学校の怪談、ヒキコさん、注射男、ジャンピング婆、四次元婆

学校の怪談
山口敏太郎
@昔の記事の蔵出し
今「学校の怪談」が熱い。不思議な事だが、どの世代にも「学校の怪談」は伝承されている。六十-七十代の老人たちには、「赤マント」、五十代には「赤い紙 青い紙」、四十代・三十代には「口裂け女」「人面犬」、二十代には「花子さん」。時代時代を超えて「学校の怪談」は生き続けている。つまり、時代の変遷やブームに左右される事なく、常に「学校の怪談」は伝承され続けている。
何故、ここまで「学校の怪談」がもてはやされるのか、それは学校というものが現代日本に残った数少ない共同体であるからだ。集落という地域性の強い共同体が都会への一極集中で崩壊し、さらに会社という目的を共有する職能的共同体も、終身雇用という幻想の崩壊と共に消失した。今や宗旨や血統・哲学・家業の違う人々が、無理してでも協力して何かを推進する共同体は、学校をおいて存在していない。つまり、学校は”怪談をはぐくむ”可能性のある唯一の共同体である。
考えてみれば、この学校という共同体が、怪談を育成するには理由がある。卒業という形で代替わりが行われ、子供と大人という常民と異人に適合する図式も存在し、話の伝承を行ううえでの条件が全て揃っている。つまり、学校という囲いに囲まれた空間しか、現在の日本では怪談を伝承・保存できないのだ。怪談さえ生まれない社会、怪談を超える現実での絶望感が人々の心を疲弊させている。あまりにも不幸な時代ではないか。
「花子さん」
アニメ化までされたおかっぱヘアーの90年代の人気女の子妖怪である。昭和以降では口裂け女以来、ブームを巻き起こすメジャー妖怪となった。20世紀末に起きた学校の怪談ブームの立役者と言えよう。学校のトイレに住むという。必ず入り口から何番目かのトイレにいると噂されており、規定の回数をノックをして「花~子~さ~ん」と呼ぶと、「は~い」と答えるという話が定番である。妹は「ブキミちゃん」という文字どおりブキミな姿をしている妖怪で、「花子の母」「花子の父」がいる学校もある。また、ボーイフレンドの「太郎くん」、太郎くんの弟「次郎くん」がいる場合もあり、年に一回は群馬で「花子一族の会議」も開催されるらしい。
「三本足のリカちゃん」
「三本足の○ービー」という名前で呼ばれる場合もある。人形を作っているメーカーでは、何万体に一体、工程ミスで3本足の人形が生産されてしまう。それを業界では「三本足のバービー」と呼ぶ。無論、廃棄となるのだが、廃棄されることを恐れた人形が自ら逃げ出す事があるという。この3本足の人形は、人間たちのミスで創られ、身勝手に捨てられかかったことを怨んでおり、人間社会への復讐を狙っている。また、トイレに捨てられた人形のふりをして拾ってもらえる機会を伺っており、うっかりかわいさに負けて持ち帰ると一家皆殺しにされてしまう。なお便所では「3本足の老婆」という妖怪も報告されているが関連は不明である。
「四次元婆」
「四次元婆」とは、学校のトイレに出没し、子供を異次元に拉致する妖怪だという。また「四時婆」という別名で呼ばれる場合もある。妖怪がいるにも関わらず、迂闊にトイレに入る不注意な子供をつかまえては、四次元に送り込んでしまう恐ろしい妖怪である。
この「四次元婆」という名前は、四次元と四時が被っている洒落であろうか。出没時間は四時ジャストに出ることが多く、この時間には、どんなにトイレがしたくともトイレに入いらないほうがいい。この婆はある意味、子供をさらって異界に隠してしまう。隠れ座頭系の妖怪であるかもしれない。似た妖怪に「三時婆」「黄色婆」「二時婆」などが噂されている。
「ロクロウ」
