特待生と野球留学

「特待生」、「野球留学」、「アマチュアリズム」に焦点を絞って展開します。

盛岡商に学べ?

2007年06月11日 | ブルータス

06-07年シーズンの高校サッカー日本一は盛岡商でした。05-06年シーズンの野洲高校に続いて公立高校の連覇です。

★高校サッカー選手権
【06-07年】優勝:盛岡商 準V:作陽 4強:神村学園、八千代
【05-06年】優勝:野洲 準V:鹿児島実 4強:遠野、多々良学園
【04-05年】優勝:鹿児島実 準V:市立船橋 4強:国見、星稜

実は、盛岡商は06年秋の高円宮杯では1回戦で星稜高校に1対8と大敗しています。

★高円宮杯全日本ユースサッカー選手権(U18)大会
【06年】優勝:滝川第二 準V:名古屋グランパス8ユース 4強:初芝橋本、ガンバ大阪ユース
【05年】優勝:東京ヴェルディユース 準V:コンサドーレ札幌ユース 4強:滝川第二、サンフレッチェ広島ユース
【04年】優勝:サンフレッチェ広島ユース 準V:ジュビロ磐田ユース 4強:鵬翔、鹿児島実

同年代のユースチームと高校チームが競う高円宮杯では、ここ数年ユース優勢が続いています。冬の国立で公立高校が連覇した背景には、有力選手がユースに流れている事情があるに違いありません。

さて、滝口氏の「記者の目」は5月16日付でした。5月24日に毎日新聞は再度、「記者の目」を特待生問題に費やしています。書いているのは盛岡支局の安田光高氏です。

■記者の目:発端の地から野球特待制度を考える(リンク先はGoogleのキャッシュ)

安田氏は「岩手県は高校野球の後進県だ」と言います。まあ、否定するのは難しいところです。07年春までの春夏通算は28勝76敗、戦後の春夏通算は19勝62敗、87~06年の20年間では6勝25敗、97~06年の10年間では2勝13敗、どの期間で区切っても勝率で46位です(→「いつか、テイクオフ」)。ブービー4冠?なのです。

安田氏は次のように書いています。

今年1月、東京の国立競技場で全国高校サッカー選手権大会を取材した。優勝した岩手県代表の盛岡商は冬場、雪でグラウンドが使えない。このハンディを克服し、県立高校が県内選手だけで戦って全国制覇した。

この冬は暖冬だったよなあと思いながら、意地悪な私は気象庁のWebサイトを調べてみました。06年12月、盛岡市で1センチ以上の降雪が観測されたのは5日ありました。たしかに12月17日の雪は痛かったかもしれませんが、すくなくとも大会直前に関しては「ハンディ」を強調するようなことでもなかったようです。

安田氏は続けます。

05年に夏の甲子園を取材した時のことだ。<略>花巻東は15年ぶりの出場。アルプススタンドは満席になると思っていた。しかし、空席が目立った。<略>04年のセンバツでは、岩手県から県立一関一が出場した。この時、スタンドは満席だった。「これが地元代表ということなのか」と思ったものだ。選手の構成が、純岩手県チームだからだったのかもしれない。

アルプスの話ですから、それはそのとおりだったのでしょう。04/03/24(水)14:52開始の第3試合は、拓大紅陵が一関一を6対0で降しました。この試合の観衆は1万5000人と発表されています。05/08/12(金)8:30開始の第1試合は、樟南が花巻東を13対4で退けました。 この試合の観衆は1万2000人です。

一関一も花巻東も平成19年度の募集人員は240名です。一関一は1898年創立ですが、花巻東は1956年の開校です。一関一は49年ぶりの出場でした。前回出場が1955年春です。花巻東はその翌年の開校なのです。こうした条件を無視して、単にアルプスの入りだけで、花巻東を引き合いに出すのは失礼な話です。 

だいたい、一関一は「21世紀枠」というお情けで出ただけの話ですが、花巻東はトーナメントを勝ち上がってきたのです。花巻東の05年夏のベンチ入り選手に県外中学出身は秋田の1人しかいません(花巻市は内陸部)。

