夜に手をとられて海へもぐったちりばめられた貝殻の星にマンボウを枕に眠りにつくと空にはさかな 虹かかり珊瑚(さんご)は餞(はなむけ)の歌うたう一握の砂にこめられた時の流れは西へ東へかかる時間は砂にまぎれてかくれんぼ時流は曖昧模糊(あいまいもこ)のまま目眩(めくるめ)きいつか全てを忘れ去る一緒に遊んだひかりと影に夜はおおいかぶさりその身を盾とする大きな不安に負けないようにクジラはどこまでも突き進むなに . . . 本文を読む
空のさかなは海に焦がれたおおきなその身を手放してちいさき魚に身を宿すそうして魚は針につられて釣られた魚は人間に食べられたひとは空の彼方に思いをはせる行ったこともなき空の彼方を流れゆく雲の間に間に青空のぞく青い目がみたあこがれの里その中にもぐりて呼吸をとめた息継ぎにくちびるを交わした人魚は空へ月の待つ夜へとおちていく暗やみに雲のかげもきこえずただ波の音だけが静かに続いた懐かしき言葉は宵闇にまぎれて夢 . . . 本文を読む
月と太陽がのぼる前からずっとそこにあったものは
いまだ手にとることあたわず
迷い路に猫の鳴く
先導をゆく者たちの姿は霞(かす)み
手のひらのかたちまでもうやむやに
それでもなくさずここにあったもの
無くしてないのに見失い
一本道で迷子になった
器用にさ迷うぼくたちは
不器用な生き方だと暗示をかける
満ちて欠けゆく巡る空から
落ちた星に乗って現れたヒーローに
愛のなんたるかを問えば笑って
それ . . . 本文を読む
行ってきますとおかえりなさいは重なって傘をさす君にあたたかな太陽はふりそそぐずっと待っていたよと呼ぶ声をいつまでも無視して遠ざかっていたわたしにも太陽はさんさんとかがやいて再会の歓びを謳歌(おうか)する呼ぶ声もなくふるえた涙この目からこぼれ落ちる雨に傘をさしだしてくれた君のぬくもりに夜は救われて海は青色のひかりを放つあなたはわたしの手を引いて暗やみの中から真昼の空までつれだしてくれたそのやさしさに . . . 本文を読む
さいごに流したあなたの涙は海へと辿り着き
また新たな景色めがけて羽ばたいた
見えぬ朝焼けも明けぬ夜にも
あなたの歌声は高らかに鳴り響び
その奥にある光を伝えてくれた
つぶされた喉にもおさえきれない
ありあまる情熱はあなたの元から解き放たれて
雲間から青空はあらわれる
その青色に焦がれたわたしは
どこまでもあなたを追いかけたいと
飛ぶ鳥に憧れてまた夜を待つ
太陽に包(くる)まれ . . . 本文を読む
懐かしき匂いに海はおちた
水の底
月のふるさと 降る流れ星
ひかり舞う夜にわたしは笑った
おちた夜の海に届け月明かり
月の添い寝に面影ゆれた
夜のしじまにいま帰りこむ
海はおだやかに水の底触れよと
わたしを包み込む月は静かにねむる
良い夢にゆられてわたしも眠る
ともに帰ろう 約束の場所
月のふるさと
水の面(おもて)の海の底
懐かしきかけらにいま手をのばす
そうやってあけた玉手箱
開け . . . 本文を読む
つめたい記憶は海にしずんだそのたからものを探しに月は潜った人魚になりかわりて呼吸をおぼえ月は月であったことを全て忘れたしずんだたからも泡となり目的もないまま人魚はゆれる海のそこ眠る わたしのかけらやがて人魚は歌を口ずさむ人魚の知らない月のみた夢その夢物語に魅せられてひとは海をわたるここにない場所にあるはずのどこかまでいつかみた場所を知る人魚の瞳にかつてみた知らない夜を照らす月明かりその月の明かりに . . . 本文を読む
さにあらんとて
あなたはいつも微笑んでいた
さにあらんとて 恨んだらあかんよ
さにあらんとて 怒ったらいかんよ
さにあらんとて 憎まんといてな
たとえわたしが消えたとて
そうやって消えた
あなたがいない世界でどうして
憤怒も憎悪もあらぬものかと
うつむいた顔は強張りしわは固まる
さにあらんとて 嘆くあなたは美しく
わたしとはあまりに異なるわたし
鏡から伸ばされた指先には触れずに
生温か . . . 本文を読む
海に抱かれ眠るからだ
月は海抱きて夢をみる
魚のみた夢 空をとび
いつかみた朝まで おかえりなさい
おやすみなさい またあした
かけめぐる旭日(きょくじつ)は日の出をくりかえす
まわる まわりて メリーゴーランド
おなじ顔した海は笑って
月のみた夢までわたしを連れていく
満月の夜に
懐かしき歌声は暗やみに響き
わたしの知らない古里はおちた
いまはもう忘れ去られた古里を
大切に抱えて海は笑った . . . 本文を読む
逃げた先に待つ 炎は赤色
青色の炎を求めるわたしは
どこまでも逃げ続けて夜を待つ
あてもなく続く 果てもなき道のうえ
長く暗い夜を追いかけた
青色の炎は暗やみに染まり
きっとあなたの近くにあるから
いつかみた光の色は
すみわたるほどの青色で
もうそれ以外にかける意味など
持てるはずもなくわたしは染まった
あおの炎に
さざれなみ揺れて 海はいざなう
逃げきれるはずもないと穏やかに
炎は赤色 負ける . . . 本文を読む
光はまつろわぬと否定したその内側から溢れいづる光になすすべもなく苦悩した誰も寄り添わぬその苦しみにただひとり耐えぬいて堪(こら)えた果てに内側の光は放たれるそのあとに残されたのは誰も見向きもしない光の残骸救いなどどこにもないと放つ言葉にただ暗やみだけが同化した . . . 本文を読む
眩しく 燃ゆる
海の熱におされてわたしは魅(ひ)かれた
青色のかたまりに飛びこもうとすれども
はね返されて
海には到れずに
すぐそばにあれども届かない
テトラポッドは沈黙を守った
突き上げられた光は月に似ていて
まるで似つかない太陽の空
海の青色はどこまでもあおく
誰よりも孤独に空を仰いだ
あまりにも綺麗な波に揺られて
いつまで経ってもわたしは家にかえられない
おかえりなさいと呼ぶ前に
太陽は . . . 本文を読む
夜に咲く
線香花火みたいに脆(もろ)く 頼りなく
でも目をそらすことができない 小さな灯(ともしび)
あの星の名を知らぬとも
気付けなかった灯の奥に 懐かしき歌は鳴り響く
なりて なりたちぬ
悔やみきれなかったあの悲しみも 過ちも
すべて流されていった流れ星みたく
なにも残らず 誰も知らない
それでもなくならない あなたの足跡
夜にまぎれて駆けていった痕跡(こんせき)を追う
夜に咲いた あなた . . . 本文を読む
花いぶき蕾に秘められた隠し事ひとつ風はこび海にさく波間たわむるひとごころ絶えず揺れ 絶えず咲き誇り大いに乱れてひとり泣くその潮風に景色はゆらめき雲は流れて夜を待つ訪れることなきあなたの姿に暗やみに染まる海のなかひとり思いは燃え立ちなお鳴りやまず波音に重なるわたしの小夜曲花さいた海にわたしのいない空はうつされるどこまでも続く青色に花の名も知らないあなたは笑う◯海はおだやかに花の音ゆらした花は海にたど . . . 本文を読む