SELさんは現在和歌山県に住む女流妖怪絵師である。彼女は沢山の不思議な体験をしている。このロクロウの話もそのひとつである。彼女が小学生の頃、学校に「ロクロウ」という怪人が来ると噂が立った。この謎の怪人は、パンタロンにチューリップ帽という70年代のファッションに身を包み現れる。「できるかな」で人気のあったノッポさんを若くしたような風貌で、夕方ふらりと、無断で校内に入ってくる。「ロクロウ」は、タイヤを半分土中に埋めて作った馬飛びの遊具の上に腰を降ろし、ラジカセを片手に、学校帰りの子供を待ち続ける。そして、子供を捕まえると、どんなにいやがっても、無理矢理に手に持ったラジカセの音を聴かせるのだ。
「テケテケ」
上半身だけ、あるいは下半身だけのお化けであり、子供たちをおいかけるという。校舎やマンションの高い階のべランダで、腕を組んでじっと見ている子供がいたら、安易に呼びかけてはいけない。手など振ろうものなら、みるみるうちに6階、5階、4階と下りてきて、半身だけの体で目撃者をおいかける。この追いかけるときに「テケテケ」という音がするのでこの名前がついたらしい。なお、「テケテケ」を呼び出す方法もあるらしい。放課後4時に図書室に入り、椅子を16個用意し、4つづつ四列に並べ、四人で仰向けに寝る。すると時計の針が逆に廻り始め、廊下をテケテケが走り始める。別名は「たくたく」など地方によって様々ある。
「青坊主」
「青坊主」は本来、野外に出る妖怪であった。人を浚うと言われていたが、近代においては学校に出没するようになっている。山形の山手にある小学校に出た「青坊主」という妖怪は、便器から顔をぬーっと出してじっと睨むと言われている。他にもトイレには多くの現代妖怪がいる。「ムラサキおばさん」とは、トイレの鏡を見ていると、出てきて質問する妖怪で「何色が好き?」と聞いてくる。この問いに「紫」と答えないと鏡の中に引き込まれてしまう。場合によっては殺されるらしい。この時、紫の品物を持っていれば助かる。「くそかけ婆」はトイレに入った子供に、頭からくそを振り掛けるやっかいな妖怪である。どちらにしろ学校のトイレは要注意だ。
「ジャンピング婆」
「ジャンピング婆」とは、なかなかファンキーな妖怪である。夜の体育館で着物姿にバスケットシューズといういでたちでバスケをしている小柄な老婆の妖怪である。この婆が凄いジャンプをして決めるシュートは百発百中である。他にも同名の「ジャンピング婆」という妖怪がいる。この名古屋周辺の「ジャンピング婆」は、道路沿いの家々の屋根をジャンプしながら道路を走る車と併走するという。高速で移動する老人妖怪は他にもいる。「超音速爺」は音だけを残し校庭に現れる。また、光なみの速さで動く「光速婆」は姿さえ見えない。姿が見えない妖怪のどこが怖いのか不思議だが、爺が音速にも関わらず、婆は光速とは…。妖怪の世界も女性上位のようだ。
「歴代校長のミイラ」
学校の怪談の中でも校長程、妖怪扱いされる存在はない。初代校長の絵や銅像が真夜中に徘徊したり、校長が「ろくろ首」になったりする話が噂されている。中には校長の正体は「ぬらりひょん」であるという説もある。また、よく校長室に飾ってある「歴代校長の写真」の怪談も多く語られている。深夜の校長室では歴代校長の写真から霊たちが飛び出して、学校の方針をめぐって会議しているとか、或いは、体育館の倉庫には歴代校長のミイラが保管されているという情報もある。初代校長の像が二宮金次郎の像とおしゃべりしたり、応接室で疲れたと言いながら足をもんでいる怪談もある。子供の王国・学校において、大人という存在は異端であり、皆妖怪視されてしまうようだ。
口裂け女