04年春の一関一のキャッチャーは宮城県の中学出身者でした。「純岩手」ではありません。まあ、一関市は宮城県に隣接しています。一関一は昔から宮城からの越境入学を認めてきたはずです。「まず岩手が「留学」廃止を」と言うなら、そっちも禁止すべきでしょう。先に結論がある記事の見本のようなものです。


評議員【訂正】

2007年06月10日 | 脇村語録

05/28付「高野連新役員」のページにおいて、「評議員会は審議(諮問)機関の位置づけとなります」と記述していました。財団法人についての一般的な話なら、この認識でもいいのですが、高野連様の場合には事情が異なりますので、ミスリードをお詫びし、当該文言は削除します。

アマ4団体の寄付行為では、以下6点につき、次のように定められています。

A:理事の人員
B:理事の選出
C:評議員の人員
D:評議員の選出
E:会長の選出
F:寄付行為の変更

★日本野球連盟
A:17名以上20名以内(会長1名、副会長3名以内、専務理事1名以内を含む)
B:評議員会で選任
C:50名以上67名以内
D:理事会で選出し、会長が任命
E:理事の互選
F:理事現在数及び評議員現在数の各々の4分の3以上の議決

★大学野球連盟
A:22名以上26名以内(会長1名、副会長2名を含む)
B:評議員会で選任
C:43名以上50名以内
D:理事会で選出し、会長が任命
E:理事の互選
F:理事現在数及び評議員現在数の各々の3分の2以上の議決

★学生野球協会
A:17名以上21名以内(会長1名、副会長3名を含む)
B:評議員の互選
C:80名以内
D:(1)大学野球連盟で選挙した者、(2)高野連で選挙した者、(3)理事会で選挙した者
E:評議員会で選挙
F:評議員の3分の2以上の同意

★高野連
A:30名以上35名以内(会長1名、副会長4名を含む)
B:評議員会が選任
C:70名以上90名以内
D:(1)理事会による選任、(2)加盟団体=都道府県高野連による選任、(3)会長の指名
E:評議員会が理事の中から選任
F:理事現在数および評議員現在数各の3分の2以上の同意

会長の選任に関して、日本野球連盟と大学野球連盟では理事の互選になっていますが、学生野球協会と高野連様では評議員会で選任することになっています。また、寄付行為の変更に際して、学生野球協会では理事会の同意を必要としていません。

ざっくりと調べてみましたが、スポーツ関係以外では、評議員会でトップを選ぶ財団法人は見当たりませんでした。

財団法人社会保険協会:(会長)理事の互選
財団法人日本博物館協会:(会長)理事の互選
財団法人全国市町村振興協会:(会長)理事会が選任、(理事長)理事の互選
財団法人公正取引協会:(会長)理事会が推挙
財団法人明るい選挙推進協会:(会長)理事の互選
財団法人全国消防協会:(会長)理事の互選
財団法人国学院大学院友会:(会長)理事の互選
財団法人和歌山県暴力追放県民センター:(会長)和歌山県知事の職にある者
財団法人民事法務協会:(会長)理事の互選
財団法人堺市水道サービス公社:(理事長)理事の互選
財団法人アイヌ無形文化伝承保存会:(会長)理事の互選
財団法人公益法人協会:(会長)理事の互選
財団法人日本棋院:(理事長)理事の互選
財団法人日本相撲協会:(理事長)理事の互選
財団法人日本ハンドボール協会:(会長)理事の互選
財団法人日本オリンピック委員会:(会長)評議員会の推挙、(副会長)理事の互選
財団法人日本体育協会:(会長)評議員会で推挙し理事会で選任

高野連・脇村会長11月に進退「諮る」(リンク先はGoogleのキャッシュ)
(スポニチ 2007年06月08日付 紙面記事)
▼日本高野連評議員会 日本高野連の予算、決算や事業計画などを決定する最高意思決定機関。これに対し理事会は執行機関。また会長や副会長などの役員についても選任権を持ち、毎年2回の定例評議員会が行われる。現在、理事会や加盟団体から選任された評議員79人が在籍。

