左足かまれて しびれた身体
奪われた自由の 本当の意味は? . . . 本文を読む
迷路にきたと思ったらそのまま入って、南下したらタコの軟化に出くわした。軟化したタコは茹でられて、たこ焼きと寿司になった。たこ焼きの道は右、寿司は左。左巻きさんは右にいって、右巻きさんは左にいった。左巻きさんはそのたこ焼きの情の深さに惚れ込んで、赤いからだをよりいっそう赤くした。左巻きさんの情熱はかない、ふたりは結婚し夫婦となって高架下の屋台でたこ焼きを売っている。いか焼きも始めようとしたら奥さんに . . . 本文を読む
否定しているうちは救えない 赦されない
どんなに救いたくとも
救われたくとも
赦していても 思いは届かず
赦されているのに
それはその事実を歪め
赦されているのに 赦されない
否定という魔物
否定を否定しようとも
否定の否定を否定する . . . 本文を読む
人魚と亀が、どちらが上手に人間をだませるか勝負しようということになった。亀は浜辺で出会った人間に「竜宮城へお連れしますよ」と声をかけた。人間は大喜びで亀の背に乗った。そして亀は沖合いにある岩場まで人間を連れていくと、そこで降ろしてそのまま立ち去った。人間はだまされたと岩場で泣いた。その泣いている人間に、人魚は「悪い亀にだまされたのですね。おかわいそうに。わたしが浜までお連れしましょう」と声をかけた . . . 本文を読む
50の数字と縁のある男のひとが、それが世界平和の為だと地下に閉じこめられて、半分鳥と化した。
その男のいる地下へ見回りにいくのはいつも動物(モンスター)の役目で、ある日地下の見回りへ行くことをライオンがしぶった。王様とわたしが行こうとすると、ライオンはついてきた。
日に一度、そまつな食事しか与えられず、太陽の光も届かない地下に長年幽閉されているその男は、半分鳥とかし体がぼろぼろになってもまだなお生 . . . 本文を読む
ヨウコは旅先で、見知らぬ道を歩いていた。細い路地にやたらと車が渋滞しているのを不思議に思い、その先頭まで足を進めてみると、白い服をきた三人の男が道いっぱいに広がって何やらやいやいと騒いでいた。
「おらあよ、この町に三十年住んでるんだよ。迷子になんかなるわけねえだろ」
「だけど迷子になってんだよ。一体ここにいくにはどうしたらいいんだよ」
こんな声が聞こえた。そして三人の男性はヨウコに声をかけた。
「 . . . 本文を読む
龍のいかずち堕つる頃
とくさの剱の声がする
雨に降られて水にたつ
身のふりかまう暇もなし
水と光が堕つる頃
天女の謳う声がする
嵐なれども迷いなく
直(なお)にささるは末のみち
遠くに去り行く龍の声
忘るるなかれと後に鳴く
かみなりさまのゆく末は
神さえ知らぬ未知のそら
どんごろごろごろ
おんぴかり
神代の宴を告げる音
おんごろごろごろ
どんぴかり
龍神さまが鳴いてい . . . 本文を読む
もう動きたあて、しゃあなくてなあ。おかあは花やし諦めんかいって、そらもううちが種粒のころから口やかましう言うてはったけど。無理なもんは無理や。うちの思いは変えられへん。うちが花の子に産まれてきてしもたんは、お釈迦様がタネかハラかを間違えはったんにちがいないわ。でもお釈迦様もたいがいお忙しい方やしな。そらもうたまには間違えはることもあるよ。うちはお釈迦様を恨んだりはせえへんで。うちは花の子や。それは . . . 本文を読む
花は生きて山に咲く
朝日が花弁に照らす頃
花の思いは陽に溶く
其のこもれびは風に舞い
吹きて吹かれて海につく
地上に根をはる不動の花も
思いは越えて海へと到る
はなはいきてやまにさく
あさひがかべんにてらすころ
はなのおもいはようにとく
そのこもれびはかぜにまい
ふきてふかれてうみにつく
ちじょうにねをはるふどうのはなも
おもいはこえてうみへといたる . . . 本文を読む
腹のなかで渦を巻く
かえってこいこい
きてはならぬ
もどってこいこい
きてはならぬ
時代と身体と思いと魂が
そこで重なり、大きくうねる
歌声のような絶叫
腐敗にも似た芳香
暗闇のなかの雷光
すべてをうつす鏡
何も知らない清らかな身体のなかで
何もかもを知っている穢れた魂は
垢のついた身体とともに
ひかり輝く魂のすがたで
いま、ここにあるものを守らんと
破滅と再生を . . . 本文を読む
その部屋は壁の一面に草が生い茂っていて、僕が立っている場所は空だった。そこにただひとつある草の壁以外は、地面も天井も草の壁以外の三つの壁も全て空でできている。空に立つというのはなんとも居心地悪く、僕はどうにかして草の生えている場所に足をつけたかったが、どうにもうまくいかない。草が壁で、空が地面だ。空は踏みごたえがなくて、まったく落ち着かない。僕の足元にある空の下は何もみえない。ただ青い空間と白いも . . . 本文を読む
きつねのゴン太は川で溺れて以来、すっかり水が怖くなってしまった。川に近寄らないのはもちろんのこと、水も飲まなくなって葡萄ばかりたべている。雨の日は穴ぐらから一歩も出てこない。しかしゴン太が溺れた川の水はどうやらゴン太に一目惚れしたらしく、どうにかしてまたゴン太に会いたいと強く願った。その結果川は荒れに荒れ、大量の鯉が棲みついた。鯉はゴン太の大好物だったが、川の水の気持ちを村人から伝え聞いたゴン太は . . . 本文を読む