河北新報より転載
投票できぬ歯がゆさ/政治が遠い 福島知事選 県外避難者の声(5)


◎双葉町から茨城県古河町 大沼勇治さん(38)
「福島第1原発事故による被災県だからこそ、脱原発を争点に白黒はっきりするべきだ」
福島県知事選が告示された9日。福島県双葉町に自宅がある自営業大沼勇治さん(38)は、いわき市で候補者の街頭演説を聞いているうちに、もどかしさを募らせた。
自宅は帰還困難区域にある。昨年2月、避難先の茨城県古河市に住民票を移した。古里への愛着は変わらず、月に1度は帰宅する。投票はできないが、知事選候補者の政策を比較し、誰が福島の未来を担うべきか見極めるつもりだ。
原発事故直後、妻は妊娠7カ月。混乱の中、親類のいる愛知県に逃れた。長男(3)と次男(2)が大きくなるまでは、双葉に帰って暮らすことは断念した。
住民票の異動はやむを得なかった。住宅購入や太陽光発電の補助申請、子どもの予防接種などで不都合が生じたためだ。
自宅と避難先。二重生活を送る県民は多く、双方に住民票があれば、さまざまな手続きを取りやすい。何より古里とのつながりを維持できる。だが、住民票の二重登録は認められていない。昨年の参院選と双葉町長選で、一票を投じることはできなかった。
大沼さんの原発に対する考えは事故前と180度変わった。個人で太陽光発電事業を始め、茨城、栃木両県の空き地計5カ所で太陽光発電パネルを設置する計画を進める。原発事故による避難者として、講演で脱原発を訴える。
「原発は全基廃炉にして、自然エネルギーで復興するしかない。国にはっきりものを言える知事が必要だ」。茨城から「福島県民」として福島を見続けている。
2014年10月15日水曜日