この記事の中(引用していない部分)で、脇村氏は「特待生問題では生徒は無過失である」と述べたとされています。脇村氏は以前も(特待生は)故意ではないにしても、責任はある」と述べています(→「選手にも責任?」)。

「無過失責任」は自賠責保険や労災保険などで被害者救済のために取り入れられている考え方ですが、特待生によって誰かが被害者になったわけではない以上、出場停止というペナルティを求める必要もなかったはずです。


諸団体一覧

2007年06月10日 | 憲章見直し

これだけの団体が入り乱れていたら、神奈川新聞の社説子でなくても混乱するものでしょう。<>内は、当ブログで用いている略称?です。

●社団法人日本野球機構<NPB、プロ>
いわゆるプロ野球の組織
●財団法人日本高等学校野球連盟<高野連
高校の硬式と軟式を統括
●財団法人全日本大学野球連盟<大学野球連盟>
大学の硬式(のみ)を統括
●財団法人日本学生野球協会<学生野球協会>
高野連と大学野球連盟の上部組織
●財団法人日本野球連盟<日本野球連盟>
いわゆる社会人野球(硬式)を統括
●全日本アマチュア野球連盟<アマチュア野球連盟>
日本野球連盟と学生野球協会で構成、JOCに加盟
●財団法人全日本軟式野球連盟<全軟連>
高校を除く軟式野球を統括
●財団法人日本リトル野球連盟<シニア>
通称リトルシニア、学校単位ではない少年硬式野球の団体、日本野球連盟に加盟
●財団法人日本少年野球連盟<ボーイズ>
通称ボーイズリーグ、学校単位ではない少年硬式野球の団体、日本野球連盟に加盟

以上、<全日本野球会議>のWebサイトに「日本野球界団体図」のページがあります。実際にはもっと複雑なんですが…。

このうち、学生野球協会はすでに歴史的役割を果たし終えており、今では邪魔にしかなりません。アマチュア野球連盟は、(プロが参加しない時代の)五輪出場のために便宜的につくられた組織ですから、学生野球協会の解散によって高校が外れたところで、深刻な影響はありません。

学生野球憲章13条をめぐる解釈が割れてしまった以上、高校は高校で高校野球憲章をつくり、大学は大学で大学野球憲章をつくればいいだけのことです。あるいは、次のような考え方もあるでしょう。

プロ・アマ球界ウラの真相(13) (スポーツニッポン07/05/22付5面)
すべてを統括した「日本野球憲章」を作れないか。今回の連載の最後に提言として記しておきたい。

なお、ほかに関連するスポーツ団体は次のとおりです。

●財団法人日本高等学校体育連盟<高体連>
高校競技を統括、野球は含まない。インターハイを主催
●財団法人日本中学校体育連盟<中体連>
中学競技を統括、軟式野球を含む。全中(全国中学校体育大会)を主催
●財団法人日本オリンピック委員会<JOC>
IOCの国内組織。アマチュア野球連盟が加盟
●財団法人日本体育協会<体協>
国内各競技団体を統括。国体を主催し、スポーツ少年団を組織。日本野球連盟と全軟連が加盟

特待生問題を高野連様だけで解決しようとするのは、最初から無理があります。


神奈川新聞

2007年06月09日 | 君子

社説子は1人とは限りませんが、それにしても傑作とも思える変わり身です。4月21日付神奈川新聞は「甘え一掃、ルール順守を」と題する社説を掲げています。

スポーツ特待制度 甘え一掃、ルール順守を(Googleのキャッシュ)
(2007/04/21神奈川新聞)
高校側は当然、ルールがあることは知っていたはず。だが、西武の裏金問題や、横浜ベイスターズの契約金問題などと同じく「ほかもやっているから」という意識があったと考えざるを得ない。

ベイスターズには「ほかにもやっている(た)」の意識があったのは間違いないでしょう。ライオンズの場合も同様です。と言うより、スカウトは1球団に永年勤続するわけではありませんから、ある球団の手法が他の球団に伝播することは避けられません。まして、管理部長職にあった根本氏がホークスに移っているのですから、(時期は別にしても)西武球団だけの話であろうはずがありません。

