否定ではなく受け止めてその苦しさにこそ感謝してそんな無茶振りばかりを繰り返し夜は開けてあしたに繋がるその明るさを回避してきたかつてに希望ありわたしは背後からの歓びに追われてあいも変わらず明日に転んで否定も許容もこんがらがったまま傷を負い祝福をうけて痛みは癒えずに手は繋がれた否が応にも弥(いや)が上にも幸いのすむ結びの場 . . . 本文を読む
当たり前にここにある苦しみに蓋をした過去開けてなにをどうすればいいのか途方に暮れて眠れない夜この胸元に泥濘は居心地の良さに留まりてその正体は泥にはあらずそれはとても美しいものだと嘘を吐く言の葉は清々しさの欠片もないまま青雲と同じ色をしていた本当を否定して嘘つきを定着させたのはよく知る顔ばかりのその行き先は箱のなかこの息苦しさを掴んで離さない指先はどこまでも透明な空に触れているだれかを呼ぶ声はあまり . . . 本文を読む
そこにある思いはかみ砕いて砕かれた砕かずにいたかった筈なのに言葉は呪(のろ)い呪(まじな)う何の為にか回転のからくりを破壊して掻い潜る明日に繋がる光を目指したわたしの思いとは裏腹に心は震えて歓びの種を蒔くそれがどんなにわたしでなくともいつだって反転しわたしは逃げまわる捕まるわけにはいかないとたとえ砕かれてもそこにあり続けただれかは砕き砕かれてわたしは変わる変わらぬ思いの蓋を開けば満天の泉に瞳を凝ら . . . 本文を読む
鬼は知っている答えに地団駄を踏んで雷針の落ちその優しさに礼をなすそこに歓びはなくとも受け入れ難きを受け入れた歯を食いしばりながら深く息を吐き日進月歩日は進まずにわたしが進む月もまるで歩かないという天邪鬼明るい朝(あした)にあなたの影を引き連れてわたしは大切な夜を抱きしめたただ一つの優しさを持っている鬼の姿はうちの内側に息をこらえて許容して差し出したものは耐え難きものあなたは名前もないまま立ち尽くし . . . 本文を読む
終わらないことはなにも持たずに憎しみや悔しさの面をかぶって本当の言葉は口を閉ざした多方面からの見透かしも遠く及ばない思いの正体を優しく包み込んでいるのはわたしの暗い影どうかこの影を消さないでと光に願う苦しさに息をひそめればさらに苦しむわたしの姿に言葉はわたしからわたしを引き離すそうじゃないと言う繰り返しのなかに絡まる真実をずっと見つめ続けて目は眩(くら)む優しくありなさいとあなたは云ったいまはもう . . . 本文を読む
とどまったままでいる私とそれとは無関係に吹く風に流されて前へと進む私は私を置き去りにしてどうしたらいいのと嘆き悲しむ手を取り合いたいと過去に伸ばした後ろの正面にあなたは立っている流れる涙とは遠く離れた感情はこの胸のなかにありてそれを表現するすべもなく言葉を知らなくて泣き叫んでいたあの日から変わらずにいることと変わっていくものあなたは再利用されて言葉を持たずに祈るように戯言を繰り返し私たちは空の色を . . . 本文を読む
音のないわたしの世界に言葉ばかりは書き連なってなんの意味もなく白いノートはまっさらなまま書きたい言葉はこれじゃなくってそれも無くそこは暗闇の向こう側地獄の釜の底をぶち破れとはあなたが教えてくれたこと産道に置いてきたのはこれまでの悲しみとこれからの物語忘れたくない大切なことを全部忘れて飛び出したから泣けてきた真っ白なノートは散り散りになってみんな海を目指して飛んでいく文句ばっかりを口に出しては本当に . . . 本文を読む
空っぽなまま思いを放棄したあなたに与えた悲しみもわたしの溢れた喜びもそれは憧れていた空の色からわたしは光を授かりてこのかつて誰かに似ていたはずの夜の向こう側なにも知らなくてただ懐かしい空のにおいを抱きしめている . . . 本文を読む
飲み込んだ言葉は一握の砂となりわたしのなかに砂漠は広がっていく昨日には忘れる誰かが言ったこと思いは募り口には出さず黙って微笑めば砂は流れるさらさらとわたしのためにわたしを蔑ろにしてわたしは猛りわたしを憐れむわたしは滂沱し心底侮蔑したわたしに唾をはくそんなわたししかいない誰かのなかに砂漠は広がるどこまでも水を求めて言葉を漁りそのどれにも当てはまらない毎日に言葉ばかりの祝福を言葉を超えて本当の願いは海 . . . 本文を読む
その水の根元から引き離そうとした会話手のいない呼び出しベルの音どうか水から離れてとそれは水の流れる身体から濁って澱んで水に流して身を委ねてはまた降りそそぐ降りて落ちてそれでも真っ直ぐなままの眼差しは言葉を発することもなく水にまぎれた声を取り上げられた優しさにあなたは空を仰いで月を探した泣くこともない平生の夜にどこかで鳴るはずのないベルは鳴る . . . 本文を読む
誰とも繋がらない常識は誰とでも繋がる非常識からそれが当然の世界になって誰もがひとりからは離れられないでいた筈なのに孤独を主張してそこから距離を置く本当はどうしていたいかをみんなが叶えたみんなが泣いたひとりぼっちの夜もすがら画面の明かりに照らされて誰かは単身よく笑うわたしはひとりひとりを知らない子どもたち . . . 本文を読む
寂しいだけで息がつまったそんな軟弱な精神であなたは海を渡りここまでやってきた泣いて辿り着く新月の祈りに果てはなく儚くも逞しくそして清らかなままの姿で罪を犯した輝夜姫の泣いていたそのわけを黙して見つめた兎は跳ねる和邇(わに)の行方の露知らずわたしは雲を渡りいまあなたに会いに行くその悲しみを海に張り巡らせて深い青色は歓びで満たされる涙の色も同じ理由から寂しくて悲しくて切ないわたしはたとえ火のなか水のな . . . 本文を読む
日は土にかえれと魚はいった日は月に昇れとわたしはささやいた大なり小なりを繰り返しはじめの第一歩はまた元の位置を乖離させ渦をなす魚は泳いでわたしは貪(むさぼ)る罪をいただくその頂(いただき)に至るまで . . . 本文を読む
河童の川太郎は眉間にしわを寄せていた。川太郎の住むみなかさ川では立派な成人になる為の儀式として河童の川流れが執り行われる。河童の川流れとはその名の通り、ただ河童が川に流されていくというだけの儀式なのだがこれに対して思う気持ちは河童様々である。ただ流されればいいだけなのだからこんなに楽なことはないと思う河童もいれば、元来我々はどこまでも自由に泳ぐことができるのに何故その自由と自らの能力を放棄してただ . . . 本文を読む