あなたはお元気でいらっしゃいますか
あなたへ会いに行くとちゅうの道で
桜が少しだけ咲いているのを見ました
桜の木は黒いです
桜の花は白いです
雲がふたつにわれていて
そのあいだには青色の空がありました
バスのそとでは雨がふっています
だけどときどき晴れていて
わたしにはよく分からないお天気です
雨がはげしくなってきました
あなたは泣いているのですか?
すべてはめぐるそのなかにあるから
いつ . . . 本文を読む
わたしはあなたに伝えたい
言葉をもたない声の奥から
かつてみた空のいろのこと
たぶん泣けないあしたの話を
大海を知らぬ蛙のたわ言は海へ出た
波にのまれ
誰の耳に届くことなくとも
大海は確かにその声をみた
思いは発する声もたず
言葉は明瞭なかたちすらもたずに
つながりは遮断されてなお途切れずに
見えない糸は絡まる私の思いとは裏腹に
たちきりてなお結ぶものあり
結びてなおたちきるものあり
ばら . . . 本文を読む
「黙っていても何も分からないよ」と私は言った
すると彼女はこう告げた
「語りかけたって、どうせあなたには何も伝わらないじゃない」
伝わらなくても伝えてほしいと
思いはあれども口には出せずに
私はくちびるを噛み
彼女のくちびるも赤く染まった
「ただ傷だけがふえていくんだね」
そう言って笑う彼女の口元だけが私には見えて
どうしても最後まで見えることはなかった
彼女の瞳のおくの色
私しか知らない場所 . . . 本文を読む
一夜限りの逢瀬であったなら
どんなに良かったことでしょう
わたしはあなたに出会わなければ
いつまでもやわらかな毛布に包まれて
ゆれるゆりかごに歌声のせて
あたたかな陽気に目を細め笑い
おだやかなわたしのままでいられたのに
わたしの幸せはあなたと共にあることを
わたしよりもはやく気づいたあなたが
わたしは少しだけ憎いです . . . 本文を読む
いまここにいるあなたはまるで幻のようで
いままさにあなたはここにいるのに
私にはあなたが感じられずに
手を伸ばせばすぐに触れられる
そのことのほうが間違いであるような
そうであるならいったいどんなに良かったか
蜃気楼の塔のまえに立つ
触れることもかなわぬ塔であるならばもういっそ
けれどももう目は離せないことに
私は気づいてしまったから
だから触れることもかなわぬ搭であっても
私はその搭のまえに立 . . . 本文を読む
あなたに惹かれたわたしであったなら
世界は平和に満たされて
争いなんかは起こるべくもなく
おだやかなあなたの微笑みは
あたたかなゆりかごを包みこみ
わたしはいつまでも幸せであったでしょう
自らの足で歩むこともなく
悲しみの涙をこぼすこともなく
咆哮も歓喜もまるで知らない
そんなわたしになっていたことでしょう
あなたのやさしさに救われて
あなたのぬくもりに癒されて
あなたがいたからこそのわたしで . . . 本文を読む
おだやかすぎる陽気にカラス鳴く
カラスの翼から広がる夜に月の姿なし
さやさやとゆらめく木洩れ日のおくに
ひとりささやくひみつの話
ひかりは満ちたりて岩肌白く
すみわたりたるはあおみどり
川は時を運びてとどまるためしなく
おとした涙の行方も知らず
あなたは何も語らずただ過ぎ去った
おだやかすぎる風に包まれて
苦しみと悲しみの交差する彼の地をめざした
あなたの険しきその道に
太陽はどこまでも従いて山に . . . 本文を読む
どこまでももぐる
何もないところから何もないところまで
その道すがらにあるものは
何もないところに彩りを与えて
何もないところから産まれた光は
素晴らしく美しい世界へと広がっていく
どこまでももぐる
どこまでももぐれ
たとえ息苦しくとも
この愛にみちあふれた世界まで . . . 本文を読む
合わせ鏡の迷宮か
場所は変わらず時は重なり
時は変わらず場所は重なる
いまあるここは
いつかみたどこかで
はるかかなたの未來まで
迷い子はいつに迷ったか
迷い子はどこに迷ったか
時も居場所もすべては重なる
八重に八千代に
岩音しみいるみずの声
流れてめぐる
いつまでも迷子
どこにいても迷子
泣いた子のなみだに思いも重なる
一緒にかえろう
おうちへかえろう . . . 本文を読む
さみしい さみしくない
かなしい かなしくない
うれしい うれしくない
たのしい たのしくない
お月様は半分ずつをかかえてくるくるまわる
いきたい いきたくない
いなくなりたい いなくなりたくない
つらい つらくない
くるしい くるしくない
しにたい しにたくない
いきたい ただいきたい
半分ずつの本音はさかさま
けども本当はもっているおんなじ思い
叶わなくとも 叶うとも . . . 本文を読む
光を見つめすぎて落ちた先の穴から這い上がろうともがけばもがくほど
金色の砂はさらさらとこの手のひらからこぼれおちて前には進めない
覚束ない足元は踏ん張りもきかずに立ち姿さえもあやふやなまま
舞台上にかつぎ上げられた私は光に立ち尽くして言葉もでない
まぶしさに目を閉じてなお光は私を追いかけて
逃げ場を失った私にあるのはどちらにつながる細道か
つめたい微笑みで彼女は伝う
「御用のない者容赦せぬ」
. . . 本文を読む
ハロー ハロー
懐かしき宇宙船地九号
あまりに歳月は経ちすぎて
あなたはわたしのことなどすっかり忘れたようでして
それがあまりに悲しくて
わたしは雲となりそらのなかへと消えました
久方ぶりにみる星は
いくぶん変わったようですが
やっぱりあなたはわたしの愛しいあなたに変わりはないから
わたしは十分しあわせなのです
わたしにさっぱり気づかぬあなたにも
わたしとおんなじしあわせが
どこかからきたはるか . . . 本文を読む