ただ、高校野球の場合、校長先生が学生野球憲章で特待生制度が禁止されていることを知っていたとは限りません。前校長はともかく、高木現校長はまず知らなかったはずです。何も知らずに高野連様の事情聴取に応じて、何気なく喋ったことが大問題に発展したというのが真相に近いはずです。

社説はさらに続けます。


どんな規則も関係者の甘えがあれば意味のないものとなる。高野連が行う全国的な調査で、どこまでその実態が明確になるか。この機会にグレーゾーンの一掃を期待したい。

このように「グレーゾーンの一掃」を求めていたはずの神奈川新聞ですが、3週間後、ものの見事に豹変します。

特待制度の緩和措置 性急な調査で招いた混乱(Googleのキャッシュ)
(2007/05/12神奈川新聞)
 しかし、疑問は残る。そもそも高野連が勢い込んで実施した全国調査は一体何のためだったのか。わずか十日足らずの短期間の調査だったため、都道府県の高野連は対応に追われ、学校側もあいまいな問い掛けに混乱をきたした。高野連は学生野球憲章第一三条を重んじるあまり、各校への対処が性急に過ぎた感がある。

あれっ? 「グレーゾーンの一掃を期待」していたのに、今度は「性急に過ぎた」? 「わずか十日足らずの短期間の調査」でしかないことは、4/21の時点でわかっていたことです。

5/21付の「一体何のためだったのか」という問いかけには、4/12付の「グレーゾーンの一掃」が答えとして適切なのかもしれません。


 一方で同じ学生野球ながら、全国三百七十二校の加盟大学をまとめる全日本学生野球連盟の対応は、時代に即したものだ。

えっ! 「全日本学生野球連盟」って?

これは新団体ではなく、たぶん「全日本大学野球連盟」のことでしょう。まあ、個人ブログではありがちなことです。目くじらを立ててはいけません。いくつもの団体がごちゃごちゃ共存しているのですから、一般人が覚え切れるはずもありません。社説子が一般人と同じレベルでいいかどうかは別の問題です。いずれにしても、普段からロクな社説を書いていないのでしょう。


 教育的配慮とは何か。高校野球界を仕切る高野連には今後、しっかりと周りを見る目と、現場の意見を聞く耳を持ってもらいたい。

4/21にはエールを送られていた高野連様が、5/12にはお叱りを受けているわけです。はい。 

ただし、神奈川新聞には豹変の素地がありました。4/21付には次のような一節があるのです。

4/21付社説
私立高校が「自校を全国区に」と、スポーツ系の部活動を強化しようとするのは、極めて自然な”企業努力”である。


リンク指針

2007年06月08日 | 運営指針

新聞社のリンクポリシーはさまざまですが、「個別記事へのリンク不可」を掲げる新聞社も少なくありません。なかには、住所・氏名を明記のうえ、文書でリンク許諾を求めるよう要求してるところもあります。→「主要メディアのリンクポリシー」

当ブログでは、掲げられているリンクポリシーを一切無視して、勝手にリンクしています。私としては単にソースを示しておきたいだけのことですが、そろそろ脇を固めておく必要があります。

この数日、試験的に「Web魚拓+」を利用してきましたが、どうにも具合が悪いようですので、今後は原則としてGoogleのキャッシュにリンクします。

直接リンクでは、ダイレクトに目的のページに行けるという長所がありますが、削除やURL変更に対応できないという短所があります。この点、Web魚拓+ならリンク先のページが削除されてもキャッシュが残ります。

ただ、Web魚拓+に取り込まれたキャッシュページのリンク先を開くと、Web魚拓+のフレーム内に表示されてしまいます。これはやはり具合が悪いでしょうから、Googleのキャッシュへのリンクとします。

Googleのキャッシュでは、元のページが削除されれば一定期間経過後にキャッシュも削除されます。この点では永続性が期待できるWeb魚拓+より使い心地が悪いのですが、やはり削除する(公開しない)権利は認められるべきです。

私自身は、直接リンクできればそれが一番いいのですが、それを望まない新聞社も現実にあります。そこで、今後はニュースサイトへのリンクは一律にGoogleのキャッシュをリンク先とします。

