長野県松本市に、久美子の母の親友が女将をしている旅館があり、母と二人でそこに行ったのが最後の旅行で、それから3年後に母は亡くなった。
その思い出と今後の相談も兼ねて、弥生を連れてお盆の後訪ねる予定だが、なにも知らない弥生は観光旅行気分で喜んでいる。
10時半過ぎに松本駅へ着き、弥生は一人で美ヶ原高原美術館に向かった。
久美子は前澤から、妻の静養で上田市にある鹿教湯温泉に宿泊しているので、是非話を聞いて貰いたく駅まで会いに行くと連絡してきたので、仕方なく待つことにした。
前回会った時に、もう自分達は会うのをやめ、あなたは家庭の事だけを考えてはどうか、と久美子の方から別れ話を持ち出したのである。
駅で待ち合わせ、近くのコーヒー専門店に入った。長く居たくなかったので、食事の誘いは断っておいた。
前澤は執拗に二人の関係の継続を願ったが、久美子が自分の考えをはっきりと述べてきたので、いままでとは違う彼女の強い意志を受け戸惑っていた。
話し合いは平行線のままで終わりそうにないので、2時間程で別れ、久美子は昼食を摂る気になれず旅館に直行した。
着いてみると、女将は買い物に出掛けて留守で、息子夫婦が丁重に迎えてくれ、早速温泉に浸かることにした。
開閉できる大きな窓ガラスの付いた内風呂のある部屋が用意されており、一人で好きなだけ入れる贅沢さは心地良い。
常念岳、乗鞍岳等の北アルプスが遠目に見える。久美子は無心になり、心洗われる想いで身を浸していると、過去を懺悔したくなる自分の惨めさがみえてきた。
16時近くなってようやく女将が挨拶に表れた。
「お待たせして、まあ久美子さんお久し振り、相変わらずお綺麗ねえ」
「ご無沙汰しました、8年振りですよね」
「そう、お二人で来て頂いたのが結局最後になってしまって」
「不整脈でした」
「急だったわね」
その思い出と今後の相談も兼ねて、弥生を連れてお盆の後訪ねる予定だが、なにも知らない弥生は観光旅行気分で喜んでいる。
10時半過ぎに松本駅へ着き、弥生は一人で美ヶ原高原美術館に向かった。
久美子は前澤から、妻の静養で上田市にある鹿教湯温泉に宿泊しているので、是非話を聞いて貰いたく駅まで会いに行くと連絡してきたので、仕方なく待つことにした。
前回会った時に、もう自分達は会うのをやめ、あなたは家庭の事だけを考えてはどうか、と久美子の方から別れ話を持ち出したのである。
駅で待ち合わせ、近くのコーヒー専門店に入った。長く居たくなかったので、食事の誘いは断っておいた。
前澤は執拗に二人の関係の継続を願ったが、久美子が自分の考えをはっきりと述べてきたので、いままでとは違う彼女の強い意志を受け戸惑っていた。
話し合いは平行線のままで終わりそうにないので、2時間程で別れ、久美子は昼食を摂る気になれず旅館に直行した。
着いてみると、女将は買い物に出掛けて留守で、息子夫婦が丁重に迎えてくれ、早速温泉に浸かることにした。
開閉できる大きな窓ガラスの付いた内風呂のある部屋が用意されており、一人で好きなだけ入れる贅沢さは心地良い。
常念岳、乗鞍岳等の北アルプスが遠目に見える。久美子は無心になり、心洗われる想いで身を浸していると、過去を懺悔したくなる自分の惨めさがみえてきた。
16時近くなってようやく女将が挨拶に表れた。
「お待たせして、まあ久美子さんお久し振り、相変わらずお綺麗ねえ」
「ご無沙汰しました、8年振りですよね」
「そう、お二人で来て頂いたのが結局最後になってしまって」
「不整脈でした」
「急だったわね」
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