黒猫のつぶやき

法科大学院問題やその他の法律問題,資格,時事問題などについて日々つぶやいています。かなりの辛口ブログです。

現行制度を批判する立命館ロー

2013-05-13 18:55:46 | 法科大学院関係
 本日で法曹養成制度検討会議のパブコメが締切り,ついでに適性試験の出願も締切りになります。
 しばらくは,このブログでも法科大学院関係で書くことは減るかなあと思っているのですが,本日立命館大学法務研究科(法科大学院)の教授会が提出・公表したパブリック・コメントの内容が,法科大学院サイドの意見としてはちょっと意外なものを含んでいたので,この記事で御紹介することにします。

<参 照>「法曹養成制度検討会議・中間的取りまとめ」に対する意見(立命館大学法務研究科教授会)
http://www.ritsumei.ac.jp/acd/gr/hoka/pdf/130513-public_comment.pdf

 意見の内容は10項目にわたっていますが,そのうち黒猫が興味を持ったのは(2)(5)(10)です。それ以外にも「司法試験の合格者数を増やせ」とか「予備試験の受験資格を制限しろ」といった寝言や,「共通到達度確認試験の導入に反対する」とか「大規模校の定員を削減しろ」といった自校エゴ丸出しの主張も書かれていますが,とりあえずこの記事では無視することにします。

(2)意見内容 法科大学院生について,給費制奨学金の導入が必要である。あわせて,修習生への給費制の復活に踏み切るべきである。
 理由については,「日本学生支援機構の奨学金が給費制でないために,在学中から多額の負債を抱えることと司法修習修了後の就職状況が厳しいこととが相まって,奨学金の返還に対する不安が,法曹志望者を躊躇させている要因と思われる」と指摘しており,「法曹志願者の減少への対策,法曹の多様性の確保のためには,法科大学院生について,給費制奨学金の導入が必要である」「質のよい法曹を養成するという観点からも,貸与制の維持に固執した上での修習専念義務の緩和ではなく,修習生への給費制の復活に踏み切るべきである」と主張しています。
 法科大学院協会の意見では,「法科大学院生と司法修習生との間のバランスに注意して」などと書かれていたことから,法科大学院側の総意としてはむしろ給費制復活に消極的なのかと思っていたのですが,実際には給費制復活を主張する法科大学院もあるようです。
 また,法曹志望者が減少している原因についても,検討会議や一部マスコミが言っているように「司法試験の合格者数が増えていないから」といったものは挙げられておらず,在学中から多額の負債を抱えることと就職状況の厳しさが要因であるとしっかり指摘しており,少なくとも検討会議よりはまともな問題意識を持っているように感じられます。

(5)意見内容 司法試験は,法科大学院修了後5年間に5回受験できるようにすべきである。
 受験回数制限の緩和に積極的な法科大学院があったこと自体も意外ですが,もっと驚いたのはその理由です。

理由 司法試験の受験回数制限は,現在のように,法科大学院への再入学と修了により,あるいは,「予備試験」合格により,一度受験資格を喪失した者が受験資格を回復できる状況では,「本人に早期の転進を促し,法学専門教育を受けた者を法曹以外の職業での活用を図るための一つの機会」を作るものとなっていない。また,受験回数制限が「法科大学院における教育効果が薄れないうちに司法試験を受験させる必要があるとの考え方から導入したもの」であるとの認識は,制度発足のときにさほど意識されていたか疑問である。しかし,いずれにせよ,教育効果を考えるのであれば,受験を3回に制限する合理性はない。

 ・・・・・・ここまで言ってしまうと,もはや受験回数を5年5回に緩和すべきという主張ではなく,そもそも受験回数制限自体に合理性がないという主張のように読めてきます。立命館ローは法務博士の出願を一切認めておらず,いわゆる「リピータービジネス」には手を染めていないという背景もあるとはいえ,法科大学院制度を根底から覆すような主張を当の法科大学院がやってしまうというのは,制度自体の終わりが見えてきたという証拠でもあるでしょう。

(10)意見内容 現在の適性試験は,既修者向けの法科大学院入学試験には不要であり,未修者用としても,社会常識から判断できる程度の法的思考力を試す試験に置き換えられるべきである。
 うわあ,とうとう法科大学院自身が「適性試験なんかいらない」って言い出しちゃいましたよ。しかも,今回の『中間的取りまとめ』では適性試験について特に言及されていなかったのに,敢えて適性試験不要論を意見として出したということは,法科大学院側としても現在の適性試験に対する不満が相当高まっているのでしょう。
 理由については,以下のように述べられています。