今まで、口裂け女のブームは三回あったとされている。一回目は昭和50年代初頭だ。女優・山本陽子そっくりの美女、後には歌手の渡辺真知子、研ナオコに似ているという説もあった。口裂け女に呼びかけられ、振り向くと切りつけられるので、右肩を叩かれたら左から振り向き、左肩を叩かれたら右から振り向くとよい。口裂け女は三姉妹であり、うち一人が生まれつき口が裂けていた。残る二人は同情し、一人は刃物で口を裂き、一人は口紅で大きく口を見せたという話もある。三の数字がすきで、三軒茶屋や三鷹に現れ、べっこう飴や百円玉も好きだとされた。その後、バブル期に真っ赤なボデイコンに、人面犬をペットにしている口裂け女が流行、ネット時代に韓国でも噂が広がった。
引きづり女
別名「ヒキコさん」とも呼ばれる。いじめで殺された少女の亡霊が化けた妖怪。ある小学校にRさんという女の子がいた。見た目は地味で、大変おとなしい子だったが、日々の勉強を真面目にやり、先生の指導にも従順であった。その為、Rさんはいつしかクラスで孤立していった。ある雨の日の事、学校の帰り道で悲劇が起こった。いじめを受けたRさんは泣きながら道路に飛び出したところに、トラックが突っ込んできた。彼女の足はトラックに巻き込まれ、数十メートル引きづられて死亡してしまった。以来、雨の日、学校の帰り道に少女の幽霊が出没し、「引きずってやろうか」と呼びかけるようになった。この時、返事した者は一週間以内に車に巻き込まれ死亡するという。
メリーさん
白い顔、白い衣装で徘徊する謎の怪女。かつてこの妖怪には実際にモデルがいたが、それが都市伝説化し、横浜から全国に広がった。今や全国各地でメリーさんが目撃されている。これはかつて生存した実際の人物が噂話で誇張されて妖怪化する典型的な例の一種である。
実在のモデルの人物がいなくなっても都市伝説は生き続けるのだ。ある意味、気味の悪い話である。かつて「メリーさん人形」という計画があったらしい。若い女の子、狼、老婆がセットで皆赤い服を着ている。しかも、オチはメリーさんはおばあさんに狼がとりついたというもの。これをラジオに投稿したり、雑誌に投書して流行らせようとしたが、メリーという商標が他社によって抑えられていたため、計画が頓挫してしまった。これが都市伝説のルーツだというが定かではない。
冷蔵庫の住人
「冷蔵庫の住人」は、静岡で噂された怪人である。空き地に捨てられた冷蔵庫の中から異界に出入りする。ある小学校の近くには、冷蔵庫が破棄してあった。現在のお洒落な冷蔵庫ではなく、鍵のついた古いタイプのものであったらしい。当時、子供たちの中では、その冷蔵庫に纏わる噂が広がっていた。”冷蔵庫の中に棲む人がいる”という都市伝説であった。様々なバージョンがあり、リックサックを背負った人が、冷蔵庫の中に入っていったとか。日頃冷蔵庫の中で棲んでいる人が出かける時は、中から出てきて冷蔵庫の鍵を閉めて外出するとか。ある小学生たちが、その冷蔵庫の扉を開けて確認したが、ごく普通の内装であった。
注射男
この妖怪は、全身包帯だらけの怪しい姿をしている。電柱の陰に隠れており、帰宅途中の小学生を呼び止める。そしてその腕に毒薬を注射するという。この妖怪はいかにして生まれたのであろうか。ひょっとすると、少年時代の予防接種に対する過度の恐怖心が生んだ魔物ではないだろうか。それとも、一連の毒物犯罪による影響であろうか。現代では妖怪も毒物を使用するようになったのである。また、一部の人には先端恐怖症というとがった物に対する恐怖心がある。これが妖怪化した可能性も高いようだ。或いは近年問題になっている医療不信がその背景にあるのかもしれない。因みに都市伝説では座敷牢に軟禁された男が死んで、この妖怪になったとも言われている。
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山口敏太郎