すでにWeb魚拓+にリンクしたものについては、段階的にGoogleのキャッシュまたは直接リンクに振り替えていきます。また、すでに直接リンクしているものについては当面放置し、リンク切れを確認し次第、リンクを解除するものとします。


元特待生記者

2007年06月08日 | ブルータス

昨日、「過去に目を閉ざす者は結局のところ現在にも盲目になります」というヴァイツゼッカー演説を引用しました。(元)大統領はこう続けています。「非人間的な行為を心に刻もうとしない者は、またそうした危機に陥りやすいのです」(『荒れ野の40年』岩波ブックレット)。

滝口氏は元特待生です。「高校時代、学費を免除される特待生として野球をしていた」と自ら書いておられます。

記者の目:元特待生として思う (リンク先はGoogleのキャッシュ)
ttp://www.mainichi-msn.co.jp/today/archive/news/2007/05/16/20070516k0000m070183000c.html

この記事は5月16日付の紙面に掲載されています。救済措置が発表されたあとです。高校の名前は書いてありませんが、高校野球ファンなら読めばすぐにわかります。同期生5人がプロ入りした厚い選手層にベンチ入りできなかった滝口少年は、受験勉強を始めて「自分が特殊な世界の住人だったと気づいた」のだそうです。

記事全体を通して言えば、共感できる部分もあります。そういえば、ある大学出の黄金ルーキーが「週刊文春」を「…ぶんはる」と読んだという有名な話もあります。今は某プロ球団の監督になっていますが…。

滝口氏の「記者の目」には、2つほど欠落している視点があります。1つは、適法な私的契約を年度途中に解約せよと申し渡した高野連様の“絶対専制君主”ぶりに対して、元特待生としてどのように感じているのかという点です。

田名部氏によれば、「学生野球憲章に時効はない」のですから、特待生だった滝口氏もアウトです。20年前に、いきなり今回のような横暴な態度に出られたら、学費免除を受けていた滝口氏はどのように感じたでしょうか? 

かりに「行き過ぎ是正」という目的が正しいにせよ、この手法が受け入れられるか、それとも受け入れ難いかという点です。これはぜひお聞きしたいところです。まあ、分別がつくはずの新聞記者さんが触れておられないのですから、きっと粛々と受け入れるということなのでしょう。

2つ目は、滝口氏がなぜ(野球では)名門と呼ばれる高校に特待生として入学したのかという点です。他律的なものだったのか、自ら望んだのか、せめてその程度は書いていただかないと、「元特待生」をカミングアウトした意味がありません。

ご自身のことなのですから、取材する必要などありません。いくらでも書けるはずです。田名部氏や脇村氏は「行き過ぎた勧誘行為」を問題視しているようですから、勧誘があったのかなかったのかについて触れてこそ立派な記事になるはずです。

あるいは滝口氏は母校に累が及ぶ可能性を考慮されたのかもしれません。だからこそ、この問題を追及するにあたっては、「北風より太陽」で免責を与えることのほうが重要なのです。不幸なことに、「過去は問わない」と言える器量が田名部氏にも脇村氏にもありません。


過去

2007年06月07日 | 高体連など

着目したところは同じなんですが…。毎度おなじみの滝口隆司氏のコラムです。

スポーツネットワーク>高体連も動き出した
 高体連の加盟32競技は、高校野球のように、特待制度を禁止しているわけではない。高体連側は「特待制度を全面否定するのではなく、行き過ぎがないよう、どの程度まで認めるかの線引きを検討していく」などと説明している。日本高校野球連盟と同様、「行き過ぎ」を警戒しているようだ。

ここまで言えれば、それはそれで立派なことかもしれません。もし高野連様が単に「行き過ぎ」を警戒したのなら、「行き過ぎ」た部分を罰すればよかっただけのことであって、社会通念上容認される範囲の特待生まで一網打尽にする必要があったとは思えませんけど…。

強引なショック療法が求められることもあるでしょうが、年度初めに切るようなカードではありません。まあ、毎日新聞は夏の大会には関係しませんから、センバツが終わった直後こそ絶好のタイミングです。

1927年の第4回センバツは和歌山中が優勝しました。和歌山中には毎日新聞社から優勝の“ご褒美”が与えられました。夏休みのアメリカ遠征です。主力選手は渡米していますから、和歌山中は夏の予選を控え選手で戦いました。この“ご褒美”は1932年に廃止されました。あれっ? 1932年って?

