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もう一つの春 29

2007-01-15 04:15:54 | 残雪
叔父夫婦は、あんたみたいな東京の娘が来たと分かったら、若い男衆が大騒ぎするぞ、いっそのこと家にまとめて呼んできてお見合いさせようか、なんて笑って言うのです。
私なりに考えてみました。いくら修さんに迷惑を掛けないようにといっても、私が近くに居るだけでそちらの家庭に影響を与える訳ですから、これがきっかけとなり少し距離を置いてみる、それが一番いいのではないかと。
仕事は温泉旅館のアルバイトなんですが、いまはインターネット予約が多く、事務や受付の手伝いらしいので何とかなりそうです。
温泉は毎日ただで入れますので、肌がつるつるになる美人の湯で磨きをかけようと思っています。
落ち着きましたら必ず招待しますので、よい時期を選んで来てくださいね、東京に修さんが居てくれる、だから田舎にも我慢していられる、勝手な理屈ですけどそういう気持ちなんです。
この土地の観光といえば、白鳥が来る湖で、朝日の昇る頃飛び立つ姿はとても幻想的で美しいそうです。
私の働きに行く予定の温泉郷は、五つの峰が連なる山の麓にあり、その中でも森に囲まれ、明治、大正に建てられた古い建物の旅館で、過去に著名な文豪も度々訪れた老舗だそうです。新緑の時期が待ちどうしいですね。
この湖と霊峰に囲まれ、澄んだ空気の下で暮らし始めてみると、なにか別世界に移り住む、都会と一線を引く隔世の感があります。
こういう環境での生活で、自分はどうしていったら良いのか、結論なんか出る訳はないのですけれど、きっと、将来のヒントになるものなら見つかる、そう信じています。
あなたの生活の一部に割り込んでしまった申し訳なさは多少ありますが、私の未熟さと我儘な性格という事で勘弁して下さい。
まだまだ伝えたい事は沢山あるのですが、うまく表現出来ず、すいません。
ぜひ、この地で早くお会いできる日を心待ちにしております。

                                   春子

         -第三部-
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