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ブログ小説 過去の鳥

淡々と進む時間は、真っ青な心を飲み込む

浅ましい文化と浅間山噴火

2009-02-02 07:34:05 | 掌編
浅間山噴火、降灰を東京・千代田区でも確認(読売新聞) - goo ニュース

 軽井沢に住む文化人を自称する友人から、浅間山噴火に関しての意味不明のメールが届く。相変わらず脳みそがシャッフルされたままのようだ。が、これが、日本の文化人の現状。
 参考にはならないと思うが、以下にコピペで貼り付けておく。

 浅間が噴火 浅ましい
 噴火で文化 ぶっ飛んだ

 夜空を焦がす 噴煙が
 見たいと外へ 飛びだして
 見えたは冬の オリオン座
 かんぽの宿は オリックス

 ガッツポーズの 朝青龍
 大麻吸引 若麒麟
 無気力八百長 酷技なり
 相撲協会 苦界落ち

 お久しぶりの照り焼き状態の友へ。相撲は朝青龍のガッツポーズでめでたく〆たかと思ったら、若麒麟クンがやってくれました。で、まだ六本木に出入りしていた相撲取りがいるとのことだが、幕引き必至。握りつぶされていく。
 僕の書いた小説も、また編集者の手で握りつぶされた。
 文化人の口を封じるのに刃物はいらない、とは言うが、浅間山が噴火しているというのにこのザマはなんだ、カレーにはナンだ。
 そうだ、君と食べた曙橋のインド人の経営するカレーショップのナンのおいしかったこと。
 だからなんだというのだ。
 編集者は、僕のことを、偏平足だという。偏平足だから、小説を屑籠へ。
 僕の小説を、屑籠が読むとでも思っているのか、バカ野郎。だから日本の文化は、あさましい、浅間山噴火降灰の荒廃。当然後輩が育たない。
 というわけで、今度また、カレーを食いに行こう。ダルビッシュがお勧めのダルカレー。あれはうまかった。
 
                君の友の噴火人より

 この友人に言われるまでもなく、私は日本の文化の荒廃には危惧している。友人同様に、私も食うのはかつかつ。先日も知人の文化人が首を吊った。表現の行き詰まりではなく、単純に生活苦によって。これが火山列島日本の文化。
 
 

白菜の歯は臭い

2009-02-01 14:09:28 | 掌編
 武田さんから聞いた話では、白菜の歯はかなり臭いそうだ。どうも歯槽膿漏らしい。ロッテのキシリトールガムはまったく効かなかったらしく、昨日も手を洗いながらうがいをしていた。新型インフルエンザが怖いというのだ。外出の時はマスクゴーグルの完全武装。でも、かかるときはかかる。
 そういうものだ。どういうもの、と聞かれても困るが、そういうもの。道路を歩いていて、上から人が落ちてくることだってあるってこと。隕石が頭を直撃することも。人生とはそんなもの。あっけない。だから、毎日しっかり林檎を食べ、白菜キムチは韓国産が不可欠ということ。分かっていてもやめられないのが、依存症の連中のパチンコ。
 昨日もパチンコ店の前で、大島君があくびをしていた。ポケットには一万円札が2枚。紙は軽く、少しの風で飛んでいく。
 店の前をトラックがゆく。運転手はマイクを握り、ただ演説を続ける。

「白菜の歯は臭い。しかしそれが白菜の人生なのだ。今日は湯豆腐にしよう。豆腐は腰のある天然にがりの岩田屋の豆腐。イトーヨーカドーでもジャスコでもなく、ましてダイエーでもなく、岩田屋。君たちは知っているか、高円寺熱血商店街の岩田屋を。あの腰の強い真っ白な豆腐を」

 公園だって風が吹いている。冷たい風。
 冬型。
 インフルエンザはA香港型。
 横綱の土俵入りは雲竜型。
 山形ではフグを食って中毒に。それでもおいしいものはおいしい。命をかけても食う。なのに餓死が流行の気配。インフルエンザをしのぐ可能性も。

「知っているか? 日本が北朝鮮化していることを。やばいよ。やばい。かなりやばい」

 だから僕は食い、メタボの腹を妻に笑われて、はげ頭を笑われ、歯が臭いと馬鹿にされているのだ。
 人生とはそんなもの。
 そして、みんなと同じように幕を閉じる。
 劇的に、ではなくなんとなく。
 