@昔の記事の蔵出し
今「学校の怪談」が熱い。不思議な事だが、どの世代にも「学校の怪談」は伝承されている。六十-七十代の老人たちには、「赤マント」、五十代には「赤い紙 青い紙」、四十代・三十代には「口裂け女」「人面犬」、二十代には「花子さん」。時代時代を超えて「学校の怪談」は生き続けている。つまり、時代の変遷やブームに左右される事なく、常に「学校の怪談」は伝承され続けている。
何故、ここまで「学校の怪談」がもてはやされるのか、それは学校というものが現代日本に残った数少ない共同体であるからだ。集落という地域性の強い共同体が都会への一極集中で崩壊し、さらに会社という目的を共有する職能的共同体も、終身雇用という幻想の崩壊と共に消失した。今や宗旨や血統・哲学・家業の違う人々が、無理してでも協力して何かを推進する共同体は、学校をおいて存在していない。つまり、学校は”怪談をはぐくむ”可能性のある唯一の共同体である。
考えてみれば、この学校という共同体が、怪談を育成するには理由がある。卒業という形で代替わりが行われ、子供と大人という常民と異人に適合する図式も存在し、話の伝承を行ううえでの条件が全て揃っている。つまり、学校という囲いに囲まれた空間しか、現在の日本では怪談を伝承・保存できないのだ。怪談さえ生まれない社会、怪談を超える現実での絶望感が人々の心を疲弊させている。あまりにも不幸な時代ではないか。
「花子さん」
アニメ化までされたおかっぱヘアーの90年代の人気女の子妖怪である。昭和以降では口裂け女以来、ブームを巻き起こすメジャー妖怪となった。20世紀末に起きた学校の怪談ブームの立役者と言えよう。学校のトイレに住むという。必ず入り口から何番目かのトイレにいると噂されており、規定の回数をノックをして「花~子~さ~ん」と呼ぶと、「は~い」と答えるという話が定番である。妹は「ブキミちゃん」という文字どおりブキミな姿をしている妖怪で、「花子の母」「花子の父」がいる学校もある。また、ボーイフレンドの「太郎くん」、太郎くんの弟「次郎くん」がいる場合もあり、年に一回は群馬で「花子一族の会議」も開催されるらしい。
「三本足のリカちゃん」
「三本足の○ービー」という名前で呼ばれる場合もある。人形を作っているメーカーでは、何万体に一体、工程ミスで3本足の人形が生産されてしまう。それを業界では「三本足のバービー」と呼ぶ。無論、廃棄となるのだが、廃棄されることを恐れた人形が自ら逃げ出す事があるという。この3本足の人形は、人間たちのミスで創られ、身勝手に捨てられかかったことを怨んでおり、人間社会への復讐を狙っている。また、トイレに捨てられた人形のふりをして拾ってもらえる機会を伺っており、うっかりかわいさに負けて持ち帰ると一家皆殺しにされてしまう。なお便所では「3本足の老婆」という妖怪も報告されているが関連は不明である。
「四次元婆」
「四次元婆」とは、学校のトイレに出没し、子供を異次元に拉致する妖怪だという。また「四時婆」という別名で呼ばれる場合もある。妖怪がいるにも関わらず、迂闊にトイレに入る不注意な子供をつかまえては、四次元に送り込んでしまう恐ろしい妖怪である。
この「四次元婆」という名前は、四次元と四時が被っている洒落であろうか。出没時間は四時ジャストに出ることが多く、この時間には、どんなにトイレがしたくともトイレに入いらないほうがいい。この婆はある意味、子供をさらって異界に隠してしまう。隠れ座頭系の妖怪であるかもしれない。似た妖怪に「三時婆」「黄色婆」「二時婆」などが噂されている。
「ロクロウ」
