黒猫のつぶやき

法科大学院問題やその他の法律問題,資格,時事問題などについて日々つぶやいています。かなりの辛口ブログです。

女性のよく分からない趣味?

2007-08-17 18:02:04 | 時事
 ここ1週間ほど体調が悪くて、ブログの更新どころかほとんど寝たきりでした。
 電子記録債権法に関する本の原稿を書き上げたことで力尽きたのか、それとも異常な猛暑が関係しているのかは分かりませんが・・・。今後、またブログの更新が滞ることがあったら、黒猫は調子が悪いんだなと思ってください。
 体調はまだ完全に良くなっておらず、こんな状態で法律関係の記事を書く気にもなれないので、今日は以前から気になっていた雑談めいたことを書きます。

 以前、掲示板で法律相談をしていたとき、「腐女子を○○しよう」などという書き込みをしてしまったんだけどといった相談を受けたことがありました。相談の内容は、なぜか最近多い「インターネットで誹謗中傷の書き込みをしてしまった。これで警察に捕まる可能性があるか、懲役何年になるか、損害賠償請求を受けたらどうすれば執行逃れができるか」などといったことをしつこく聞いてくるものだったのですが、そのとき気になったのは、この「腐女子」って何か意味のある言葉なのか、ということです。
 その謎が解けたのは、書店で『腐女子彼女』というブログ本を買ったときです。この本を読んで、やっと「腐女子」の意味がなんとなく理解できました。なお、ウィキペディアでの定義によると、腐女子とは「男性同士の恋愛を扱った小説や漫画を好む趣味を持った女性を指す、「婦女子」(ふじょし)をもじった俗語」だそうです。
 なお、類語として、若くない腐女子を「貴腐人(もしくは既腐人)(きふじん)、汚超腐人(おちょうふじん)、麻婆豆腐(まーぼーどうふ)」などと呼ぶ事もまれにあるそうで、「腐女子」という呼び名が広く知れ渡った現在では、オタク女性全般に対する呼称としても使われる事もあるそうです(個人的には「腐女子って言葉、そんなに広く知れ渡っていたのか・・・」という気もしますが)。

 ただ、「腐女子」という言葉を知る以前からも、男性同士の同性愛を扱った小説や漫画を好む女性が結構多いということは知っていました。『パタリロ!』にも男同士の同性愛は出てきますし、学生時代にコミックマーケットに行ったときにも、誤って「歴史やおい本」を買ってしまい、読んでびっくりしたことがあります。
 コミックマーケットは、学生時代「東京大学ゲーム研究会」というサークルに所属していて、その会誌をコミックマーケットで売るという話になったので、その手伝いをするために行ったのですが、いろいろな同人誌が売っているので他のブースなども覗いてみたら、売り子さんのいない販売スペースに何やら新撰組を題材とした歴史小説めいた本が置いてあったので、「普通の」歴史同人小説かと思ってつい買ってしまいました。
 そして、いざ読んでみると、何やら少年時代の土方歳三と沖田総司が出てくる話で、話が進むうちになぜか土方と沖田が突然恋愛モードになって絡み始めて・・・あのときの衝撃は今になっても忘れられません。
 ちなみに、男性同士の同性愛が好きといっても、それはあくまで小説や漫画での話であって、現実に男の同性愛者の性交渉を見たいという人はほとんどいないようですね。小説や漫画での同性愛もかなりファンタジックに描かれているようですし、性欲とはちょっと違うような気がします。

 黒猫には、この種の趣味は全く理解できませんが、だからと言ってこの種の趣味を持つ女性を「腐女子」とまで呼ぶことはないのではないか、と思っています。男性の欲求の中にも女性には理解できないものが多いでしょうし、それならば女性の欲求の中に男性には理解できないものがあっても当然でしょう。それが女性の一人で(あるいは女性仲間同士で)楽しむものにとどまっている限りは、何も問題はないのではないかと思います。
 さらに、単なる漫画やアニメ、コスプレなどにはまっているオタク女性までも「腐女子」と呼ぶのは、明らかに行き過ぎでしょう。男性の場合は単なるオタクなのに、女性になると「腐女子」にされてしまうというのは、明らかに均衡を欠いていると思います。
 黒猫の従妹にもそれっぽい趣味の女性がいますが、だからといって変な感じは特にありません。もっとも、その従妹の家族は、その従妹の話を極端なほどしたがらないので、実態はあまりよく分からないのですが。

