ブログ小説 過去の鳥

淡々と進む時間は、真っ青な心を飲み込む

これを機に原発を見直す必要性

2011-03-22 07:19:46 | 事件の真相
死者・不明者2万7千人超す 警察庁(朝日新聞) - goo ニュース

 私の知人に、映像の制作者がいた。彼はどんな企業のPRの仕事でも受けた。消費者金融など、怪しい会社のPR映画、耐震偽装のあったデベロッパーの紹介映像も手掛けた。が、たった一つ、原発のPRの仕事だけは例外で、絶対に受けることはなかった。原発の場合、国家が消滅するほどの大きな被害が生じる危険極まりない悪魔の構造物、という信念があったからだ。

「しかし、東京電力は安全だからつくってきたのじゃないの」
「どこが安全なんだい。今度の地震でよくわかっただろう。へたすりゃチャイナシンドロームだぜ。そうなりゃ、東京だって廃墟さ」
「そんな危険なものを作るわけないだろう。今回の地震被害は想定外の規模だというじゃないか」
「想定外なはずないだろう。日本は地震列島なんだぜ。地殻変動はどんどん起きている。もし、今回よりももっと大きな、チリ沖地震のようなマグニチュード9.5程度の地震が起きたら、高さ30メートル程度の津波が来ても不思議でない。さらにだ、地殻変動で、岩盤自体が傾くことも考えられる。そんな危険な場所に、原発をつくる愚は絶対に許せない」
「でも、何千年に一度の大地震を、なかなか想定できないだろう」
「いや、何万年に一度の超巨大地震が、たまたま明日起きることだって考えられる。今回の地震でも、地盤の沈下や移動が広範囲にわたって起きているが、そんなの日本列島で起きてきた地殻変動の歴史の小さなひとこまにしかすぎない。それも頭に置いて原発をつくるべきなんだよ。それを計画段階から考慮に入れてこなかったわけで、明らかに人災さ」
「しかし、起きてしまったものはしょうがないだろう。今、懸命に原発を冷やす作業をやってるじゃないか」
「ああ、自衛隊や東京消防庁の力を借りてね。しかし、東京電力は、地震発生当初、放射能漏れで危険だから、対策をせずに所員を避難させようとしたんだぜ。それが東京電力さ。この危険な事態でも、なすすべはまったくなく、他人の力任せ」
「その点は問題だな。しかし、どうすればいいんだ」
「方法はいくつかある。ひとつは節電だ。我々にできるのは、電力を使わない生活。照明を抑え、消費電力の少ないものに変えるとか、IHをやめるとか。大きな工場では自家発電の機能を持つようにすべきだ。今、東京では福島や新潟など遠い発電所からの電力に頼っているが、遠距離だと送電ロス、送電コストが大きい。それを解消できるし、いざというとき、工場の電力を売電できる」
「なるほど」
「今建設中、あるいは建設予定の原発はすべてストップし、操業中の原発は代替エネルギーを確保しながら徐々に停止し、廃炉にすること。絶対に安全であると言う確証のない原発は絶対につくらないようにすること。代替エネルギーは、潮流や太陽光、水力、地熱などがあるし、森林資源の活用も考えられる。実際、江戸時代には、薪炭林から得られた燃料のみで、自然破壊することなく日本人は生活していたんだ。そりゃ、質が変化したから、現状とは合わない部分もある。しかし、日本を破滅に追いやる可能性の高い原発よりは、はるかにましな選択だよ」
「しかし、どうしてそんなに危険なものを」
「儲かる人たちがいるからだよ。東京電力が儲かり、原発関連の事業者が儲かる」
「危険性を知らなかったのだろうか。今回も想像を超える災害だったというが」
「いや、十分に想像できた。想像できないなんて、大嘘つきかよほどの怠慢だよ。現に高木仁三郎さんら、多くの学者が、危険すぎる日本の原発について、口を酸っぱくして発言してきた。それを封殺してきたのは、怠慢どころか重大犯罪だよ。これは明らかに人災であり、東京電力はすべてをなげうってでも補償していかなければならない。そして、いかに原発が高くつくのか、身をもって理解する必要がある。もちろん、原発を認め、推進に大きな役割を担ってきた国も、最終的な責任がある」

 友人の鼻息は荒い。
 私としては、放射能がこれ以上広がらないことを望むのみ。
 被災者の皆さん、頑張ってください。わたしにできることは、ささやかな義捐金を送ること、買占めに動かないこと、車を運転しないこと、電気をなるべく使わないこと、そしてこんなブログで声援する以外には方法がないが。