「適性試験については,「取りまとめ」では,特に言及されていない。しかし,既修者に関しては,法科大学院入学後および司法試験の成績との相関は,法律科目を中心とする法科大学院入学試験の方が,明らかに大きい。これに対して,現在の適性試験とこれらとの相関は,せいぜい,「ないとまで断定はできない」という程度のものであって,相関を積極的に根拠づける資料は,法曹養成制度検討会議の議論の中でも,結局,見出されなかった。本来,法律科目を中心に学習させるべき法科大学院受験前の時期に,既修者に,このような試験のための学習を強いることは,合理的でない。これは,志願者全員が法学未修者であるという建前のアメリカ合衆国の制度を,法学既修者が存在するわが国に機械的に移植したために生じた矛盾である。また,未修者の適性を見る目的であっても,法的知識以外の,社会常識から判断できる程度の法的思考力を試す試験の方がはるかに適切である。仮に,そのような試験とは別に適性試験を残すとするなら,それは,法曹のための倫理的適性を試す試験とすべきであろう。」

 これも,現行の適性試験制度をほぼ全否定する内容になっています。法科大学院の中には,適性試験と書類審査だけで未修者の合否を決めているところもありますが,適性試験そのものが不合理であるという前提に立てば,そのような入学者選抜も不合理であり,ひいては法科大学院制度そのものが不合理であるという結論も導かれ得るでしょう。
 適性試験制度について,法科大学院協会の内部でどのような議論が行われているのか分かりませんが,法科大学院制度を存続させる前提で少しでもその中身を改善しようという意欲があるなら,せめて適性試験などという不合理なものは業界の自助努力で廃止させるべきでしょう。もっとも,適性試験を実施している日弁連法務研究財団,及びこれと関わりの深い日弁連の執行部は適性試験の廃止に反対するかも知れませんが。

28 コメント

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職業選択の自由を妨げている。。 (Unknown)
2013-05-13 20:30:06
実務修習に行かなくても、何らかの法実務経験などから弁護士登録ができるように一定枠を確保していけばいい、検察庁の特例で、特認検事があるように、弁護士会の承認で、司法試験に受かっていれば独自の弁護士養成課程を設けるべきだろう。修習は判事か検事を目指す者だけ必須課程にして、実力さえあれば司法試験に合格できることを担保に、受験資格を4年生大学の卒業程度にすればいい、ここが最も大事で、大学、大学院終了レベルを試す試験が司法試験であり、実務の基礎能力を確認するものであるべきだ。司法試験と大学院の趣旨とが滑稽なくらい矛盾し過ぎている。
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Unknown (黒猫愛)
2013-05-13 20:48:05
 
 取り敢えずバリスタとソリスタ分けませんか。合理的なイギリスの方々がやってるんだから間違いないかと。あ、私が言ったからとかは止めてください。ちゃんと考えてね。
 
 
 
 
 黒猫先生はエージェントでなければ、脳内で手段と目的が逆転した上、公益と自己利益が無意識下に混同されていますよな。混同(二重定義)って債権の消滅じゃなくて。
 公益と自己利益とルサンチマンと深夜アニメがカルティットミックスされているみたいな。自分がやっていることに対する御自覚がないんじゃないですかね。
 
 分からないけど、自分の後輩とも言える(言いたくないでしょうが)灯台LOWの方々まで同時にDISってどうされるんでしょうか。
 
 
 
 また、怪しい奴等がほとんど素通りで行政に大量に入ってきたら、それこそ日本は朝鮮玉入れ電波大国になってしまいますよ。
 
 弁護士は他の士業を兼ねるんだから、超権力者です。仕事がなかったら何時でも他の士業の真似して、あわよくば仕事を取り上げる事すら可能でしょう。
 
 つか最初からそれ(朝鮮玉入れ利権)狙ってませんかね。委員会の方々、誰からどの位の裏金を受け取りましたか?
 