はい。野球統制令は1932年3月28日付で発令され、同年4月1日に施行されています。野球統制令の背景に「行き過ぎ」があるのだとすれば、過熱させたのは誰なのかという点も問われるべきでしょう。もちろん、当時生まれてもいない滝口氏にその責任を問うわけではありません。それは筋違いと言うものです。

1985年5月8日、当時のヴァイツゼッカー西ドイツ大統領はドイツ敗戦40周年にあたり、「過去に目を閉ざす者は結局のところ現在にも盲目になります」(『荒れ野の40年』岩波ブックレット)という有名な演説をおこないました。

滝口氏は上のコラムで、「高体連スポーツもやはり教育の一環であり、アマチュアスポーツという位置づけだ」と述べています。再三指摘しているように学生野球憲章には「アマチュア」の文言はありません。高体連の「規程」にはありますが、学生野球憲章にはないのです。

滝口氏がどうしてもアマチュアリズムを語りたいのなら、70~80年前の自社の歴史にも目を閉ざしてはなりません(まあ、そんなに遡らなくてもいいのですが…)。

さて、滝口氏のコラムは次のように結ばれます。「福原の特例」の件は、このブログではすでに述べています(→「高体連が小委員会設置」)。


今回、高体連は高校スポーツをどうとらえるのか。福原の特例と同じく、物質的な利益を得る特待生も認めるとなれば、競技者規程を見直すべきだろう。しかし、あくまで「教育の一環」「アマチュア」を堅持するのであれば、特待制度にもしっかりとしたルールを作らなければならない

滝口氏のコラムは5月18日付ですが、その数日後、高体連は問題を先送りしました。滝口氏や堂馬氏の“牽制球”が効果を発揮したのかもしれません。まあ、高野連様の対応と世論の風向きを見極めようということでしょうけど…。

競技者規定の見直しは継続審議…高体連評議員会
(サンケイスポーツ 2007年05月23日)
全国高等学校体育連盟(高体連)は22日の評議員会で、昨年のインターハイに特例で出場した卓球の福原愛(ANA)の例を契機にプロ活動を禁止する競技者規定の見直しを進めていたが、規定緩和とプロ禁止で意見が分かれたため、継続審議で一致した。


ユースより社会人で

2007年06月06日 | 展望

日本野球連盟の「登録規程」には、次のように定められています。

財団法人日本野球連盟>登録規程
(資格要件)
第5条 加盟チーム及び競技者は、義務教育を終了したものでなければならない。
(学生及び生徒の特例)
第6条 学生及び生徒は、次の一に該当する場合は競技者とすることができる。
(1) 学生は、日本学生野球協会所属団体に登録した学生を除く大学(短期大学を含む。)、専修学校及び各種学校に在籍する者
(2) 生徒は、日本学生野球協会所属団体に登録した生徒を除く高等学校に在籍する者

いわゆる専門学校は大学野球連盟には加盟できません。硬式野球部のある専門学校は社会人野球に混ざっているのです。元来は二重登録禁止条項である第6条は5年前に改正されました。

現行規定では、高野連様に加盟している高校の生徒であっても、その高校で(その年度中)野球部員として登録していなければ、日本野球連盟に登録することができます。高校の野球部になじめなかった高校生がクラブチームに入ろうとしたところ、従前の規定にひっかかったからです。

すでに中高一貫を掲げる複数の私学では、中体連の枠に入らない中学生のクラブチームを組織しています。リトルシニアもボーイズも日本野球連盟の傘下であって、学校単位の中体連とは直接関係ありません。

私立高校が母体となり高野連様の傘から飛び出してクラブチームをつくっても、受け入れ先はあるのです。青森山田クラブ、神村学園クラブ、長崎海星クラブとして、都市対抗を目指すことは可能です。北信越あたりなら、間違って出られるかもしれません。

