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再会 51

2008-07-21 05:47:43 | 残雪
翌日、寺井は二日酔い気味で目が覚めた。 
食事の準備はされていたが、春子はいなかった。
いつ帰るか決めなければと考えながら、温泉に浸かって部屋に戻ると、かおりが待っていた。
「来てくれたの」
「春子さんは急の仕事で、私が相手をするようにって、昨日はご馳走になりました」
「とんでもない、僕は途中で寝てしまって、話しもたいして出来ずにわるかったね」
「いいえ、楽しかったです、初めてだから」
やや俯きかげんの透き通る顔に、朝陽が柔らかく差し込み、人形のような美しさがあった。
「家の方は大丈夫なの?」
「弟は高校生だから」
「二人兄弟なんだ」
「ええ・・」
家庭が複雑だと聞いたのを思い出し、話題を探していると、かおりが話し掛けてきた。
「あの、春子さんが言ってた事なんですけど」
「うん、何だっけ」
「私のこれからの事で」
「ああ、かおりさんが行きたい学校や就職の件ね、それなら手助けできるよ」
「私、はたちだし、できれば早く学校に行きたいから、昨日家に帰って考えたんです、それで母に連絡して、いま家にいないんですけど、そうしたら、家は心配しなくていいから、自分のしたい様にしなさいって」
「そう、良かったね、それでやはり東京に行きたいの?」
「そう思っています、でも東京に知り合いはいないし、何回か遊びに行っただけですから」
「心配いらないから何でも相談してよ、学校の資料も集めなければね」
「はい、お願いします、何も分からないので」
話が進み始めた頃に、春子が戻ってきた。
「かおりちゃん、よかったわね、できるだけ早い方がいいから、修さん、宜しくお願いします」
丁重に頼まれて、寺井は戸惑った。春子を連れ戻したかったのに、まだその気はないらしい。
「住まいはね、私の住んでいた大家さんに連絡しておくわ」
早くも事は動き始めている。
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