 

貧困のともしび

2009-01-11 18:45:55 | 掌編
ろうそく燃え移り民家全焼 電気止められ、と71歳女性(共同通信) - goo ニュース

 お金がない。全くない。ずっと真面目に働き続けてきたのに、貯金はたまらず、通帳のお金は300円ほどだけ。
 ガスが止められ、電気が止められ、電話が止められ、食料品を買うお金もなく、ひもじさに震える日々。
 寒い。体も心も。
 71歳。
 たった一人の部屋で、食べるものもなく、ろうそくの明かりに手をかざして暖をとる。
 夫は10年前に死別。
 子どもは二人。
 一人は45歳。東京にいるが現在無職。会社が倒産し、収入もなく、何をしているやら。嫁と孫は離婚してどこかへ。
 もう一人は、大阪にいるというが連絡はない。
 子どもには恵まれなかったというべきか。
 
 夫の死後、働き続けた。ビルの清掃や皿洗い。毎日一生懸命働いた。
 でも、病気になり、お金はすべて消えた。
 真面目に働いても、お金はたまらない。
 それが、日本という国。
 お金を回す仕事をしている人たちだけは、どっさり懐へ。
 その一方で。

 お金がない。
 払いたくても払えない電気代。
 せめて、この寒い冬を、暖かい電気炬燵で眠りたいのに。
 払えないために止まった電気。

 仕方なくろうそくの弱い火で暖をとり、
 ひもじさに震えながら眠るだけ。
 これが私の、生涯働き続けてきたことへのご褒美。

 そして
 唯一の財産であった家までも、失ってしまった。

限界集落の片隅で

2008-08-19 08:15:36 | 掌編
 その島には、いくつかの限界集落があった。
 僕が見た集落。
 過去には人口500人を超えていたが、現在は60人足らず。子どもは4人で、30歳から60歳までが8人、残りは全部60歳以上。この一年に5人が死に、今年も何人かが死ぬのでは。人口は減る一方で増えない。
 住宅の三分の二が空き家という状況。

 無人の家は、ある日突然崩れてゆく。
 朽ちた柱は、屋根の重さに耐えきれず。
 そんな民家の痕跡をいくつか目にした。

「終わりだね、この島は。でも、墓を守らなきゃ」
 と、50歳の青年はいう。
 50歳が若者の島。

 イソヒヨドリが心地よくさえずる。
 海の上を、湿った風が渡る。
 
 老婆が海を見ていた。入り江に面した住宅の前の石の上に腰を下ろし。

「暑いですねえ」
「ああ、暑いねえ。どこから来なさった?」
「東京から」
「東京ですか。うちの孫が、横浜におりますけん」
「じゃあ、近くですね。お盆には戻って来られるのですか?」
「戻ってこん」
「そうですか?」
「さびしいのう。去年の今頃は、ここで三人で、海をみとった。じゃけん、二人は死んで、今年はわたしだけ。来年は、もう海を見られんかもしれんな、わたしも」
「そんな、まだお元気そうではないですか」
「わたしは、もう85。いつ逝ってもおかしうない年じゃわな」

 85年、島で暮らしてきた老婆は、島の土に帰っていくことになる。
 あと何年かして。
 あるいは、何週間後かも。
 
 島から東京に戻った我が家のそばの公園。
 今、盆踊りのやぐらが組まれている。
 この土曜日には、盆踊り大会が予定されている。

 東京周辺でも、最近はクマゼミの声が聞こえる。
 それに、ツクツクボウシも鳴き始めた。

島に来て

2008-08-06 06:19:51 | 掌編
 私は日本海に浮かぶ島にいる。
 島で会った男が言った。
 こんな島には、夢も希望もない。だから、人はどんどん減っている。