高野連様と日本野球連盟では、プロとの関係も雲泥の差があります。楽天イーグルスの野村監督はシダックスの監督でした。カツノリが堀越高校と明治大学に在籍していた7年間、すくなくとも公の場で、父親が息子を指導することはできませんでした。

プロゴルファーの東尾理子は帝京高校の出身ですが、ライオンズの元監督である東尾修氏が高校在学当時の東尾理子に野球を教えても、何の問題にもなりません。東尾理子は野球部員ではなかったからです。高野連様の傘下を離れれば、元プロが高校生を指導してもノープロブレムです。

もはや高野連様には関係のないことですから、特待生制度も野球留学も問題にはならないはずです。ただ、都市対抗では甲子園ほど知名度アップに貢献しません。そこで、プロの出番なのです。

純粋にプロのユースチームを組織しようとすると、既存のアマと軋轢を生んでしまいます。サッカーでも何事もなかったというわけではないようですから…。日本野球連盟傘下の
U20チームの大会(リーグ戦)をプロが支援するという形なら、さして問題にはならないはずです。

もともと社会人野球には、学生野球憲章に相当するものがありません(あるのかもしれませんが、すくなくとも私の知る限りはありません)。東京ガスの木村投手の場合、たしかにドラフト前のプロとの接触を禁じた登録規程16条1項には違反しますが、それ以外に「1年間の謹慎」を根拠づけるものが見当たりません。

もし、片岡安祐美が流通経済大で部員登録していたら、ポーラ化粧品のCMに出ることはできません。まさか無償で出演しているわけではないでしょう。日本野球連盟は体協に加盟していますが、体協は80年代にアマ規定を削除しています。

新団体設立やプロのユースより、社会人への移行のほうが現実味があります。それに、高校野球は金属バットです。プロは木製バットです。社会人も(今では)木製です。(打者は)どうせプロを目指すのなら、高校時代に金属を使わないほうがいいに決まっています。

現在、日本野球連盟に加盟している専門学校チームは、会社登録扱いされています。これは、連盟内でも審議事項になっているはずですが、あくまでもクラブチームとして、母体となる高校の生徒以外にも門戸を広げたほうがいいように思われます。


クラブチーム

2007年06月05日 | 展望

伊吹文科相の陳腐な野球留学NG発言です。まあ、雑談程度の話に記者が食いついただけかもしれませんが…。

文科省ダメ出しも高野連改定拒否
(2007年5月12日06時01分  スポーツ報知)
 伊吹文科相は野球留学にもくぎを刺した。京都出身の同相は「西岡、今江(ともにロッテ)も京都出身なのに、京都の高校にいなかった。部員のほとんどが寮生活をして特待制度を受けるというのは、本来のスポーツの在り方としてどうか」と苦言。

今江は京都府向日(むこう)市出身で、京都田辺ボーイズ-PL学園高です。JR京都線の向日町駅から2つ目の山崎駅は京都・大阪の府境に位置します。郡山シニア-大阪桐蔭高の西岡は、たしかに一部の選手名鑑では(なぜか)京都府出身ということになっています。本人のオフィシャルサイトでは大阪府大東市出身ですけど…。

いずれにしても、このレベルで野球留学NGを語るのは勘弁してほしい気がします。私は高校まで鹿児島で過ごしました。もう30年ほど前のことですが、中部地方のある高校に数人の鹿児島出身の選手がいました。たしかに複雑な気持ちになったのを覚えています。

その後、私はケ○の穴を拡張しましたので、別に誰がどこに行こうが本人の勝手だと思っていますが、「特待生が問題なのではない、野球留学こそが問題なのだ」とする論調も多いわけです。

【主張】野球特待制度 拙速ではない論議重ねよ
(産経新聞 2007/05/12 05:04)
 繰り返しになるが、特待制度が悪いのではない。全日本大学野球連盟や全国高等学校体育連盟も制度の全面否定には疑問を呈している。誤った運用や拡大解釈が問題なのであり、制度を利用し半ば野放し状態の野球留学に検討を加えることが重要だと考える。

