特待生と野球留学

「特待生」、「野球留学」、「アマチュアリズム」に焦点を絞って展開します。

自民党小委員会

2007年06月22日 | ブルータス

自民党の「高校野球特待生制度問題小委員会」による提言がまとまりました。特待生容認は当然のことであって、むしろ高野連様に対して「透明性の高い組織作り」を求めた点が評価されます。

各地区の私学部会は、トーンに差があるにせよ、憲章見直しか弾力的運用での特待生容認を求めていますので、方向性としてはほとんど固まったと見ていいでしょう。

特待生制度、公正な運用図り容認を…自民が提言
(2007年6月21日12時20分  読売新聞)
 「中・長期的に取り組む課題」として、<1>野球部員を理由にした特待生制度を認めていない日本学生野球憲章の見直し<2>甲子園大会でのチーム内の県外出身枠のルール化の検討<3>高野連の組織の在り方<4>プロ・アマを通じた野球関係団体の話し合いの場の設立の検討を挙げた。
 このうち、県外出身枠のルール化については、委員から「私立学校は全国から生徒を集めているため一律的なルール化は難しい」など、慎重な意見も出たという。

私は「落としどころ」のページで、「短期的には特待生問題の後始末が急務ですが、中期的には学生野球憲章の見直しが必要であり、長期的には組織の統一が求められています」と書きました。

「野球統制令と学生野球憲章」でも述べたように、学生野球憲章第3条の「試合はすべて学業に支障がないときに行なわなければならない」が大学野球に適用されて、高校野球には(条文上)適用されないというのは、「教育の一環」を損ねるはずです。高野連様サイドに立っても、ここは変えざるを得ないのです。

“解釈改憲”は好ましくありません。せめて憲章の見直しまで進まなければ、この2カ月間のすったもんだが無駄になります。

さて、自民党小委員会の「中・長期的に取り組む課題」ですが、<1>と<3>は積極的に支持します。<4>については、すでに「話し合いの場」になってもいい全日本野球会議があります。もうこれ以上、新たに別の団体をつくる必要はありません。全日本野球会議の発展的解消でいいのです。

<2>に関しては、今さら言うまでもなく、私は反対です。他紙の報道によれば、プロ野球の外国人選手枠のようにベンチ入り何人までという線を引けということのようですが、高野連様は「プロ野球の外国人選手枠を模範にせよ」と言って、耳を貸す相手ではありません。こんなところでプロ野球を引き合いに出すのは、わざとぶち壊そうとしているとしか思えません。

たとえば、埼玉県春日部市は東京と千葉、茨城県古河市は栃木と埼玉、三重県桑名市は愛知と岐阜、奈良市は大阪と京都から普通に通学圏です。かりに5人までという制限を設けたら、その規定に泣く選手が出てくるでしょう。

高校野球は学校単位でチームを編成しているのであって、だからこそ「教育の一環」たりうるわけです。代表校はその県の高校の代表であり、その県の中学出身者の代表ではありません。そんなに都道府県対抗戦をやりたいのなら、高校のチームではなく、出身中学別都道府県選抜チームを編成すればいいことです。

もし、野球留学をそんなに問題視するのなら、熊本工あたりに関東や関西出身の選手がいることも問われるべきでしょう。福岡ならいざ知らず熊本に関東や関西からの転勤者がコンスタントにいるとも思えません。

県民の税金で成り立っているはずの県立高校に隣接県でもない他県出身者が紛れ込んでいるということは、定員が限られている以上、はみ出して不合格になった県民の中学生もいるということにほかならないのです。数が少なければいいという問題ではないはずです。

というより、「県外生は何人まで」という制限を設けたら、道州制が実現し都道府県がなくなったときも、旧都道府県境という過去の遺物を引きずらねばならないのでしょうか? まあ、この程度の与党議員なのでしょう。