 確かに人は減り、子どもはいなくなっている。
 農地は荒れ、限界集落もそこかしこ。
 物価は高く、希望もない。

 カラスも都市のカラスに比べ悲しげに鳴く。
 また男が言う。
 ここは日本ではない。
 忘れられた島。
 もう、生きていけない。

 そう言いながらも生き続ける悲しさ。
 その声を今、僕は聞こうとしている。
 さらに。
 

タバコの価格に関して

2008-06-06 08:12:41 | 掌編
合言葉は「たばこ1箱1000円」…超党派で議連発足(読売新聞) - goo ニュース

 タバコの価格はいくらが適切か?
 タバコを吸わないぼくには関係ないが、愛煙家の川村さんには、値上げが堪えるようだ。
「たばこ1箱1000円? 冗談じゃないよ。貧乏人にクビを吊れっていうのか」
 そんなことをぼくに言われても困る。
「タバコをやめればいいじゃないですか?」
「タバコをやめる? 冗談じゃない。タバコをやめるってことは、俺にとって、首を吊るようなもんだぜ」
「首を吊るのが好きなんですか?」
「好きなもんか。どこの世界に、首吊りを好きなやつが」
「でも、自殺ははやっていますからね。年間3万人以上。世界でも有数の自殺大国ですからね」
「俺に自殺をさせたいのか?」
「いや、自殺はよろしくない、と思いますよ。でも、自分の命は自分で何とかするのは、まあ、権利のようなもので」
「タバコのことで自殺なんて」
「タバコ代の値上がりで、首を吊るというから」
「首なんて吊らん」
「じゃあ、なぜ首を吊るなんて」
「言葉のあやだよ」
「言葉のあや? あやで命をもてあそぶのですか」
「もてあそんでなんかいない」
「いや、もてあそんでいます。命というのは崇高というか荘厳というか、神聖なものなんですよ」
「シンセイなんてタバコは吸わない。マイルドセブンだよ。俺が吸うのは」
「マイルドセブンかウルトラセブンか知らないけど、タバコは近所迷惑です」
「うちの金魚は迷惑していない」
「金魚の話ではなく、近所の話」
「近所に金魚がいちゃまずいのか」
「金魚なんてまずいですよ」
「金魚なんか食わない。金魚をどうやって食うのだ。刺身か? 天麩羅か?」
「刺身で金魚なんか食いません。刺身はマグロとかハマチとか」
「マグロは値崩れしてるんだぜ。漁師はもう原油高で、音をあげている」
「値上げで音を上げるなんて」
「ともかく金魚はマグロではない」
「マグロも金魚ではない」
「金魚は金魚のアイデンティティがある」
「だから、ぼくはマグロの照り焼きで」
「照り焼きは、ブリだって言うの」
「ブリだなんて、このぶりっ子が」

 ぼくの脳みそは、また溶解しかかっている。

愛の欠落

2008-05-30 04:21:02 | 掌編
「そこに女がいたから」 不明事件で容疑の男供述(共同通信) - goo ニュース

 友人の石川史雄さんから電話があった。ハシブトガラスが大学のケヤキの木で繁殖していて、研究室の部屋の窓からよく見えるから来ないかという。
「ハシブトは、大学では迷惑かけてないの?」
 カラスは、繁殖中は気が荒くなっていて、巣に近づく人間を襲ったりすることでも知られる。とくにハシブトは、ハシボソよりも獰猛な顔つきで、にらまれたりするとおっかない。
「いまんとこないけど、そのうち学生を襲ったりするかもしれないね」
「それはやばいんじゃないの。なんか対策をしなきゃ」
「一応、木の周りに、カラスの子育て中、近づかないでって看板は立ててるけど」
「まあ、カラスに襲われて、大学の管理責任が問われたりしないといいけど」
「いいんだよ。カラスに襲われて命を落とすようなことはないから」
「そうだね、怖いのは人間。人間の場合、襲って殺したり」
「ああ、江東区であったね。若い女性が襲われ、死体を切り刻んでトイレに流したとか」
「あの事件はひどい。そこに女がいたから襲った、というようなことを、犯人はしゃべっているとか」
「女を、性欲の処理対象としてしか見てなかったんだね。まあ、男には少なからずある性格だけどね」
「だから、ヌード写真を見たりするわけだもんね」
「でも、普通は行為には至らない。いたるとすれば、風俗店なんかだね。あれで性欲は処理できる」
「しかし、それは悲しい。自分の性欲を処理するだけなんて。やっぱり、相手にも満足させてやらなきゃ」
「そうだね、夫婦とか恋人と言うのは、そういうものだよね。相手の満足感を感じることで、こちらも満足感を得る」
「しかし、あの男はそれができなかった」
「ある意味、かわいそうな男だね」
「あんな男に殺された女性は、もっと哀れだ。かといって、予防のしようがないしね」
「そこに女がいたから、じゃあ、しょうがない」
「犯人の男、情報処理の専門家なんだって。で、女性もシュレッターで切り刻んで廃棄しようとしたんだね」
「で、どう、奥さんを満足させてあげてる?」
「いや、もうこの年だし、いまさら」
「うちもねえ、若い子だったらいいけど、もうねえ」