郷土意識は大なり小なり誰でも持っているものでしょうし、そうである限り、野球留学批判がやむこともないでしょう。もともと、京阪神地区に送り出された「金の卵」たちが帰省することなく故郷に触れられる機会が甲子園だったわけです。郷土意識(や学校対抗意識)を煽り立てて、部数を伸ばし広告を得るのが主催新聞社のビジネスです。

それなら、プロがこれを利用しない手はないはずです。道州制が議論され始めて久しく、いずれ47都道府県体制は消え去る運命にあります。都道府県単位で考える必要はないでしょうが、NPBが一定数のユースチームを組織し、プロを目指す者はこっち、クラブ活動としてやっていく者はそっち、という具合に分けたほうがすっきりするのは事実です。

いっそのこと、プロ球団と私学が共同でクラブチームを組織してもいいのではないかと思われます。この場合、学校単位のチームではありませんから、高野連傘下からは離れることになります。ただし、クラブチームですから学生野球憲章の呪縛からは逃れることができます。

ここで問題になるのは、サッカーと違って、両者の間の交流戦を高野連様が認めるとは思えないという点です。もとより、今のNPBと高野連様の関係では、高野連様の領域にNPBが手を突っ込む(既得権益を侵す)ことになりますから、もしプランとして持っていたとしても口に出すことさえできないでしょう。

特待生問題も野球留学問題も、野球界という全体の中で考えていけば、必ず解決策は見つかります。高校野球の枠の中だけで解決しようとすると、寮費が適正かどうかという話にしかなりません。


2つの南北問題

2007年06月03日 | ブルータス

ちょっと「ブルータス」には無理があるのですが、まず某政令指定都市の市議会議員のブログをどうぞ。

■広島市議会議員 谷口おさむのブログ>高野連VS高体連

このブログはいきなり「西ライオンズ」という、いかにもありがちな誤字から始まります。4月27日付ですから、特待生調査が進行中に書かれたものです。

導入部分は、産経新聞社がベータ版として公開中の「イザ!」のニュース記事をほとんど丸ごとコピーしたものです。中盤は、もともと共同通信の配信記事だと思われます。産経とスポニチに同じ内容のものがありました。文末を変えてあるだけです。

■iZa>「スポーツ特待、他競技は容認」 専大北上高野球部解散
■スポニチアネックス>特待生「全面否定は避けたい」

広島市議会のWebサイトによれば、谷口修議員は実在します。安佐南区選出で当選3回、所属会派は自由民主党新政クラブです。建設委員長を務めておられるようです。別に、適法な「引用」でないことを指摘したいのではありません(結果的にそうなってしまうのですが…)。

ご本人のWebサイトによると、氏は呉工、国泰寺、広島工で体育の教員を務めておられたようです。すると、「高野連には係わらないほうが良いと教えられ」たのは呉工時代でしょうし、寄付金集めの特別チームをつくったのは広島工時代でしょう。親が応援バスを出して近所の人を連れて行ったのも広島工ということになりそうです。

谷口氏はおそらく野球以外の競技で中京大や広島修道大大学院に進まれたのでしょう。高校野球が「特別」扱いされることを苦々しく思っていたに違いありません。これは野球以外の競技者に共通する心情だと思われます。

実は、ここにもう1つの「南北問題」が起きているわけです。高野連理事で毎日新聞大阪本社運動部長の堂馬隆之氏は、高野連は特待生を禁止しているのだから高体連も同調せよと主張されました。後日扱いますが、堂馬氏の(忠実な)部下である滝口隆司氏もほぼ同様のことを述べています。

高野連と高体連が等しく規制すれば、野球だけが突出している現状が固定されます。高野連が特待生を規制すれば、伝統校優位が固定され、新興私立校は事実上排除されます。2つの南北問題を抱えて利害関係が錯綜しているわけです。

要は、高校野球がマイナースポーツになれば、「特待生」など雲散霧消するだけのことですが(私はそれでもいいと考えています)、主催新聞社は人気を維持しつつ(どこにも書いてない)「アマチュアリズム」を墨守したいという贅沢な考えから脱却できないようです。