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ブログ小説 過去の鳥

淡々と進む時間は、真っ青な心を飲み込む

哲学するホウレンソウ

2007-02-18 18:17:13 | 食物の咆哮 野菜編
 ホウレンソウはオシタシがいい
 しゃきっと茹でる

 熱湯に食塩ひとつまみ
 レモンの輪切りか、レモン汁をいれ
 さっと茹でる

 茹ですぎないのがポイント
 絶対に茹ですぎてはならない
 茹ですぎはホウレンソウへの冒涜

 しゃきっと茹でたホウレンソウ
 これは美味しい
 野菜の持つ甘みがいい

 ホウレンソウは、我が家の食卓に恋する
 サラダの仲間となる野菜と
 一線を画した自信家
 それがホウレンソウ

 この深い緑
 軽薄なキャベツの緑に比べ
 なんと哲学的な色彩
 ホウレンソウは古伊万里の鉢で
 醤油をかすかに浴び
 淡い香りを放つ

 ホウレンソウは珍しくアカザ科の野菜
 アブラナ科やセリ科、ウリ科、ナス科などがはびこる野菜にあって
 孤高の濃緑が心うつ

 むろん、ソテーもいい
 スープも可
 中華料理にも味わいを引き出す

 が、やはりオシタシがいちばん
 食卓でそっと出されるオシタシ
 カツオブシが乗ったりシラスが乗ったり
 装いは自由

 田園の緑も、青い空、白い雲と溶け合う

苦悶するブロッコリー

2007-02-05 21:35:48 | 食物の咆哮 野菜編
 茹でて食べる
 それがブロッコリーに対する礼儀

 が、他の国では、ただ茹でるだけではない
 中華料理では炒める
 西洋の料理では煮込む
 シチューに入っていたり
 それもあり

 で、茹でたものを食すとき
 和風であればオシタシと呼ぶ
 ブロッコリーではそうは言わない
 サラダ

 そう、茹でてもサラダ

 なんと、ドレッシングで食したり
 マヨラーはマヨネーズで
 
 サラダで茹でる、となると、アスパラガスに似ている
 が、ブロッコリーは、あくまでもブロッコリー

 本当はどのように食べられるべきか
 ブロッコリーは苦悶する

 本当に美味しいのは
 ただの塩茹で
 そう、熱湯に塩を少々いれ
 新鮮なブロッコリーを少し固めに茹でる
 
 茹で上がると、さっと冷水で引き締める

 ドレッシングもマヨネーズもつけず
 そのまま食す
 その美味しいこと
 ブロッコリーの持つブロッコリー臭さ
 それは野菜としてのアイデンティティーの主張

 ただし採れたてでなければならない
 
 野菜は採れたてに限る
 しかし、ブロッコリーは苦悶する
 多くはすぐに食べてもらえない
 流通が行く手を阻む
 スーパーマーケットの棚に並ぶ古いブロッコリー
 なんという哀切な姿

 買ったところで、やはり、こいつにはマヨネーズが不可欠
 悲しいことだが
 ああ、今日も売れ残りのブロッコリーは
 棚の隅で涙を流している

ネギは揺れる心

2007-02-02 07:00:57 | 食物の咆哮 野菜編
 野菜はそれぞれ、不可解な形状をしている
 ネギもかなり不可解
 食するのは、葉
 で、茎は?
 茎はどこなのだ?

 葱坊主をつける土台が茎なのか
 形状からはわかりにくい

 冬、畑ではネギが茂っている
 まさに繁茂
 が、ネギの葉を食す害虫はあまり聞いた事がない
 ネギの持つ刺激物質が、虫を近づけないのか
 食べられるのを待って、畑で立ち続けている
 なんと言う行儀のよさ
 直立するネギは礼儀正しい野菜
 
 ユリ科のネギ属
 ユリ科である
 あのユリとは似てもいないが、植物とはそんなものだ
 仲間には、ニンニク、ニラ、アサツキ、タマネギ、チャイブなど
 まさに、日本的ハーブ
 
 我が家では常に欠かさない
 そば、うどん、味噌汁などに必ず使う
 薬味として、存在感の確かな野菜
 味、匂い、歯応えで
 少量であっても下の上で確固とした存在感を主張する