 この電話で、あさって、ハシブトの巣の見学に行くことにしたのだが。

哀しいキャリア

2008-02-23 19:45:57 | 掌編
業者「200万円渡した」 飛鳥公園談合 大阪地検(朝日新聞) - goo ニュース

 友人の山口さんは、水道やガスなどの配管工事の会社を経営している。先日、いっぱい飲む機会があって、談合のことを聞いたことがあった。
「山口さんも、談合は経験があるの?」
「まあ、ないといえば嘘になるね」
「どんなふうにやるの?」
「どんなと言われても、いいにくいね、外の人には」
「どうして? 人には言わないからさ」
「ほんとに言わない? あんた、ブログなんかに書いたりしたりしない?」
「ぼくはブログなんて、書いてないですよ」
「じゃあ、少し話すけどね、談合がなきゃ、我々のような中小の会社は生きていけないんだよね。で、いろいろな手づるで、まず予定価格の情報を手に入れるわけ」
「予定価格って、手にはいるものなの?」
「まあ、ある程度はね」
「どうして手に入れるの?」
「そりゃ、まあ、いろいろさ。お金の必要な連中、お金の好きな連中が、お役人には多いじゃない。あの、守屋さんのような防衛省のトップでさえ、お金が大好きなんだ。その下には、好きな連中がいっぱいいるからね」
「で、賄賂を贈って、見返りに聞き出すわけだね」
「そう。聞き出すと、入札に参加する業者で調整するわけさ。例えば5社が参加していれば、今回は私の会社がうけるとすると、他の4社は予定価格より高い札をいれ、うちだけが、ほんのわずか低い価格を入れて受注するってこと。で、次回は別の会社、というふうに、みんなが受注できるように回していくわけだね」
「それが、ごく普通に行なわれているの?」
「まあね」
「しかし、まずいんじゃないの、それって」
「法律的にはよくないことだけど、談合をやめてガチンコの競争入札をやったら、体力の弱い会社はすぐに倒産してしまうよ。予定価格500万の工事があるとする。ガチンコの入札をやって、是が非でも仕事を取ろうときた会社が300万の札を入れたら、もううちでは仕事をとれない。NTTやらAU、ソフトバンクが、携帯の値引きの消耗戦をやってるじゃないか。あんなこと、資金力のある会社だからできることで、うちなんか完全に倒産だよ。規制緩和で、各所で消耗戦が行なわれ、値引き、ディスカウント、生産拠点を海外へ移してのコストダウン。その結果、日本の経済はガタガタになっている。哀しいことだよ」
「でもさ、公共工事は我々の税金で行われているのだしさ、できるだけ低く抑えるべきだよ。余った予算は福祉や教育などに回すべきだと思うがね」
「予定価格は、予算化されたものであって、日本の公共事業はほとんどが単年度で行なわれているんだよ。余ったから、といって、他の事業に回すことのできないお金なんだ。つまり、使いきる必要のあるお金。だから、予定価格いっぱいの札を入れる、ということは、予算を獲得した担当者を満足させるためにも良いことなんだよ」
「なるほどね。だから、談合はなくならないのか」
「まあ、県でも市でも、行政資料の入札価格の状況を調べてみな。どんな工事でも、予算を余らせないようにしているから」

 なんともね。で、たまに、内部や関係者に、裏切りモノが出て、発覚ということになる。ほとんどのケースは、闇に葬られているのだけど。
 ある意味、この二人のキャリア官僚は哀れなスケープゴート。
 たった200万で、人生を棒にふるなんて、ほんとについてない連中。
 氷山の一角であれば、もっとおびただしい数の役人が、甘い汁を吸っていることに。

  (むろんこれは小説であり、作り話である)

