よみびとしらず。

あいどんのう。

ほむら

2021-07-31 08:41:10 | 散文
日の群がりに炎は凍えたこれは私じゃないという思いから冷たくなる術を持たない炎は燃えて涙すら流さずに燃え尽きたようやく冷えた身体からぬくもりは目覚めて夜に怯えたそれは違うという恐怖はいつも私に張りついたままで繰り返されるたとえ何度でも愛を知りあなたのほむらに触れたとて百年千年も一日の長と遠い遠い空からここに降りてきたのは一秒にも満たない私の在処これは私じゃないという思いはいまも私からはかけ離れた場所 . . . 本文を読む

カタカタ

2021-07-24 20:21:29 | 散文
カタカタと供給は過多となり息は詰まったカタカタとわたしは凍えてお腹をくだすカタカタと鳴るその心根は何を思うかカタカタと過剰に搾取した夜は明けて輝いてばかりの朝は来るその眩しさに目を瞑(つむ)れば夜の再来はなく瞼の裏側は赤色の光に包まれた赤色は怖いとカタカタと震える振りをして自らの色に染めたいと願うその心根はカタカタとわたしの知らない声で笑ったわたしはわたしを見失ないそれにすら気付かずカタカタ揺らぐ . . . 本文を読む

water

2021-07-23 11:58:15 | 散文
昔からよくある井戸端会議の井戸はなくなりかわりに現れた電子の波が心無い言葉を拡散させた水が鎮めて汲み取っていたひとの心の弱い本音を本音でもない枯渇した声で顔には笑顔を貼りつけてそうして産まれた複雑な感情は均一化された文字の並びに元の姿とは乖離した道を歩み出す苦い水ばかりのこの道で逃げ水を追いかけて日は暮れるもう待てないよと夜明けの晩は喉の渇きを抑えきれずにお月様を丸ごと飲み干してさらに渇望は満たさ . . . 本文を読む

FIRE

2021-07-22 10:35:11 | 散文
もやもやとそのくすぶりに火をつけたいと燃料を投下した炎よ燃えろどこまでもこの胸のうちが晴れるまでそうして全ては灰となりまた新たなる煙を求めて彷徨ったどこまでいっても晴れぬまま悲しみと憎しみの澱(おり)は蓄積されてずぶずぶとこの身体はどんどん重くなり動かなくなった誰ひとりそれには気付かずに私はどうして炎を求めていたのか冷たくなった心根にようやく気がついたこの身は灰にまみれてこんな私は至極当然誰からも . . . 本文を読む

日常

2021-07-21 14:42:30 | 散文
言葉の意味をはかられてわたしとあなたは距離を取るその測定値に届く位置から星に手を伸ばしたのはわたしの小さな掌言葉の重みにたえかけたその繋がりの紙縒(こより)の一縷(いちる)は透明な蜘蛛の糸と見間違えられて信じるには足らずと声を張り上げたわたしたちは逆さまに落ちていく子供の頃より教わらないまま不確かな感情ばかりが積み上げられて罪を犯してひとを憎まずみんなニコニコ笑ってばかりの不条理なお月様は夜の海を . . . 本文を読む

KN

2021-07-20 13:58:49 | 散文
あの鳥を殺すと決めたのは腹が減っているからではない空の明るさがとても憎くてわたしは太陽をそのまま飲み込んだいつか光り輝くわたしを求めて私の口から鳥の血は滴るそれで不死身となったとて誰も救われずに私は夜の闇に棲む月明かりにすら震える我が身のその姿は水にもうつらずにあの鳥は何ぞと誰かがのたまう上手く化けたものだと風の便りに何の事だか分からないままわたしはいまのワタシを知らぬままあの鳥の姿は絶えて久しく . . . 本文を読む

