原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

不正入試で一番損害を被るのは子ども本人だ!

2012年10月03日 | 時事論評
 我が子出生直後より 「お抱え家庭教師」 として君臨して来ている原左都子だが、現在娘が大学生となり、我が家庭教師家業も一つの大きな山を超えた感覚で少し肩の荷を下ろしているのが正直なところだ。

 思い起こせばこの18年間余り、幼稚園、小学校、中学校、大学と4度の「お受験」の関門を親子二人三脚にて潜り抜けて来た。
 その過程において、当然ではあるがただの一度も“裏口”からの入学など志したことはない。 産まれながらに多少(あくまでも“多少”の範疇だが)の事情を持つ娘の学力・能力を我が個別指導力で徹底的に鍛え上げる手法により、正々堂々胸を張って志望校へ入学達成できた事で、娘は現在人格面でも自信を得て大きく成長を遂げてくれている。


 実は、そんな中、一度だけ“裏口”手法を使うべきか??との場面に瀕した事がある。

 それは私立小学校入試に際してなのだが、当時娘が通っていた専門教育研究所より、娘の産まれ持つ事情を前もって志望私立小学校の校長に伝えておいてはどうか、なるアドバイスを頂戴したのだ。  当該研究所の研究者氏曰く、その私立小学校は我が子同様の事情を持つ子ども達に理解があり実際に入学させているとの事だ。 ぶっつけ本番で入試に臨むよりも、前もって親より娘の事情を伝えておくことで学校側からより理解が得られるかもしれないし、入試日当日の娘自身の負担も減るのではないかとの配慮である。

 受験票を提出した後、早速当該小学校に問い合わせたところ、快く事前校長面談を実施してくれるとのことだ。
 この回答に大いに喜んだ私であるが、はて、こういう場合“手ぶら”で学校に向かってよいものかとの考えが一瞬頭に過ぎった。 おそらく今回の面談では学校長と我々親子のみの対面となることは目に見えている。 社会人としての常識側面から考慮しても、我々のためにわざわざ時間を割いて下さる学校長にまさか“手ぶら”でお会いする訳にもいくまい。
 こういう時に困惑するのが、私自身は幼稚園から大学院まで一貫して国公立を普通に受験し入学卒業した経験しかないため、その種私学受験の場に即する“スマートな対応”の程を一切心得ないことだ。

 そこで、我が身内はじめ子供二人の度重なる私立「お受験」を経験している義母に相談を持ち出すこととした。 義母曰く、「ひと昔前ならばそういう場面においては『金一封』を持参するのが常識だったものだが、今の時代の作法はよく分からない。」と応えてくれた上で、「それにしても“手ぶら”で行くのはどうなのか……」 
 義母の意見を聞いた上で、今度はアドバイスして下さった研究所担当者に今一度同様の質問を投げ掛けたところ、「その必要はまったくないと思う。おそらく同じ事情を持つ子ども達に理解がある学校故に、その種の行為は迷惑なのではないか…」
 そして校長面接当日、私は研究所担当者意見を尊重して“手ぶら”で出かけた。 学校長は比較的好意的な態度で我々に面談して下さった。

 さて、その「お受験」結果であるが、 はかなくも 「不合格」 通知が届いた。
 その理由は今尚不明だ。 
 『金一封』を持参しなかった親の私が非常識だったのか、あるいは我が子同様の事情を抱える子供は受け付けているものの、娘だけは受け入れ難い存在だったのか…… 
 原左都子の当時の感想としては、やはり前者の“親の責任”によるのであろうとの結論に至っている。 (と言うのも、何度も言うが我が子の場合同種の事情を抱えている子ども達の中においてはその事情が“軽度”である事には間違いないのだ。)  悲しい事に当時の日本とはまだまだそういう時代背景だったものだ。 著名でもない私立小学校運営とは、資金的に厳しいものがあろうとも考察した。


 先だって、中央大学横浜山手中学に於ける「不正入試」の実態が発覚した。

 朝日新聞報道によると、共学化により再スタートを切ったばかりの当該中学入試において学校側の不正が明らかになったとの事だ。
 この事件をめぐっては大学トップの理事長と大学学長の判断が対立したらしい。 その板ばさみになった中高校長が出した結論が「合格取消し」であったとの事だが、その時期には受験者本人及びその家族は何も知らず入学を心待ちにしていたらしい。
 
 どうやら現在中央大学が抱えている事情は厳しいとのことだ。
 そのため、当該大学は附属学校対策として附属中高を一貫共学校に格上げするべく地元の女子校と統合政策を採った。 2010年に新たに発足した附属中高は、中央大学への“内部進学”を魅力と打ち立て開校したらしい。
 中央大学のごとく、内部進学を前提に付属校を新設したり既存の私立校と合併して系列化する動きが、国内少子化が進む中、将来の定員割れを恐れる私立大学現場で活発化しているとの報道である。
 その前提として、何処の私立大学ももっと早いうちから“子どもを囲い込む目的”で国内に附属中高が増設されているとの報道だ。


 今回の中央大学横浜山手中学に於ける「不正入試」は、上記の趣旨により大学理事長と学長、そして附属中高現場の校長等々組織トップの判断が食い違い、内部バトルの醜態にまで至った有様のようだ。
 
 この犠牲となり、合格点に達していないにもかかわらず「合格」「不合格」の波間を泳がされたまだ幼い中学受験生こそが気の毒である。

 それにしても、受験生の親こそが子供の実力の程を普段から見極めておくべきではあるまいか? と我が子の「お抱え家庭教師」を長年続けている原左都子は考察する。
 しかも、子供の祖父が中央大学に多大なる影響を及ぼせる“大物”ともなると、その人物が孫の入試に際して「口利き」をしそうな事くらい親たる者は察知しておくべきだ。
 (自分ちの爺さんが、我が子の中学入試に関して“裏入学”を頼んだ事を知らなかった、だと??) あり得ない話だよなあ。

 とにもかくにも、この種の「不正入試」事件に関して一番損害を被るのは当該受験生の子どもである事には間違いない。
 真っ当な子どもに育てたいのならば、親自らが普段より一肌脱ぐ努力を怠らず我が子の真なる成長を願うべきではないのか??


 最後に我が娘の話に戻せば、上記私立小学校を「不合格」となったことが大正解のその後を歩み続けている。 
 愚かにも母の私が『金一封』を持参しようかどうか迷った上記の私立小学校に入学することなく、その6年後に確実な学力を身につけて、(学習指導力という真の意味合いで)ハイレベルの私立中高に実力にて合格し入学した娘だ。 そのお陰で現在の大学にも推薦合格が叶い、現在自らが選択志望した学問に勤しむ我が娘の姿がここにある。
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