よみびとしらず。

あいどんのう。

鬼と朝

2020-09-29 19:24:25 | 散文
そこつくものの其処(そこ)くもの風吹きて夜は白波音も無く逆さまの世は水鏡にうつる空にたなびく朝霧の露(つゆ)の珠は輝き儚くも未だ目覚めぬ鬼の目に涙主(あるじ)帰り着く居場所よいま何処(いづこ) . . . 本文を読む

今昔

2020-09-27 10:52:07 | 散文
震える身体は恐怖に怯えてそんな当たり前の反応に全てを否定して硬くなった心は岩戸は開かれずいわおとなりて苔生(む)した森のいしずえに清らかな水は木漏れ日に歌うさやさやと砕かれた岩石は砂となり閉ざされた岩戸もいまは形なしそれでも未だここに岩戸はあるものと柔らかな身体は心硬くして大切なものの在処をその中に隠した明るく秘められたのはあなたの在処暗闇に残されたわたしの光 . . . 本文を読む

目玉焼き sunny-side-up

2020-09-26 10:56:34 | 詩(イラスト付)
卵を割って目玉焼きひとつ空に落としたらお月様現れてどうか私を食べて下さいと鬼に希(こいねが)い成就したのは食べられていなくなって記憶から消してようやく顔を出した真昼の太陽明るいあなたの訪れにようやく世界を愛せるようになった目覚めたわたしは卵ひとつ割って目玉焼きごはんを美味しくいただく穏やかな朝(あした) . . . 本文を読む

花の夢

2020-09-25 01:31:18 | 散文
絢爛(けんらん)おいたる花々の枯れても残るその種子共のどうか芽吹くなと願うあなたは涙の意味も知らずに眠るほんとうの願いなどあるはずもないと蓋をした夜に星は瞬くどうか幸せになりますようにと今も昔も願いは変わらず叶わぬ願いに希望は灯るシロクロ隔ててしのごの言うは対岸に立つ身のあなた恋しや影も光も夢のまた夢どうかあなたの目覚めに祝福を . . . 本文を読む

ヨル

2020-09-22 00:14:08 | 散文
夜、寄りて依る衣ずれの音に全てを託してわたしとあなたの出会わない夜は更けていく夜の気配は深みを増した寄りそうすべもなく分かち合い最初からひとつではいられなかった寂しがり屋の丸まった身体にわたしはよりて過去も未来も一緒くたにされた一本のより糸だけが道しるべだった隠された夜により糸は解(ほど)かれて本当の時間は訪れる音のない静かな暗やみにひとりでは生きていけないことを知りながらひとつひとつとして全うす . . . 本文を読む

手のひら

2020-09-21 14:56:50 | 散文
手のひらのかたちに心は惑う閉じては硬く開いては脆く開いた手のひらで海に触れたら水のかたちに心は揺れた冷たく柔くかすかなぬくもりのあるその心根に閉じて守って開いて震えた手のひらはためらいながらも居場所を求めた戸惑うわたしの鼓動は高鳴りあなたのかたちに指先はなぞる心の揺れ動くさまに名前なくそれさえも与えられてこなかった世界のかたちに手のひらは重なる冷たく柔くかすかなぬくもりのある名前のない在処 . . . 本文を読む

此処彼処

2020-09-19 13:17:09 | 散文
ここではないと云うは易く答えは見つからずここではないことを知っているわたしはここではない場所が確かであることを誰に聞いたでもなく分かっていたのだと表裏一体の此処は彼処へと青い鳥は渡る羽ばたきもせずにこの大らかなる青空を姿は消えた心を失ったドアのない部屋の中から青い鳥を探しに幼子は旅に出る . . . 本文を読む

汀(みぎわ)

2020-09-17 00:48:49 | 散文
この汀で君をみた夕べに僕の身体はさらさらと砕けて砂となるもう会えないことは知っていたからただ君の足元に僕は還ろうあなたの欠片が海に落ちたと教えられた私は汀へ向かった砂浜に足をとられて上手く進めず座りこんだわたしは砂を掴んだ一握の砂はさらさらとその中に留める姿かたちなし砂は風に流されてその場から過ぎ去ったまた会えることを知っているわたしのこの手のひらの中にあなたの面影はありわたしは指先で砂浜にバカと . . . 本文を読む

2020-09-15 11:43:59 | 散文
恋しくてあなたなしでは息も出来ぬと呼吸を奪われたのは水のなか溺れた身体は空に舞い動かした手足はあなたのぬくもりに包まれるわたしの熱はさらに高まりあなたのその身のつめたさにわたしの瞳は海を求めた涙落ちる夜に漣(さざなみ)の満ちて引く感情は音もなく荒々しくも内に秘められた海の底に夜は訪れる理に触れて口を閉ざして人魚姫は言葉をなくした青色染まる波のしじまに淡色の泡沫は終(つい)なき思いの歌うたう . . . 本文を読む

水と星

2020-09-14 01:08:32 | 散文
七日の晩にお会いいたしましょうあらわになってはならない思いを水に流した舟の灯火(ともしび)舟は夜のなか水からはなれかたちを変えて魚になった空とぶ魚に星はまたたき羊飼いはその跳躍に麗しき姿を見出した物語は語り継がれて全ては偽りのなかに消えて行くあとに残ったのはまことの心苦々しき思いは水に流されわたしたちは海を目指した母の御胸にいだかれる子守唄は紡がれて夜は更け朝がくる前に帰りましょうとたくさんの星々 . . . 本文を読む

ウタ

2020-09-13 15:33:40 | 散文
みんなで歌うその歌こそは個人的な歌のことばは幾千万もの赤をたたえてなに一つとて同じ色はなく同じかたちの林檎なく個人的な歌のこたえは誰が答えるよしもない一つの歌は別々の景色を其々(それぞれ)に与えたこたえは己のなかにのみぞとうたの音叉は鳴り響く共鳴を求めてさりとて重ならず同じうたからいくつもの道筋は光かがやいた海へ山へと空へとあなたへと飛べ飛んで届けと翼も持たずに音のない言葉をひとり奏でた全てはソコ . . . 本文を読む

花と神話

2020-09-11 10:43:47 | 散文
たなびく髪は流されて花の匂いはあなたの元にのみ行き渡る満月の夜を待ちわびながら本当はいつも丸い輝きは闇夜に溶け込む音も立てずに開いた声にきくこともなく花は枯れて種を宿したひらく理(ことわり)はきく耳もたずにひらくには頑なな花の蕾は悲しみを湛えて瞳を閉じた生まれ変わりのその前に神様なんてわりとどうでもいいものになっていた . . . 本文を読む

SKY

2020-09-08 16:40:01 | 散文
相反する気持ちを隠そうともせずに開かれた青空はなにもうつさずこぼれ落ちた欠片は海に広がった漣(さざなみ)に耳をすませば街のど真ん中この重たい身体は海の冷たさを知っていてかわいた肌にのる透明な空はそれぞれに異なる海辺にてあなたを待っていたすれ違いながら抱(いだ)かれてかすれた風は空の記憶を海へと運んだみんな同じではない当然に少しだけ強がった風は草木を翻(ひるがえ)しその場を去った裏表重ねた思いの影に . . . 本文を読む