「あした休みます」というお天道様の申し出は
却下され続けて幾星霜(いくせいそう)
悠久の空に抱かれて
無休で働く おてんとさん
「あした休みたい」という札かかげ
お天道様は今日もゆく
のぼっておりて 明日を照らす
日の光
お疲れ様です
いつもありがとう . . . 本文を読む
懸命に生きている
わたしのからだが転ぶとき
わたしの魂はどこまでも高く昇り
わたしは愛しいひとに会いにいく
再会を嘉(よみ)された喜びに
わたしの魂が歓喜の涙を流すとき
わたしの転んだからだは
すりきれた痛みに涙する
言葉とからだと心とが
たとえ一致はしなくとも
わたしは泣いて、わたしは笑う
言葉とからだと心で感じたことが
感謝の創造を何度でも
はらはらと舞い散る花吹雪のよう . . . 本文を読む
ややもやもやと
入り江には霞み(かすみ)のかかる
八雲は藤色
日のたちて
やや恋しやと 母の言う
いとしこいしや 妻の声
朧月夜に雲なくば
水の音かすかに 元をたつ
たたねばなるまい
たちてはならぬ
風なき夜に逆らいて
夜を越え年越え時越えて
鳴る風の音は アサを導き
思いに触れる 日の光り . . . 本文を読む
よく晴れた日のことだった。
野山には若葉が芽吹きだし、大地は少しずつ黄緑色に染まっていく。ボクが空から地上を見ていると、大きな穴がひとつ、目についた。大きな窪み(くぼみ)だ。地面からでっぱっている山はいたるところにあるけれど、あんなにもへっこんでいるところは珍しいなあとまじまじ眺めていると、向こうのほうから黒い雨雲がやってきた。
黒い雨雲がにっこりほほえみボクに云う。
「どちらがあの窪みに水を . . . 本文を読む
主なくしたむら雲は
雨に打たれて地におちる
眼(まなこ)腫らしたむら雲の
もう立てないとてうつむいて
こっくりこっくり舟を漕ぐ
やがてさざ波はさやさやと
そら照る光に包まれて
舟を漕いでたむら雲は
あたたかな浜辺へとたどり着く
眠いむら雲は眠らずに
寝てはなるまいと頬をうつ
それでも現(うつつ)は夢のなか
月夜の目覚めはまだ遠く
眠たいむら雲は瞳閉じ
誘い(いざない)の空へとお . . . 本文を読む
赤鬼泣いた 青鬼笑った
赤鬼怒った 青鬼謝った
赤鬼黙った 青鬼考えた
赤鬼無視した 青鬼去った
赤鬼焦った 青鬼行った
赤鬼追った 青鬼泣いた
赤鬼謝った 青鬼止まった
赤鬼泣いた 青鬼謝った
赤鬼笑った 青鬼笑った . . . 本文を読む
卵の殻のなかに包まれた言葉
殻をやさしく丁寧にはがしたら
卵のなかはカラだった
どこかにきえたわたしの言葉
手元にあるのは バラバラになった卵の殻だけ
大切にしていたはずなのに
大切にしていただけだった
きえたと嘆く言の葉は
卵の殻のなかに包んだと
包んだつもりになっていた
つもり積もった囚われの言葉は
使われることなく固くなり
いつか、いつかはと願いをこめて
放たれる時を待つ . . . 本文を読む
春の眠りを誘うには
照りつづく日差しはあまりに強く
乾いた砂はさらに喉を渇かせて
砂は涙を恋しがる
いつかいた自分の住処へと
赤い果実は朽ち 白い花は咲く
いまはもう戻ることもできずに
せめて夢のなかだけでもと夢みようとも
眠ろうとすれば遠ざかり
現(うつつ)のなかには消えていく
眠たいのに眠れない 万事流水
朧月夜に儚くこもる 春の夢 . . . 本文を読む
喉の奥にひっかかっている黒い塊を口から吐き出せば楽になれるはずなのに
吐けども吐けども
そいつは喉の奥からはでてこない
自分のなかにあるものを全部口から吐き出して
残ったのはその黒い塊だけになったとき
その黒い塊はこの世界には居場所がないと
必死に僕の喉にしがみついていたのだと気がついた
この世界に居場所がないのは僕もおなじで
だけど僕にしがみつかれても困るんだけど
それでも喉の奥から . . . 本文を読む
月の兎は現(うつつ)にて
野山をかけて草を食む
陸の兎は夢のなか
わにの背を跳び海わたる
海に兎は夢をみる
いつかいた場所月世界
空とぶ兎は現に思う
海にしずんだ むかしのわたし . . . 本文を読む
ここはどこだと
嘆く心に
光は射さずに遠ざかり
その暗闇にただ残るひと
そんななかから わずかに芽吹く
たとえどんなに 望まなくとも
産まれた証 水のふるさと
光のかたまりでできた あなた自身 . . . 本文を読む
眠りの誘いに身を任せた黒猫は喉元を撫ぜられて
甘く柔らかな感覚の海にそっと浮かぶとそこは雲一つない真昼の空に
ぽっかりと穴があいていて
穴の中からはおずおずと月がこちらを眺めていた
ニシャーッ!と黒猫が威嚇すると月は穴から大粒の
涙をぽたぽたと落としはじめて真昼の空は大雨に
あたたかな世界が一変したので黒猫は空をひとにらみ
新天地目指してどぼんと海へ沈むと魚に変わり金色銀色虹色の
こまやか . . . 本文を読む
さそりのこどもが部屋にでてきました。
四匹です。殺虫剤で三匹殺しました。でもあともう一匹を、仕留め損ないました。
そのまま寝て、そして起きたら、わたしの枕元の横、目の前10センチくらいの場所に仕留め損なった一匹がいました。それはもう、声もありません。わたしは今度こそ仕留めたと思います。最後のあがきにと、さそりはものすごくのたうちわまって飛びました。同じ空間には父もいたけど、わたしの父は何もしませ . . . 本文を読む
銀の時計の揺れている
ゆらゆらと
青い視界はそれを捕らえて
時は銀河を駆け巡る
銀の波 金の空
清らかな緑色の風は空に逆らい
穢された赤色の大地に手を伸ばす
穢されてなお赤色の
燃えさかる炎の純潔は
暗い帷(とばり)の繁みにこもる
泥濘のなかに身をともす
それを追う緑の風の手は
赤色の大地と交じることなく
いつかみた夢とまた同じ
真昼の海へと帰着する
「またここへきてしま . . . 本文を読む