 ちょっと見たけど、SCHLZとかいうの(http://blog.livedoor.jp/schulze/?p=5)、あれは本当に弁護士なのですかね?確認しましたか?なんか工作員としか思えないんですが、釣られて法科大学生をディスっていませんか?アホみたいな内容しかアップしていませんが。
 もしこいつと共同で何かやっている気になられているとしたら、後で悔いが有ると思います。
 
 
 
 学生の方々、悪いことは言わないから、就職して法科大学院に夜間か通信で通いなさい。別に恥ずかしいことでもなんでもないです。
 
 
 
 
 
 黒猫先生は悪いけど体制側が御似合いですよ。
 
 本当は向う側で法科大学院を推進されているべきだと思います。
 
 そしてなんか理屈つけてくる下っ端その他底辺大卒の大勢に対して『我が崇高な理念を理解できぬウジ虫どもめ!!せいぜい喚いているがいい!!あと放射能を食え!!』ってアニメキャラにでもなった気で言下に否定していれば、それで可愛がられて食える所か出世もできると思います。それがピッタリきます。
 
 せっかく東大法学部卒のプラチナチケットをお持ちなのですからそうされた方がいいと考えます。そのほうが幸せになれるとおもいますぅ。
 ああそれと、万が一私のように不幸になりたいのであれば、ブログを放棄し、英語を勉強して海外で資格を取られればいいと思います。行政に対するルサンチマンを延々とぶちまけずに済みます。
 
 
 
 いや、別に本当にどうでもいいんですが、折角黒猫という串を使われているので、言ってみました。山月記(読んではいけない)の猫になるか人虎伝の虎(沢火革九五、大人虎変)になるかはお任せします。お幸せに。
 
 
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Unknown (Unknown)
2013-05-13 21:20:15
LS廃止論はよくわかります。理想論であって、机上の空論に終わりそうな雰囲気を感じます。

廃止論の問題点は、
1 実現の可能性が低いでしょう。
2 代替案が分かりにくいです。
3 数年以内に起こせる状況ではない。社会情勢など。。

大事なことは、弁護士の人気維持でしょう。
数年以内に実現可能な方策で行かないと人気回復できないですが、まだ間に合います。

現実に即して可能な内容で対策を考える必要があるのではないでしょうか?
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Unknown (Unknown)
2013-05-13 21:26:36
入学者数ヒト桁のところを中心に各大学はは、そもそもなぜ定員を入学者数の想定より大幅に多い人数で設定するのですか?

初めから想定される人数に設定しておけばいいと思うのですが??

定員割れってダサいと思うんです。
理由分かりますか?
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Unknown (Unknown)
2013-05-13 22:50:50
ここ最近鼻持ちならないコメントを振りまいている輩がおりますが、一体何様のつもりなんでしょう?
上から二つ目のコメントのあなたです。
自分が正しく、他の人は間違っている。
法科大学院関係者さんですか?
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Unknown (Unknown)
2013-05-14 02:32:54
アンダーソン毛利友常
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Unknown (Unknown)
2013-05-14 06:57:37
黒猫さんのいってることもわからんではないですが、普通に社会人やってるならこんなことばっかりブログにかいてないでしょうな。
おそらく司法試験に落ちた人か、受かっても能力が低くて仕事のない人なんでしょう。それをロースクールのせいにして毎日うらみつらみを書きつらねているかなしい人間なんでしょう。
いくらロースクールに反対とはいえ、普通に働いてる人なら忙しくて毎日こんな内容のブログ更新できないでしょうから

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Unknown (Unknown)
2013-05-14 07:10:49
黒猫、君はこんなブログを書くために弁護士になったのかい?
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Unknown (Unknown)
2013-05-14 08:14:54
ネットで煽りやってる人達って自分がまともな社会人なつもりなんですかね。煽りやるためにインターネットやってるんですかね。

とはいえ私も黒猫さんがどう生活してらっしゃるのか気になります(既にどこかで説明されてたらすいません)。

あと、黒猫さんがどうこうではなく一般論として
>受かっても能力が低くて仕事のない人なんでしょう。それをロースクールのせいにして

仕事がなくなったり一気に減少した弁護士さんは今たくさんいます。
そしてそれは、ロー制度を維持させるためだけのロー奉仕者限定合格基準大幅切り下げ政策に起因するものです。
「せいにしてる」のではなく「ローのせい」なのです。
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Unknown (Unknown)
2013-05-14 08:49:06
批判的なことを書いたら、社会人じゃないとか言ってる人は、働いてる限り批判するなという趣旨なんですかね。まるで中国共産党ですね
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