もみさんの一日一冊遊書録( 2011年9月1日 スタート!: メメント・モリ ) ~たゆたえど沈まず~

年とともに人生はクロノロジー(年代記)からパースペクティブ(遠近法)になり、最後は一枚のピクチュア(絵)になる

231029 ドキュメンタリー映画「私のはなし 部落のはなし」(満若勇咲監督:2022)感想特5

2023年10月29日 15時40分12秒 | 映画・映像
10月29日(日):   

 上映時間 205分(3時間25分 途中休憩あり)は、長かった。しかし、「今この時代に、よくこれだけ充実した内容の映画を撮れたな。と言うか、撮れる人がいたな。」という驚きでいっぱいの気分だった。観ながら疲れはしたが、自然に背筋が伸びていくのを覚えた。また、制作した監督の若さ(30代!)が、今後への希望に思えた。はじめ見に行くことを躊躇していたが、心から見てよかったと思った。

 上映時間の長さは、無駄ではなく、観る者に納得させるために必要な長さだった。部落の中に「同和地区という表現自体が新たな部落の名称になる」と言って忌避する人がいるという指摘をはじめ、天皇制との関係性なども含めて、丁寧な気付きに満ちた内容だった。

 強いて不満を言えば、部落差別を扱いながら、昔の部落内の様子は描かれているが、現在の部落内のコミュニティーの存在については十分に描き切れていなかった気がする。ある種の残滓としての描き方になっていた。ただ、そのこと自体が「部落差別が部落の人々に問題がある内在的なものではなく、外から差別する側の問題という外在的なものであることの反証になっている」気がする。部落の人たちは特別な人たちではないのだから、あえて部落的なコミュニティーのあり方を探し出すのもナンセンスな気がする。一方、矛盾するようだが、それを踏まえたうえで、監督には「現代の部落のあり様に迫る」更なる作品を期待したい。

 この作品を多くの人に観てもらいたいとは思はない。この作品の内容と時間に付き合うには、前向きな意思と自制心をかなり求められるから。ただ日本の近代史や部落差別問題について真面目に考えようとする人々には避けて通ることのできない、必ず観ておかないといけない映画が新たに生み出されたのだと思う。満若勇咲監督に感謝したい。
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