SELさんは現在和歌山県に住む女流妖怪絵師である。彼女は沢山の不思議な体験をしている。このロクロウの話もそのひとつである。彼女が小学生の頃、学校に「ロクロウ」という怪人が来ると噂が立った。この謎の怪人は、パンタロンにチューリップ帽という70年代のファッションに身を包み現れる。「できるかな」で人気のあったノッポさんを若くしたような風貌で、夕方ふらりと、無断で校内に入ってくる。「ロクロウ」は、タイヤを半分土中に埋めて作った馬飛びの遊具の上に腰を降ろし、ラジカセを片手に、学校帰りの子供を待ち続ける。そして、子供を捕まえると、どんなにいやがっても、無理矢理に手に持ったラジカセの音を聴かせるのだ。
「テケテケ」
上半身だけ、あるいは下半身だけのお化けであり、子供たちをおいかけるという。校舎やマンションの高い階のべランダで、腕を組んでじっと見ている子供がいたら、安易に呼びかけてはいけない。手など振ろうものなら、みるみるうちに6階、5階、4階と下りてきて、半身だけの体で目撃者をおいかける。この追いかけるときに「テケテケ」という音がするのでこの名前がついたらしい。なお、「テケテケ」を呼び出す方法もあるらしい。放課後4時に図書室に入り、椅子を16個用意し、4つづつ四列に並べ、四人で仰向けに寝る。すると時計の針が逆に廻り始め、廊下をテケテケが走り始める。別名は「たくたく」など地方によって様々ある。
「青坊主」
「青坊主」は本来、野外に出る妖怪であった。人を浚うと言われていたが、近代においては学校に出没するようになっている。山形の山手にある小学校に出た「青坊主」という妖怪は、便器から顔をぬーっと出してじっと睨むと言われている。他にもトイレには多くの現代妖怪がいる。「ムラサキおばさん」とは、トイレの鏡を見ていると、出てきて質問する妖怪で「何色が好き?」と聞いてくる。この問いに「紫」と答えないと鏡の中に引き込まれてしまう。場合によっては殺されるらしい。この時、紫の品物を持っていれば助かる。「くそかけ婆」はトイレに入った子供に、頭からくそを振り掛けるやっかいな妖怪である。どちらにしろ学校のトイレは要注意だ。
「ジャンピング婆」
「ジャンピング婆」とは、なかなかファンキーな妖怪である。夜の体育館で着物姿にバスケットシューズといういでたちでバスケをしている小柄な老婆の妖怪である。この婆が凄いジャンプをして決めるシュートは百発百中である。他にも同名の「ジャンピング婆」という妖怪がいる。この名古屋周辺の「ジャンピング婆」は、道路沿いの家々の屋根をジャンプしながら道路を走る車と併走するという。高速で移動する老人妖怪は他にもいる。「超音速爺」は音だけを残し校庭に現れる。また、光なみの速さで動く「光速婆」は姿さえ見えない。姿が見えない妖怪のどこが怖いのか不思議だが、爺が音速にも関わらず、婆は光速とは…。妖怪の世界も女性上位のようだ。
「歴代校長のミイラ」
学校の怪談の中でも校長程、妖怪扱いされる存在はない。初代校長の絵や銅像が真夜中に徘徊したり、校長が「ろくろ首」になったりする話が噂されている。中には校長の正体は「ぬらりひょん」であるという説もある。また、よく校長室に飾ってある「歴代校長の写真」の怪談も多く語られている。深夜の校長室では歴代校長の写真から霊たちが飛び出して、学校の方針をめぐって会議しているとか、或いは、体育館の倉庫には歴代校長のミイラが保管されているという情報もある。初代校長の像が二宮金次郎の像とおしゃべりしたり、応接室で疲れたと言いながら足をもんでいる怪談もある。子供の王国・学校において、大人という存在は異端であり、皆妖怪視されてしまうようだ。
口裂け女
