原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

合理性や正当性の欠片も無い「戦争」の本性

2017年08月21日 | 時事論評
 この8月、NHKテレビにて「戦争」に関連する特集番組が複数本放映されたが、私もその何本かを視聴した。

 それらの番組すべてが当然ながら戦争を否定する内容だったのだが、そのNHKの「否定」“訴え度合い”が今までよりも強力になった感を抱いた。
 もしかしたら、「集団的自衛権」を主軸として改憲を叫ぶ安倍政権が支持率を下げている事態と並行する動向か??  などと想像しつつ、よき傾向と捉えテレビに集中した。

 例えば昨日(8月20日)夜の時間帯に放映されたNHKスペシャル「東京・戦後0年」も視聴した。
 現在東京暮らしの私とはいえ元々日本の過疎地出身だ。 「東京大空襲」に関してはその話を見聞した事は多々あれど、実態を映像でこれ程詳細に見るのは初めてだった。
 終戦直後の、廃墟化した東京の様子を克明に記録している映像が数多く存在する事実が凄い。 それに加えて最新映像技術を駆使し、現代の俳優達をたちを出演させて、「闇市」や「進駐軍」の遊楽の様子等を映し出していたのも興味深かった。
 私がこの世に生まれたのが「もはや戦後ではない」とのスローガンが掲げられた昭和30年。 そのわずか10年足らず前の時代には、大東京がこれ程までに荒廃していた事実を改めてリアルな映像にて知り、驚愕させられた。

 あるいは、もっと前に第二次大戦の「インパール作戦」に関するNHKスペシャル報道番組も視聴した。
 まさに「侵略行動」でしかなかった「インパール作戦」を指導した日本兵上層部リーダーの知能の低さや愚かさ加減に愕然としつつ…。  その無駄で不毛な作戦により3万人もの日本兵が犬死に至った事実に怒りと無念さを抱かざるを得なかった。 
 組織のリーダーに、その種の愚かな人材が配備されてしまう不運は現在に至って尚何処の組織・団体(そして政権)に於いて付きものだろう。  が、それにしても“勝ち目の無い戦争”との究極の場面に於いて、何故独善的で知能の低い人材が組織トップに登用されてしまうのか? やり場のない憤りを感じた映像だった。


 話題を大幅に変えよう。

 2017.8.16 朝日新聞夕刊「文芸・批評」“思考のプリズム” は、映画作家 想田和弘氏による「米国と北朝鮮 『非合理性』が潜む怖さ」 だった。

 早速以下に、その一部を要約して紹介しよう。
 米国・トランプ氏と北朝鮮・金正恩氏の間の緊張が高まっている。 しかしロジカルに考えれば、両国には戦争するための合理的理由やメリットがないので、戦争になる可能性は低い。
 というのも、金正恩氏が核兵器の開発に力を入れて来たのは、米国によって政権を転覆させられることを防ぐためである。故に、米国による攻撃を誘発する行為は自殺行為だ。 
 一方の米国にしても、北朝鮮を攻撃すれば同盟国の韓国や日本が報復攻撃を受ける。 下手をすれば核戦争になり、世界の破壊に繋がりかねない。 米国にとっても北朝鮮と戦争をすることはリスクが高過ぎる故に、先制攻撃はしないだろう。
 それでも僕は不安を感じる。 何故ならば、人間とは必ずしも合理的に行動する生き物ではないからだ。
  (中略)  国同士の関係も同様だろう。
 先の二つの世界大戦も、一見もっともらしい大義名分に基づき開始されたが、それらは結局、参加した国すべてに凄まじい破壊と殺戮を招いただけで、得をした国などかなったはずだ。 要は徹頭徹尾愚かな行為だったのだ。  (中略)
 合理性のある戦争などそもそも存在しないのだから、戦争を合理的に説明しようとするのも辞めた方がよい。 覇権主義や近代兵器などなければ、そもそも対立する必要のない遠く離れた国同士が、なぜか核戦争の危機にあるという奇妙な事態。 これは悲劇というよりも喜劇である。
 (以上、朝日新聞記事より、映画作家想田和弘氏の記述の一部を紹介させて頂いたもの。)


 一旦、私論に入ろう。
 
 まさに、映画作家 想田氏が記されている文面に100%同感申し上げる。
 戦争をして得をする国など皆無のはずだ。

 ただ、原左都子の私論では、戦争により“得をする人物”はいるのかもしれないと感じたりもする。
 昨日見たNHKスペシャル内でも、戦争により焼け野原と化した東京の「闇市」や「進駐軍」の音楽隊に於いて“得をした”人物が具体的に描かれていた。
 ただ、それは“棚ぼた”得であり、あくまでもミクロ観点範疇での得だったことだろう。

 あるいは、「インパール作戦」を牛耳った牟田口廉也氏なる元日本の陸軍軍人は、もしかしたらそれを実行した事により個人的内心部分で “得をした” と感じたのではないかと思うふしがある。
 それ程までに、ストイックかつ“異常人格者”として、NHK特集がこの人物を描いていたと私は捉えたのだが… 
 ただ異常心理下になければ、あの悲惨な状況下で3万人もの部下兵達を死に至らしめる事が決定している作戦へと導かなかったことであろう……


 最後に私論でまとめよう。

 戦争は、決してしてはなるまい!
 それで合意しているはずの世界だが。

 それでもどうしても、戦争とまでは言わずとも「テロ」が発生し続けるこの世の実態だ。
 何故だろう??
 怖い話だが、世には必ずやミクロ・マクロ視点を問わず、冗談抜きで戦争により心理面(報復勝利感を得る)等々様々な意味合いで“得をしたい”人物が存在する現実であろうし…。 
 しかも、それらの人物を輩出する事により裾野部分でおこぼれ利益を享受するとの世界システムが、既に成り立っている現世ではなかろうか…… 

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