夢を喰うそれは誰の夢かと誰に問いただすべきかも分からずにがむしゃらに夢を追い喰らいて腹の減るやがて朝の光に夜を奪われた獏は眠りに入りて夢を見ることのない暗い肚につもる願望に渇いてたそして誰かの乞うた雨は降り黒い影は見つけたい誰かの夜を待つひとつふたつと時を数えた隙間から鏡にうつる瞳の奥に追い出したわたしの光を見出した . . . 本文を読む
木にあいて水を遣り大地の育みに雷の鳴るまるで稲光が落ちたのはあなたを見つけた刹那の出来事瀬戸際に波打つ月明かりから炎は燃えてこの目に焼きついた待つと決めたのは誰の為かと鐘の音は響きて明るいあしたの夜は明けた時は巡りて機をうかがいてわたしはあなたに一杯の水を用意する . . . 本文を読む
逃げ出したいと夜の場所から白い身体で居場所を示した真昼の空の下で舟を漕ぐ幽霊船は嵐に遭いて空の柄杓に願いを託した現実まで追いかけてきた夢の逃げ道を塞がれた白い身体に獏は喰らいつく早くここから出ていけと乾いた瞳はわたしの祈りを叶えて消えたわたしの開けた瞳からそれからもうずっと泣いている白い身体を手放して大切なあなたの乾いた瞳が忘れられずにわたしは夜の居場所を探してる . . . 本文を読む
白く安らかな眠りについてその柔らかな手のひらに月は口づけるなにも恐れることのない夜は真昼に移行されてあなただけが眠りに落ちたすとんと全てを手放して規則正しく呼吸は刻む身体を預けて眠る場所から月は銀時計に工夫をこらし時の流れは姿を変えた夢は次第に黒味を帯びて「もうすぐ嵐の夜が来るよ」とパッと目を開けた世界にはいつもの夜がやってくる . . . 本文を読む
重なって産まれて遠ざかり彼女は私に背をむけたまま枯れた花は絵となりまるで麗しくその度に震えていたのは誰の肩かと冷たい風は私の代わりに花弁を運ぶ乾いていても水を求めずに潤ってしまえば枯渇する不条理な夜に何にも見えなくしたその優しさは唯一隠されること のない場所を指し示す . . . 本文を読む
ドライフラワーみたいに形の残るものは好きじゃないのと乾いた花びらを握りつぶしたそうやって砕け落ちたのは硝子みたいに透明な景色を反射しそこに映し出されたいくつものわたしは馬鹿みたいな顔して固まったまま握りしめたこぶしはいまもそのかすかな花の香りに賭けていた . . . 本文を読む
あなたを避けてわたしの水はあなた以外を潤したそうしたわたしの喉は渇いてもはや涙のこぼれることもなくそんなわたしにあなたは差し出した一杯の水のるかそるかのささやきに目を閉じたわたしに現実は広がるここはもう満水の歳月に豊潤な涙はどこまでも絶えず補給されていくあなたが差し出した一杯の水の価値観は透明なグラスにからからと揺れるわたしの思いもあなたの声も目を閉じたままの姿には何もうつさずこの身はいつまでもど . . . 本文を読む
明るいソラは海にとけこみあなたは笑った音のない世界に歌は溢れたこぼれ落ちたソラの明るさを海は享受して静かにたゆたうその明るさのほんとうにわたしは心底ほっとして微笑む雲の向こう側にある明るいソラをそのぜんぶを手放して吐き出した空の色は青わたしの身体はその色に染まらず形を保ち青い鳥を内側に囲い込むお前にそれが手放せるかと夜の闇に乗じた誰かの影は誘いこみ 明るいソラの行方は果たして如何(いか)にか ロー . . . 本文を読む
まるで此処は海のなかかのように息は苦しくどこか懐かしく誰の言葉も聴こえない場所そんなところからカラ、カラとからっぽな鈴の音は精一杯にこだましてわたしの言葉は声となる遠い場所からようやく着いたおかえりなさいのその一言を薄暗い扉の前でひとり立ち待つ月は不安定な明るさのまま最大限の笑みを浮かべたそうしていはくまた会いましょう夜の夢にありていまはもう過ぎ去った今宵の約束を取りつけた . . . 本文を読む
片目は落ちて芽吹きて育む大切なものを失ったままのいま豊饒の月は枯れて海を渡った兎は祈りを託されて亀の甲羅に隠るれば片目を瞑る私は果たして誰であるかとあずかり知らずの月明かり照る閉じた片目は誰を探すか落ちたままの涙は海に到りて私達の身体は泳ぎ方を忘れるそうして蹴り上げた大地はカタメの眠る場所閉じこめたままにしたのは誰の為かと鐘の音はただずっとひめやかに わたしに居場所を乞うていた . . . 本文を読む
心を許さずに心許無(こころもとな)く仄暗い辺りであなたを見つけた顔を隠したままのその表情を分かっているはずのものだと早合点し誰にも知られず心を許したわたしは許されることのない浜辺にありて心の在処はいまもなお無くすことのない心から放たれる心無い言葉にある源(みなもと)は海の音にかき消されて青く膿を持つその醜さで顔を覆われたあなたはいつも海の匂いがしてわたしはどうしようもなくあなたに溺れる海のない場所 . . . 本文を読む
迷子の天狗は鼻をへし折って人間と化す学んだ笑顔のぎこちなさから嘘が下手だと称賛された誰も気づかない仮面をはりつけて逆さまに落ち続けてきた成れの果て私はいつまでも下手くそな嘘を吐き彼の人は実に正直者だともてはやされている祭り太鼓の音を懐かめば山の端遠く私はため息ひとつ吐いて夕日に高笑う大きな風にさらわれぬようにわたしたちはいつも空気を読み合う能力に長けていた . . . 本文を読む
足の引っかかり空耳からそういえば今日の天気は良すぎるあまりに猫は見つめる音のない場所雲は急いで逃げ出した空の青さは冴えわたり太陽はますます光を放つあなたの笑顔を心待ちにする場所で振り返り見れば誰もいない道青信号は赤となるそんななか次第に日の翳(かげ)り雲は舞い戻りみどりの風の後押しにわたしはふうと人心地を付く暇(いとま)なく直ちに燃えたパッと火花の散る如くあなたの鋭い眼差しは暗闇のなかにありて輝く . . . 本文を読む
市松模様の輪はめぐり白と黒は曖昧模糊として彩りに満ちたその間から産まれたわけではないわたし自身の身体とともに弱さを愛して高笑いわたしは絶望の振りをする騙し合いっこに付き合ってお月様の満ち欠けに鈴をつければリンと鳴る夜に昇り朝を迎えて見えなくなったあなたの素顔に青空は光を焚きつけてわたしは顔を歪ませ全てを隠した柔らかな光はいまもなおこの身体の内側にありて白じゃなくて黒じゃない主張を繰り返す輪の廻(め . . . 本文を読む