 鍋にもネギは欠かせない
 ハクサイや春菊とのコラボレーションはなんともいえない
 ネギにからまるシラタキ
 セクシーで口にするのも惜しい気がする

 が、ネギだけで食すことはさほどない
 ネギヌタ、ネギのグラタン
 なくはない
 が、メインの料理として、食卓に君臨することはない
 あくまでも脇役

 ネギは漬物にもサラダにも使用しない
 ネギはネギとして使用する
 それこそ自己主張する野菜

 類語
 ネギ(禰宜)は神社の宮司の下の職
 むろん、葱とは関係がない

 ああ、おいらはネギが好きだ
 ネギに恋している、というほどではないが
 やはり少量であっても不可欠

 そば、うどん、ラーメンなどに使用するため
 刻んでタッパーにいれ冷凍保存も
 これは重宝
 が、やはりネギは新鮮なものを刻んだ方が風味はいい

 ネギは冬の畑に立ち尽くす

あるある大事典・愛と哀しみのレタス

2007-01-30 12:11:37 | 食物の咆哮 野菜編
 レタスはサラダ限定の野菜
 ほとんどの場合、生食

 漬物にもならず、オシタシにもならない
 煮物、炒め物にも、あまり向いてはいない
 味噌汁に使うのも躊躇する

 一度我が家で味噌汁に
 妻はものはためしとばかり、具として放り込んだ
 味噌汁の中で透明になったレタスの繊維
 口にしてみる
 味噌味とレタスのなんという不協和音
 あのまずさは哀切を超え、悲惨に
 レタスは味噌汁には合わない

 しかし、沖縄では味噌汁にすることがあると言う
 ああ、なんという食文化の違い

 フランスではソテーにすることがあるという
 そんなものが美味しいのか

 中華料理では炒めて使うことがあるという
 これは中華街で食ったことがあるが
 再び食べたいとは思わなかった

 おいらには考えにくい用途
 まあ好き好き
 どんな食べ方をしようと、胃の中に入ってしまえばおしまい

 が、我が家はサラダしか考えられない
 サラダでは食品として輝く
 あの半端な歯ごたえがたまらない
 ドレッシングが付着すれば
 歯ごたえが引き立つ
 奥歯の浮き立つ歯ごたえ

 そのレタスが涙を流していた
 あるある大事典の過去の捏造
 安眠効果があるというテーマを設け
 それに向かってでっち上げていった番組

 さきに結論ありき
 それに向かって都合の良い内容をでっち上げていく 
 ガサネタ捏造番組
 そのターゲットになったレタスは哀れ

 いかにも嘘っぽい嘘を本当らしくするため
 大学の先生に登場いただき
 あることないことあるあるにしていく手口の暗黒
 レタスは哀しい

 実験でネズミを眠らせなかったばかりに

 ああ、なんという過去の屈辱
 暴露されて、何か犯罪人のように打ちひしがれしおれていく
  
 レタスの素性を話そう
 彼らはキク科の植物
 しかし春菊のように美しい花をつけることはない
 花はひそやか咲く
 アレチノノゲシ属
 地味な小さな花
 そのレタスが涙を流している
 ひそやかな涙を 

ハクサイの孤独

2007-01-29 17:25:44 | 食物の咆哮 野菜編
 夕食時間が近づき
 稿を改めさせてもらった

 で、心機一転、ハクサイを食卓へ

 ハクサイは冬野菜の王者
 誰もがそう認める
 この畑でのひそやかな、それでいてつましい行列を見れば

 大地に身構える重量感
 ぶっきらぼうに存在するだけで
 田園が引き締まる

 大気が冷え、霜にあたり、甘さを増す
 逆境が、ハクサイをたくましく変化させる

 漬物に最適
 キムチも美味しい

 が、冬寒の畑では孤独だ
 縄に縛られ、葉を巻き、ひたすら耐える
 収穫まで
 寒さを体内に取り込み、じっと耐え続ける

 日本では、もっとも多く生産されている野菜のひとつ
 ダイコン、キャベツなどと同じアブラナ科
 なのに、モンシロチョウにはあまり好まれない
 育つ季節が冬のせいか
 それとも

 食べ方は、むろん漬物だけではない
 中華料理にもあう
 茹でてオシタシにしても美味しい
 が、西洋料理にはあまりなじまない
 さすが、東アジア原産の野菜だけある
 その点、キャベツの無節操さとは対照的

 中国料理は、基本的に生食がない
 サラダがない
 ハクサイも、サラダは邪道
 
 サラダには容易にならないという自己主張
 それが、ハクサイのアイデンティティー
 
 今日も畑で待っている
 収穫者のご主人様の訪れを、縄で縛られたまま
 ひたすら待ち続けるその姿は、忠犬ハチ公を脈絡もなく連想させる

 おいらは涙がこぼれてくる
 
 無駄にしないでくれ、この野菜の命を
 そう、おいらはつぶやいてしまう