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ブログ小説 過去の鳥

淡々と進む時間は、真っ青な心を飲み込む

うそ

2014-03-14 17:53:39 | 爆裂詩
 いつかはばれる嘘なのに
 嘘をつき続ける快楽が 
 ずたずたになった夢を水たまりに置き去りにし
 また嘘にあけくれる

 千円札2枚をポケットにねじ込み
 パチンコ屋で1万円になることを夢見
 あっという間に文無しになったギャンブル依存症
 こころの崩壊に陶酔する悲しい命

 自殺者は3万人を切ったというが
 今日もどこかで電車は人をひき殺し
 縄やネクタイや帯が
 テルテル坊主のように人を吊るす

 そろそろ春なのに

春へ

2011-02-20 07:13:09 | 爆裂詩
 遠いサイレン
 どこかで火事が発生し
 燃えて行く心

 ハローワークのパソコンの
 冷え冷えとしたディスプレー
 仕事がなく
 失業保険も切れ
 松屋の牛丼で空腹を満たし
 今月の家賃をどこで借りるか考え
 とぼとぼと歩く失業者

 歩道の脇で咲くパンジーの花びらは
 ひらひらと木枯らしに揺れ
 ホームレスが
 家財道具の入ったビニール袋を手に
 西に向かって歩く

 生きることに精いっぱいの哀しみ
 心はこんなにも冷たいのに
 遠い火事のように燃えて行く

遠い心の沈むとき

2010-06-08 06:32:37 | 爆裂詩
 ホトトギスが鳴き
 キジバトが鳴き
 サッカー少年がボールを蹴る朝
 僕の遠い心が沈んでいく

 還暦を過ぎた魂の抜け殻
 あれだけよかった記憶力は
 もう過去のもの
 手は次第に老人に移行し
 知人の死亡通知に
 再び手を見る

 走れない犬
 飛べない烏
 泳げない魚

 僕はまだ生きているが
 本当に生きているのか危うい命
 僕はまだ死んでいないが
 本当に死んでいないのか危うい肉体

 少年はサッカーボールを蹴り続ける
 雲はどんよりと垂れこめ
 僕は手を見る



 
 

サクラが散って緑萌え

2010-05-02 10:41:28 | 爆裂詩
 緑がサクラのあとにやってきて
 公園に子供たち
 ボールをける音
 叫ぶ声

 心の空洞を埋めるのは
 5月の風
 新緑の匂い
 還暦を過ぎた老いの風景は
 軽やかだった足取りの過去を
 もう忘れ
 石段を踏みしめて登る
 呼吸の乱れ

 もう若くはない
 と言う若さすらない年齢の憂鬱
 シジュウカラのさえずりを聞く
 快晴の午前10時49分

 桜が散って緑萌え
 僕は公園の石段を降り
 引き返そうとしている

 老いという孤独の振り子に
 僕は石段を踏む

緑は萌え

2010-04-30 06:39:03 | 爆裂詩
 生きてきた思い
 死に行く夢
 老いがじわじわと近づくなかで
 緑が萌える

 明日は5月
 2010年
 鳴く鶯の姿は緑のむこう
 僕が追う夢はかすかにかたちを見せ始め
 生きてきた思い
 はかない

 路傍のひなげしは風に揺れ
 欅の枝の影は震える
 緑が萌えても
 心は青
 もう一度振り返る
 砂上の足跡
 生きてきた思い
 はかなく
 こくこくと緑が萌える

 
 

ほろ酔いの青い人参

2010-02-19 23:28:19 | 爆裂詩
 まだかろうじて生きている僕の
 青ざめた顔の後ろで
 キツツキがドラミング

 とととととと
 トトトトトト
 とととととと

 その音にめまいを感じる
 青い人参の冷たさ

 雪の中で凍え
 オオイヌノフグリの開花を待つ
 ひっそりした畑
 それは柔らかい綿雲の幻想

 まだテントウムシは眠り
 人参だけが突き刺さる幻想の中で
 大地は黒く
 モンシロチョウの出現を待つ

 ほろ酔い加減の人参は
 大地に突き刺さったまま
 動こうともしない横着
 それが現実なのか

 現実という言葉は鈴となって転がり
 僕は畑を見つめる
 まだ人参は突き刺さったまま
 

燃え尽きる雪

2010-02-18 08:27:35 | 爆裂詩
 降る雪を見上げれば黒く
 天空に乱れる
 切り裂くように鳴くヒヨドリが
 積もる雪の重さに首をたれる椿を目指す

 雪は白く燃え
 真っ赤な椿を覆う
 褐色の木の枝を染め
 はらはらと降り続ける
 冬

 重い空のもと
 うごめく哀しみ
 衰えを感じる目
 失せていく集中力
 しかしわたしはひるまない
 と言い聞かせるやせ我慢

 じっとキーボードをたたく手を見つめ
 まだ生きていることを実感する

 わたしの年代は
 椿の花がポトンと落ちるように
 次々と鬼籍に旅立ち
 わたしは生きている

 雪は降る
 静かに白い炎となって降る
 遠い電車の音
 ヒヨドリの叫び
 
 雪はやがて燃え尽きる
 

石積みの村

2010-02-17 17:06:13 | 爆裂詩
 石垣が続く錆びた村
 茶褐色の光景に
 鳶の声がうつろに響く
 冬から春へ
 冬から春へ

 季節は変わろうとするが
 厚い綿入れの老婆は
 石垣の端に腰をおろし
 寒さにかじかむ手を前で合わせて揉み
 鳶の声に耳を傾ける

 オオイヌノフグリは
 青く花弁を閉じ
 仏の座は紅色の舌を空に
 冬から春へ
 あと少し
 
 しかし
 それまでにいくつかの命が消え
 鳶はうつろに鳴き
 天に尾をひく螺旋
 風は冷たく
 どこまでも透明で哀しく
 やがて冬は終わる

 どこかで今も
 人が死んでいる
 犬も馬も
 烏も豚も
 どこかで死んでいる
 なのに都会の公園では
 子供たちの遊ぶ甲高い叫び声
 石積みの村では
 小柄な老婆のささやき

 まだまだだよ
 まだまだ

 だが
 春はもうそこまで来ている
 
 
 

雪の朝

2010-02-02 04:58:20 | 爆裂詩
 雪の朝
 心は冷え冷えと
 どこまでも白く
 哀しく広がる

 老いていく犬が
 足跡を残し
 さまよう早朝の街

 烏が鳴くしじま
 冬の鳴動
 固く冷たい孤独

 雪がしんしんと降った街
 心は冷え冷えと重い

 言葉を紡ごうとして
 言葉が出ず
 閉じこもる冷たい心

 あの烏は何を思って鳴くのか
 あの犬は何を思って歩くのか
 雪の積もった早朝

 新聞配達はまだ来ない
 心は冷え冷え
 心は冷え冷え
 
 
 

ボルトナット

2010-01-30 06:12:33 | 爆裂詩
 都市はボルトナット
 固く締められたボルトナット

 橋脚もビルも線路も
 すべてボルトナットが支配
 それが現実だ

 空間は冷たく閉ざされ
 圧縮された気体が重く凝固し
 スパナが回転する
 心はボルトナット

 爆走する自転車は
 赤く淀んだ夕暮れの太陽に向かって
 突き進み
 突き進み
 ボルトナットは固く
 冷たい冬の風

 都市はボルトナット
 金属音の向こうで
 スパナが踊る

 都市はボルトナット
 崩壊の橋のたもとで
 折れたスパナ

 君は絶望という文字を
 ボルトナットから読み取ることができたか