しづ

2021-07-19 12:02:08 | 散文
しずめて と願いしずまず に猛ったしずんだ わたしは静心無(しずこころな)く千々に乱れて雲は流浪する空の下にいるわたしは取り残されたまま落ち込んだ入り江に舟は着く漂泊の思いは止まず引き継がれ辿り着くことのない湊(みなと)いづこやと舟は空っぽに満たされていたわたしもあなたも姿のないままで今ここにいるわたしは手のひらをぎゅっと握りしめるその確かなるぬくもりと痛みに少し眉をひそめて真昼の月を仰げば流れる . . . 本文を読む

レイン

2021-07-18 10:44:53 | 散文
来ぬぞと呼ぶ名の互いに分からぬ肚のうち雨を呼ぶ涙も知らぬまま青空は雲に覆われた灰色のぬくもりを知らずとも私はどこかで聞いていたあなたの歌声泡沫の海の波間を知らぬまま何もかもを知らずに溺れた昼下がりの昨日の空に雨は降り今日(こんにち)は何処と口ずさむ今日のわたしはよく晴れた水のない場所にいる  . . . 本文を読む

BOX

2021-07-16 11:21:46 | 散文
あらわになることと引き換えに差し出さなければならぬものもうそれ以上は語るなかれと良い子は言葉を飲み込んだそのみぞおちに溜まりゆくものの色は黒々に覆われて箱の中身はなんであるかとあなたは優しく微笑みながら問いかけた . . . 本文を読む

花と星

2021-07-15 15:56:47 | 散文
花は白く砕けて花の香りは鼻に入(い)る聴こえていたよと呼ぶ声に答えることもなく草木は枯れた帰りたい場所も知らぬままわたしたちはいつだって帰りたがって夢を見る守られていることにも気づかずに願いは砕けて誰の目にも触れぬ夜の空に流レたほうき星 . . . 本文を読む

新月

2021-07-10 11:35:47 | 散文
真っ暗闇ではいられなかった世界にわたしは目隠しをしてあたりはすべて夜となる月のない夜にわたしの行方も知らぬままずっとそれを見ていたあなたは目にうつる景色を錯誤して嘘を吐きながら鏡は揺らぐ透明な水溜まりにあなたの歌声は反射した暗闇はすべてを吸い込んで音のない夜はやってくるそのなかの窪みに落ち込んだわたしは新しい月にいだかれる . . . 本文を読む

ゴースト

2021-07-09 11:52:52 | 散文
海に似ていたあなたからごうと押し寄せた感情は大きなうねりを伴いながら天高くまで反転されたからりと晴れた空の青さにうらぶれながら地面を蹴り上げたあなたの憤りは雨に似ていた穏やかな雨の降る日に傘を忘れてわたしはあなたのそばにいる濡れそぼちながら海を眺めたいまここにない海に溺れてわたしをすくい上げたのはあなたの一呼吸その唇から全てを忘れたわたしはあなたではない誰かと結ばれる何度も過ちながら辿る赤い糸のそ . . . 本文を読む

ほつ

2021-07-08 08:59:34 | 散文
水を踏んだ後に地面は燃えて枯れた草木に種を蒔くその繰り返しからはみ出すこともなく誰にも褒められないまま月日は過ぎる委(ゆだ)ねて流れて押し戻されてまた新たに始まる一日に地団駄を踏めば足元はぬかるみ底無し沼へ懐かしき冷たさに枕を濡らせばただ時計の針音だけが暗闇に鳴り響くそのおとないは誰の為かと問いなき問いに答える術もなく水を上に蹴り上げれば土砂降りの雨傘を持つ手になんの意味もなくそれでも傘は捨てられ . . . 本文を読む

交換者

2021-07-07 11:58:57 | 散文
消えて現れたおなじわたしをもう元のわたしではないとあなたは突き放した何もかもが変わらないまま生まれ出でいくつにもその姿は増殖されていくつぎのわたしが現れるまでそれに憧れた彼女もひとり最後にはおなじ姿で別々のひとのなか繁殖されていくただひとつ謀反した者は月となり毎日はおなじ姿の能わぬ物の怪とあいなり果てたこの胸に抱いた思いは変わらないままわたしは空にのぼる月を見て泣いている . . . 本文を読む