本当のパンツの色

2007-12-28 18:35:07 | 掌編
事情聴取で警部補セクハラ、2審も沖縄県に35万賠償命令(読売新聞) - goo ニュース

 こう言う記事を目にすると、本当のパンツの色はどうだったのか気になる。
 彼女が白いパンツを履いていたのなら、精神的苦痛は少なかったのではないか。
 パンツの色を聞いて、なんとしても逮捕したかったのか。

「おい、ほんとうにおまえは知らないというのだな」
「ええ、知りません」
「おかしいじゃないか。ネタは上がってんだ。奴が嘘をついていると言うのでも言うのか」
「本当に知らないのです」
「おめえはシロだって言うんだな」
「ええ」
「本当にシロだな」
「シロですよ」
「絶対に完璧なシロだな」
「ええ、シロです」
「何もかもシロだって言うんだな」
「はい」
「ほんとに何もかもか?」
「本当です」
「じゃあ、パンツは何色を履いている?」
「パンツ?」
「そうだよ、おめえのパンツだよ。シロなのかって聞いてんだ」
「パンツは…」
「いえねえのか、豚箱に入るときには、見せてもらうことになるんだぜ」
「そんな」
「どうなんだ、はっきり言え」
「ク、クロです」
「ほらみろ、おめえはクロじゃねえか」
「どうしてクロなんですか?」
「クロといったのはおめえだろ。何もかもシロだと言って、パンツは真っ黒。嘘をつきやがって、とんでもないアマだ。逮捕状請求だ。今日は豚箱に泊まっていただくぜ」

 もはや安物のコントの世界。警部補は一応幹部なんだけどな。

 

火星人の談話

2007-12-22 07:26:28 | 掌編
UFO対処「検討することになる」=石破防衛相の発言受け-空幕長 (時事通信) - goo ニュース

 川崎市高津区に住む高田哲男さんは、じつは火星人だそうだ。20年前に、三浦半島の先端城ヶ島に、UFOで着陸、体細胞トレースによって人間の形となり、日本人としての一定の知識も脳みそに詰め込み、現在は宅配便の運転手として生計を立てている。
 高田さんが火星人であることは、ごく少数の友人しか知らない。というより、信じていない。
 じつは、高田さんは5年前に、自分は火星人であるとカミングアウトした。しかし、誰も信じないのだ。
 そりゃまあ、人間そっくりである。安部公房の小説でも、火星人はなかなか火星人として認めてもらえなかったのだが、高田さんも同じ。
 むろんぼくは、友人として彼の言葉を信じる。彼は火星人なのだ。しかも、UFOで日本へやってきたのだ。政府も防衛省も、彼をUFO対策に起用すべきではないか。ということで、高田さんに電話で聞いてみた。

「自衛隊では、UFOの攻撃にどう対処すべきか困っているらしいけど、高田さんはどう思いますか?」
「愚かなことだと思いますよ。だって、石破さんが考えているのは、爆弾や重火器での攻撃でしょう。UFOはそんな原始的な攻撃はしません。もし当たったりすれば大変でしょう。我々は平和的に同化していくのです。だから、自衛隊がじたばたしてもどうなるものではありません。じつは、日本にはかなりな数が、火星から来て暮らすようになっています。有名人の中にも、けっこう火星人がいます。隠れ火星人も大勢います。そのうち、日本は火星人に支配されるようになりますよ」
「本当ですか」
「本当もほんと。火星人は嘘をつきません。企業や人間以外の動植物も、火星人支配が進行中です。例えばアサヒカセイなんて火星人の企業ですし、ラッカセイは火星で生えていた植物です」
「まさか」
「まさかというようなことが、この宇宙にはいっぱいあります。だいたい宇宙人の攻撃だなんて、光頭無毛のハゲ頭ですよ。どんな攻撃を仕掛けてくるかわからない相手に何かを守ろうとするのは無駄です」
「そんなものですか」
「ですから仲良くするだけ。もうぼくなんか、日本の生活にすっかりなじんだし、どう考えても日本人になっていますからね」
「そうか、守っても無駄なら、守らない方が良いか」

 ということで、UFOからの守りを諦めることを、高田さんは提言しているわけですが、小生もそれに賛成ですね。高田さんも結婚しているし子どももいる。火星人であろうと、本来の日本人であろうと、なんら変わるところはないのだから、まあ、じたばたすることはないと思うが。そのうち、火星人も日本人と同化するだろうし。