黒猫のつぶやき

法科大学院問題やその他の法律問題,資格,時事問題などについて日々つぶやいています。かなりの辛口ブログです。

来年の二回試験では約500人が落ちる!?

2006-10-06 07:33:43 | 法曹養成関係(H25.1まで)
 今年の二回試験では、去年の約3倍にあたる計107人が落第したというニュースは記憶に新しいところですが、それでは来年の二回試験では果たして何人くらい落ちることになるか、ということを考えていたところ、恐ろしい想像が浮かんできました。

1 旧試験60期(以下、「旧60期」)
 今年の二回試験落第者が急増した原因としては、原因不明とする最高裁を除いては、急激な合格者数増が原因だとする説が多数を占めるところですが、合格者数増のもたらす悪影響としては、具体的には旧司法試験の合格水準の低下となって現れるわけです。
 そこで、58期(平成15年合格)と59期(平成16年合格)の論文試験合格基準点を法務省のホームページで確認してみると、
 平成15年(論文合格者1,201名)
       無制限枠 140.75点
       制限枠 137.25点(なお、制限枠合格者213人)
 平成16年(論文合格者1,536名) 
       136.50点
という数字になります。ちなみに「制限枠」とはいわゆる丙案のことで、受験回数3回以内の人が優先的に合格できる枠のことです。平成16年から制限枠は廃止されています。
 この数字を見ると、論文試験の合格基準点は約4点下がっていることが分かります。これで二回試験の不合格者が約3倍になっているわけです。

 一方、旧60期の修習生が合格した平成17年の旧試験論文試験を見ると、合格者数約1,500人という枠は変わっていないにもかかわらず、合格基準点はさらに下がっています。法務省のホームページによると、
 平成17年(論文合格者1,454名)
       132.75点
となっており、平成16年よりさらに4点近く下がっているわけです。さらに、平成15年と平成16年の差については、制限合格枠だけでみると0.75点しか下がっていないことになりますが、平成16年と平成17年の差についてはこのような要因がないため、全体の合格レベル低下に関する影響はさらに大きいとも考えられます。
 仮に、論文試験の合格基準点が約4点下がると二回試験の不合格者数が約3倍に増えるという仮説が成り立つならば、旧60期は今年のさらに3倍、すなわち約300人が二回試験に落ちてしまうのではないか、という予測が成り立ってしまうわけです。
 さらに、このような不安を後押しする要因として、旧60期には以下のような不安要素もあります。
(1)今年の新司法試験合格者(以下「新60期」)も就職戦線に加わって、修習生の就職事情はさらに厳しくなるため、なかなか就職先が決まらず修習に専念できない修習生が増えることが予想される。
(2)新60期(後期修習が来年の9~10月)との重複を避けるため、後期修習が約3ヶ月から約2ヶ月に短縮されることから、司法修習における二回試験対策がさらに手薄になることが予想される。
 このような事情も加味すると、司法研修所での教育をよほど工夫しない限り、やはり旧60期から300人程度の落第者を出してしまう可能性は十分にあるのではないかと思われます。

2 新60期
 新60期の起案能力については未知数ですが、論文試験の合格基準点から見ると旧60期と同程度ではないかということを以前書きました。
 なお、新司法試験の採点基準については、事前に考査委員会から
 優秀・・・・・・ 5%程度
 良好・・・・・・25%程度
 一応の水準・・・40%程度
 不良・・・・・・30%程度
という目安が示されていましたが、実際の結果は
優   秀(600~800点)    4名(約0.2%)
良   好(464~599点)  299名(約17.8%)
一応の水準(336~463点)1,122名(約66.6%)
不   良(335点以下)    259名(約15.4%)
(採点対象者1684名中)
となっており、合格水準ぎりぎりの「一応の水準」に予定以上に人数が集中してしまっていることが分かります。これは得点分布が公表されていない旧60期でも(「不良」が著しく多いことを除けば)似たようなものでしょうが、司法試験の結果をみる限り、少なくとも新60期の実力が旧60期を大きく上回るという結果は想像しにくいです。
 そして、旧60期と比べた新60期の、二回試験の成績に関するプラス要因とマイナス要因をそれぞれ挙げてみると、
<プラス要因>
 法科大学院で実務を重視した教育を受けている。

<マイナス要因>
(1)司法修習の期間がさらに短縮されている(約1年5月→約1年)。しかも1年のうち2ヶ月の社会修習は、基本的に二回試験とは無関係。
(2)旧60期よりさらに就職事情が厳しく、就職活動に明け暮れて修習に専念できない修習生が多くなると予想される。

このようなものが考えられます。ポイントは法科大学院の実務教育の効果がどれだけ挙がっているかですが、実務教育の効果は新司法試験では基本的に問われておらず、法科大学院における実務教育の効果が上2つのマイナス要因を打ち消す程度のものになっていなければ、新60期の落第率は旧60期よりさらに高くなってしまう可能性もあるわけです。
 そうすると、新60期の二回試験落第率は、旧60期よりさらに不確定要素が多くて予測しにくいですが、仮に旧60期と同程度と考えると約200人。

 そして、旧60期と新60期を合計すると約500人。場合によってはそれ以上の数字になる可能性もある・・・

 もちろん、これは単なる黒猫の想像に過ぎません。旧60期・新60期の皆さんは、このような想像が当たることのないように頑張ってください。