰の声 . . . 本文を読む

ヒメ

2021-06-13 03:30:20 | 散文
目は閉じましょう良く眠りましょうと安らかに穏やかな夜を保ったままで海の底に津波は押し寄せた水に水をかけ合わせてわたしはあなたの顔を見ることもなくすれ違う掛け違えることで産まれたこの感情を胸に抱いたままわたしは眠れずに何度でも深くため息を吐くその泡沫(うたかた)に海を無くしたこの場所はまた新しい夜を焦がれて落ちていく沈んだその先に海を見つけた眠り姫は目を見開きて人魚となった穏やかなままではいられない . . . 本文を読む

サン

2021-06-12 06:26:01 | 散文
お日様は三つに割れて丁度良きさまの水の入り江にてわたしは佇むただ愛されたかったのだと囁いた水を飲むわたしたちを照らすのは本来の光を失った真昼の太陽 それは輝きを解き放ち眩しさに目が眩み泣いていたわたしを連れ去った亀は池の辺(ほとり)から顔を出して月を仰いだ真昼の空に雲は浮かぶ昨日に抱いた感情を大いに貪り太陽はどんどんと丸くなるやがて満ち欠けていく時間の檻に囚われたままのお月様は脱出を試みて狼に食べ . . . 本文を読む

ウォーター

2021-06-08 09:31:35 | 散文
この醜さをどうか全ての水で洗い流してとそんな願いは受け入れられて6月に降る雨はいま何処(いづこ)へと此処彼処から音楽は流れて耳を塞いだわたしの右目はこぼれ落ちたまま空を睨んだそこに降る雨の音すら涙はかき消す海に沈んだのはあなたの本音と欠けたお月様の琴線にふれたわたしの柔らかな掌(たなごころ) . . . 本文を読む

2021-06-07 14:18:59 | 散文
アノヒトのひとに非(あら)ざるという嘘を耳を塞いだ猿に模倣したひとのまたひとの振りをしてわたしたちは笑う偽物に歓喜して本物を罵倒したどちらかの願いが本当だったのかも水に晒(さら)してそれで済むのだと思い違えた太陽のある空へ逆さまに落ちていったのはわたしが本当に大切にしたかったことそれがどこの誰かも分からずにわたしは鏡にうつったダレカさんに罵声を浴びせる耳を塞いだ猿に模倣して全ては何事もなかったかの . . . 本文を読む