今まで、口裂け女のブームは三回あったとされている。一回目は昭和50年代初頭だ。女優・山本陽子そっくりの美女、後には歌手の渡辺真知子、研ナオコに似ているという説もあった。口裂け女に呼びかけられ、振り向くと切りつけられるので、右肩を叩かれたら左から振り向き、左肩を叩かれたら右から振り向くとよい。口裂け女は三姉妹であり、うち一人が生まれつき口が裂けていた。残る二人は同情し、一人は刃物で口を裂き、一人は口紅で大きく口を見せたという話もある。三の数字がすきで、三軒茶屋や三鷹に現れ、べっこう飴や百円玉も好きだとされた。その後、バブル期に真っ赤なボデイコンに、人面犬をペットにしている口裂け女が流行、ネット時代に韓国でも噂が広がった。
引きづり女
別名「ヒキコさん」とも呼ばれる。いじめで殺された少女の亡霊が化けた妖怪。ある小学校にRさんという女の子がいた。見た目は地味で、大変おとなしい子だったが、日々の勉強を真面目にやり、先生の指導にも従順であった。その為、Rさんはいつしかクラスで孤立していった。ある雨の日の事、学校の帰り道で悲劇が起こった。いじめを受けたRさんは泣きながら道路に飛び出したところに、トラックが突っ込んできた。彼女の足はトラックに巻き込まれ、数十メートル引きづられて死亡してしまった。以来、雨の日、学校の帰り道に少女の幽霊が出没し、「引きずってやろうか」と呼びかけるようになった。この時、返事した者は一週間以内に車に巻き込まれ死亡するという。
メリーさん
白い顔、白い衣装で徘徊する謎の怪女。かつてこの妖怪には実際にモデルがいたが、それが都市伝説化し、横浜から全国に広がった。今や全国各地でメリーさんが目撃されている。これはかつて生存した実際の人物が噂話で誇張されて妖怪化する典型的な例の一種である。
実在のモデルの人物がいなくなっても都市伝説は生き続けるのだ。ある意味、気味の悪い話である。かつて「メリーさん人形」という計画があったらしい。若い女の子、狼、老婆がセットで皆赤い服を着ている。しかも、オチはメリーさんはおばあさんに狼がとりついたというもの。これをラジオに投稿したり、雑誌に投書して流行らせようとしたが、メリーという商標が他社によって抑えられていたため、計画が頓挫してしまった。これが都市伝説のルーツだというが定かではない。
冷蔵庫の住人
「冷蔵庫の住人」は、静岡で噂された怪人である。空き地に捨てられた冷蔵庫の中から異界に出入りする。ある小学校の近くには、冷蔵庫が破棄してあった。現在のお洒落な冷蔵庫ではなく、鍵のついた古いタイプのものであったらしい。当時、子供たちの中では、その冷蔵庫に纏わる噂が広がっていた。”冷蔵庫の中に棲む人がいる”という都市伝説であった。様々なバージョンがあり、リックサックを背負った人が、冷蔵庫の中に入っていったとか。日頃冷蔵庫の中で棲んでいる人が出かける時は、中から出てきて冷蔵庫の鍵を閉めて外出するとか。ある小学生たちが、その冷蔵庫の扉を開けて確認したが、ごく普通の内装であった。
注射男
この妖怪は、全身包帯だらけの怪しい姿をしている。電柱の陰に隠れており、帰宅途中の小学生を呼び止める。そしてその腕に毒薬を注射するという。この妖怪はいかにして生まれたのであろうか。ひょっとすると、少年時代の予防接種に対する過度の恐怖心が生んだ魔物ではないだろうか。それとも、一連の毒物犯罪による影響であろうか。現代では妖怪も毒物を使用するようになったのである。また、一部の人には先端恐怖症というとがった物に対する恐怖心がある。これが妖怪化した可能性も高いようだ。或いは近年問題になっている医療不信がその背景にあるのかもしれない。因みに都市伝説では座敷牢に軟禁された男が死んで、この妖怪になったとも言われている。
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