 ただし、黒猫は『腐女子彼女』に出てくるY子さんのような女性がいいのかと聞かれると、答えは否です。理由は、Y子さんが「腐女子」だからではなく、やることがあまりに図々しいから。オタクめいた話をするのは別に構わないけど、彼氏の部屋に大量のBL関連書籍やコスプレ衣装などを持ち込んだり、彼氏をセバス呼ばわりしてこき使うのはさすがにどうかと思います。
 ブログの「腐女子彼女。パート2」によると、著者のぺんたぶさん、結局Y子さんとご結婚されることになったようですが、結婚してからも相当苦労させられると思うぞ・・・。まあ、もともと女性に引きずられるのが好みというタイプの男性もいますから、相性が合っているなら他人がとやかく言う筋合いのことではないのでしょうが。

 もしこの記事を1ヶ月くらい前に書いていたら、この記事はこれで終わりになる予定だったのですが、今ではもう1つ言いたいことがあります。
 黒猫も愛読している、塩野七生さんの『ローマ人の物語』について、最近スペシャル・ガイドブックが発売されました。
 『ローマ人の物語』は、古代ローマの誕生から滅亡(+α)までを描いた、全15巻にもなる長編歴史小説で、作者の塩野さん自身、疑問があったらいつでも調べに行けるようにと、わざわざ長期間ローマに滞在しながら1年に1作ずつ書き進めたというだけあって、古代ローマ史の著書としても日本では他に類を見ないと思われるほどの大作です。読者層も男女を問わず、別にBL関連書籍では断じてありません。
 ところが、そのスペシャル・ガイドブックの145頁以下、「編集部が選ぶローマ人劇場ベストV 個性派ぞろい!皇帝の趣味自慢」という記事では、何だこれはというような「解説」が堂々と載っています。なお、引用部分中、原作の引用を示すところは省略しています。

 まず、五賢帝の1人ハドリアヌスの項。
「芸術愛好やコレクション癖もこの官能線上にあるが、最も彼らしいのが古代ギリシア的な「少年愛」。長年の夢だったギリシア文明圏への巡業の旅の途上で、彼はアンティノーと運命的に出会う。この並外れて美しい容貌をもつ少年を、成熟した、しかし胸の内には若々しい激情が燃えさかっている、四十八歳のローマ皇帝が愛したのだ。女が入り込めない男の世界、覗いてみたい!」

 次に、トライアヌスの項。
「私生活は健全そのもの。まるで面白くないが、面白い“欠点”もあった!一つは酒飲みなこと。当時としては珍しく葡萄酒をストレートで飲んだ。もう一つは美しい若者たちを夕食の席にはべらせるのを好んだこと。勤勉な彼が少年愛!?と一瞬胸がときめいたが、この種の感情は同性愛ではない。男にならない前の純粋な美しさを愛でるにすぎない。要するに風景と同じ。なんだか、ちょっと残念・・・。

 そして、アントニウス・ピウスの項。
「ハドリアヌスから皇位を継いだ彼は、同性愛の性向については(残念ながら)継承しなかった。」

 この太字の部分を読む限り、このページの記事は明らかにそっち系の女性が書いているんでしょうけど、仕事で書くまじめな本にそういう趣味を前面に出すのはいかがなものかと思います。
 ちなみに、古代ローマではキリスト教が普及する以前であるため、同性愛自体は特にタブーとまではされておらず、ハドリアヌス帝が少年アンティノーを寵愛し、彼がナイル川で溺死するとハドリアヌス帝が彼を神格化したという話は比較的よく知られているほか、同性愛に狂奔した皇帝ヘラガバルスなども歴史上に登場しますが、塩野さんにはその手の趣味は全く無いようで、ヘラガバルスの話などは簡単に切り上げています。
 ただ、古代ローマ史の登場人物には美少年・美青年が比較的多く、いわゆる歴史やおい本は史実にあまり依拠しないと言われているので、『ローマ人の物語』をきっかけに、古代ローマを題材にした歴史やおい本が大量に出回ったりしたらどうしようなどと、引用した記事を見ながら思ったりします。