順天堂大学の勝利で終わった箱根駅伝。見終えて、小生はまっ昼間から酒を飲む。
最近は、酒を飲むと車を運転しなくて済む。妻がどこかへ連れて行け、といわなくなる。で、ぐうたらと昼寝をきめこんだ。まあ、正月三が日だから許されるだろう。
と、山根さんから電話が来た。
あんたのブログ読んだが、NHKはもっとCATVをバカにしていた、というのだ。昨日の書き方では生ぬるい。もっとNHKを批判する小説にして欲しい、という。
「では、どんなふうにバカにしていたのですか」
「そりゃ、もう、私なんか身分がずっと下という感じで。NHKとCATVでは、武士と水のみ百姓と言えばいいでしょうか」
「そんなにひどいの? 同じテレビなのに」
「月とすっぽん、タヌキとブリキですよ。何しろ、NHKが相手にするのは日本全国の視聴者。こっちは契約者が1万世帯程度で、見ている人はそのうちのせいぜい何百人。向こう様は20人近いスタッフの数。こっちはたったひとりで、すべて手作りの番組ですからね」
ということで、昨日の続きを……。
「山根さんが、インタビューもしはるんですか?」
ツルベは、驚いたようなあきれ果てたような顔で言う。
「ええ、します」
「そんなことされたら、うちらの商売、あがったりやなあ」
「レポーターなんか使う予算、ありませんから」
「ほんまかいな。ケーブルテレビって、どのくらいの予算で作ってはるの?」
「直接費は、ほとんどゼロです」
「ゼロ? お金かかってないの」
「テープ代と、車のガソリン代以外は、何も出ません」
「ロケ弁当は出えへんの?」
「もちろん出ません」
「わあ、かわいそう」
いかにも同情するような表情で、ツルベはカメラの背後にいる工藤ディレクターに声をかける。
「ねえねえ、工藤さん。ロケ弁、山根さんにも都合つけたげてんか」
「ええ、いいですよ」
「いや、そんなことしてもらわなくてもいいですよ」
「遠慮しなはんな。NHKは予算たっぷりあるんや。弁当ひとり分増えても、びくともせえへんから」
途中で、CATVの放送編成部長から、携帯に連絡が来る。NHKに全面協力するようにとのこと。根回しをしたようだ。
何しろNHKは巨大組織。バックに政府がひかえている。地方の吹けば飛ぶようなCATVは太刀打ちできない。根回しをされれば、抵抗なんてできっこない。
神楽保存会長へのインタビュー内容。
・保存会のプロフィール
・神楽の演目について
・神楽の見方
カメラを三脚にセットして固定し、シュートしてからインタビューマイクを手に、神楽保存会会長にインタビューする。その様子を、NHKのカメラが撮影する。
「この神楽の参加者は、どんな職業の方々ですか?」
「おもに農家の人たちですね。あと、公務員が何人かいますし、農協の職員もいますね」
こっちがまじめにインタビューをしていると、ツルベがチャチャを入れる。
「わー、すごいなあ。ほんまにひとりで、インタビューもしてしまうんでんな。こんなんで番組作れたら、今日来とるスタッフ、商売あがったりやなあ。で、会長さんは、普段何してはんねん?」
「農業です」
「どんなもんが取れるんですか?」
「うちでやってるのは、コンニャクイモとキャベツ、それにミョウガも作ってますけど」
「コンニャクイモ作ってはんの? コンニャクは、芋からできるんでっか?」
「ええ」
「そら、ちょっと見せて欲しいなあ」
と、地元の視聴者にはまったく関心のない方向へ取材が進んでいく。こちらの取材はずたずた。が、大きな力の前ではどうすることもできない。文句を言えない自分が情けない。
本当は、地元の神楽を、祭りの中でありのままに撮って、編集には手を加えずに淡々と見てもらう番組を作りたかったのだ。最近の番組は、民放もNHKも脂ぎったぎとぎとの番組が多い。ゴテゴテの装飾だらけの番組。そうではなく、地元の話題の環境番組、情報番組、それがCATVの役目だと考えている。そういう番組を作りたいし、今回の神楽取材もそのつもりだった。なのに、これではバラエティー番組だし、CATVがさらし者になるだけ。
しかし、上司から協力するようにと言われると、反論はできない。上司だって、NHKからの要請は断れない。長いものには巻かれろ。
そんなこんなで収録を終え、帰社する。ツルベとカメラ二台が会社まで付いて来る。他の2台のカメラは、別のタレントと一緒に神楽のメンバーを追っている。
「ここが、編集室でっか?」
「編集室兼、MAルーム兼、アナブースです」
「せまっ。カメラが入れへんやない。ここは、山根さんのちっこいカメラ、便利やね。それに、何? この卓は」
「これが編集機です」
「わあ、おもちゃみたい。こんなんで、テレビ番組の編集ができるん?」
「ええ、CATVですから」
「ほな、編集、見せてもらおか」
悲しくなってきた。が、物量の前に抵抗できなかった。抵抗すれば、カメラマンや音声さんにも迷惑がかかる。こっちはひとり我慢すればいい話。
(山根さんは、このあとどのように対処するのか、まだ考えていないので明日以降に持ち越させていただきやんす。ということで今日は御免)