よみびとしらず。

あいどんのう。

TODAY

2022-06-29 09:46:31 | 散文
月のない朝に星をつかまえてその白色はなんの光かを反射してわたし自身に光はあらずも夜道をテラスはあなたの面影思いに影要り明かりのない夜に感謝したなんにも見えない夜もすがらわたしは月の影を踏みつづけたたん、たとたんとなんのリズムか反響したのは古里の音その祈りから夜のない夜に震えるあなたをわたしは抱きしめて山の光をのみほした . . . 本文を読む

BLUE

2022-06-23 17:52:37 | 散文
水の色をわすれて青く塗りつぶすどんどんとすり減っていくクレヨンで汚れた指先は水の色にあらず水で洗い流したのは空の色熱は渇いて水を求めたわたしは逃げ水をどこまでも追いかけて袋小路にオウム鳴く鸚鵡(おうむ)返しにひるがえり耳をすませば遠く雨の音身体を忘れてわたしはかえるどこにでもあるような清らかな水をいとも容易(たやす)く繰り返し見捨てて最後に泣いたのはいつの話かいつ見たことかと夜半(よは)の影月は静 . . . 本文を読む

RED

2022-06-22 17:35:06 | 散文
赤の他人も甚だしいなかに囲まれて真っ赤な嘘を吐くそれじゃ嫌だと飛び出したのはみんなひとりでそれを喜んでいたのに悲しくなった寂しがり屋は囲いのなかから思い通りにならない世界に唾を吐くやがて雨は降り怒りはふつふつと込み上げるなんて偽りだらけのこの世の中にわたしもその嘘の一部になっていた赤い情熱の苦し紛れの言い訳を好きも嫌いも欲しくなかったそんな熱をあなたは解脱だとささやいた赤く染まる空色を夜は静かに受 . . . 本文を読む

泪(なみだ)

2022-06-21 14:06:34 | 散文
目は涙を欲していた眠れないよるに眠らずのわたしはただ眠りたいのだと泣き出したあの頃を思い出していまは夜もすがらいつもたやすく叶うことのない願い星は空に流れてわたしの内側に留まるあなたのことばはわたしの声となりなにを望むのかも分からないまま砕けた感情に泣くこともなく目を醒ませばすべてを忘れるなんて幸せな朝の光に大きな欠伸(あくび)ひとつしたその目に、なみだ . . . 本文を読む

みずかがみ

2022-06-17 10:47:14 | 散文
鏡を水に沈めた見ずにすむよう見せぬよう魅せられたのはかつての過ちそこにあったはずの物語はいつの世もただ温もりを携えている鏡も見ずに俯いたいつもいつまでもそこにうつる偽物のわたしを水に閉じこめて暗く冷たい場所を栖(すみか)とするそれは化け物に憧れたわたしの願望前を向くことのないその眼差しも全てを受け入れて水を飲み干した空の色は青わたしは鏡に手を伸ばすわたしには見えない瞳に微笑むわたしは月の明かりに少 . . . 本文を読む

2022-06-16 10:44:58 | 散文
あなたは飛び跳ねた白色に星から離れてまるで空高くここはどこまでも自由だと翼を捨ててたどり着いたのは水のある世界草木のむせかえる地中深くに光を埋めた誰にも知られたくない光を跳ね除けたわたしの無音にロバの耳はひくひくと呼応したただ静寂に風は吹くわたしはわたしに忘れ去られて空の青さを歓んでいる . . . 本文を読む

わたし

2022-06-15 10:43:05 | 散文
かずき      さかずきむはいのおうじゃみかづきさかだちよのかげもなくおろされたのはだれのとばりかほのおはもえてあすをなすみずのめぐみのまためぐるまたあしたねとてとてをふりあうそして仲違いしたまま大人になった背中合わせのわたしとわたし . . . 本文を読む

太陽の夜

2022-06-14 10:40:40 | 散文
正味のはなし「それはそんなにあなたのためにやったことじゃない」そんな心根に救われた遅れて取り戻し先に駆けては振り返るいまここにある場所は幾重にも連なるパラパラとしたそのなかの一枚は風に千切れて飛び出したいまわたしの行方は途方に暮れて不安は募るも眼(まなこ)は曇らずつつがなく紡がれず光は明るい空から差しのべられている生きとし生けるものその歓びに水は溢れてわたしは蓋のない世界に抱かれるいなや抱かれたま . . . 本文を読む

ライン

2022-06-11 13:20:43 | 詩(イラスト付)
白線を越えて昇る月影は淡色の夜の色にはまるで似つかないわたしは柔らかな丸みを帯びて月から離れたそれは海に沈んであなたを探すいつか耳にした呼ぶ声を内側を越えてわたしの内面には篭もると決めていたあなたは言葉から乖離したままの月明かり . . . 本文を読む

鮮やかな日に

2022-06-10 10:32:22 | 散文
鮮やかな日にわたしの目は開いてその美しさはあなたの背景に立つ色鮮やかな日はその目にうつらずあなたの瞳はただ何色でも無い海を見たわたしの景色は太陽と涙からなるその穏やかな水の色にも染まらずにいた美しいあなたは鳥の影を追う色鮮やかなる夜に見た夢そのなかに日向(ひなた)の匂いをかぎながら見つめる瞳と違わぬ色のわたしは探し求める影を追う . . . 本文を読む

ナイトメア

2022-06-09 12:27:14 | 散文
かつては蛇に喰べられてせっかく全てを忘れられたのにその幸せを享受せず喰べてもらった悲しみをそれは私のものだと蛇ごと飲み込み全一(ぜんいつ)悪夢にうなされる寝ても醒めても隠し事には誤魔化しきかず明るい夜には御用心カンカンカンと拍子木の鳴るわたしはいまがなにもかも明日かあなたかも分からずにいた誰か助けてのその一言もぜんぶ飲み込むなんて当たり前の朝 . . . 本文を読む

2022-06-08 11:55:04 | 散文
こぼれ落ちたものは悲しみと癒しとほんの少しの出来心なにが悪いかの理由もそえずにそれは良いことだと早合点した全ては正反対に世の習い何もかもは巡りて水と炎は絡まった燃え続けたのはあなたの涙その一雫(ひとしずく)に囚われたままわたしは泣かずに夜を待つこの瞳にはうつらないものばかりに囲まれてまわりめぐるはよくある話耳をすませてとりこぼさぬようそれでも雷鳴(かんなり)芥(あくた)もくたは川に散る夜露の音はか . . . 本文を読む

ずう

2022-06-07 19:07:49 | 散文
いかにかそうまで逆毛立つ獣の面の皮酒気の酔いの絡まぬうちに狸も宵の乾かぬ鳥の羽に手を伸ばす龍の眠りもさまたげならず逆叉(さかまた)の絆にあなたは溺れたやがては酔いしれぬうちに夜明けの晩までつかひは離れず交互に行き交う名も知れぬものばかりを乞うた暁にせめてこの声の届きますように酔うた言葉の帰り道獣も空も海も眠りに入りてわたしはこの水辺にそっと降り立つ失われた声色で高らかに歌う祝福のうたを名もなきあな . . . 本文を読む

ろくてんろく

2022-06-06 00:48:21 | 散文
おくれて取り戻さずにわたしはすれ違う水に濡れたみどり色の葉の香はわずかばかりの雨を待つわたしを求めて黄泉比良坂に行き違うかえることのない呼ぶ声を振り向くなかれと猫は鳴く耳をすませば音は無音に焦がれて快晴の空に雨は降るくるりと廻ればおかえりなさいどうか届けてこの声を海へ通りすがりの待ち人よ . . . 本文を読む