赤福、再出荷時に翌日の刻印 偽装が常態化(朝日新聞) - goo ニュース
尊敬し敬愛し神と崇めるノーベル文学賞劇作家サミュエル・ベケット大先生の名作「ゴドーを待ちながら」を下敷きとした第3弾の6回目。
赤福編。
長いベンチがあり、その背後に3個の風船が浮かんでいる。
赤、青、黄色の信号色の風船。
それに枯れ木が1本。
ホームレスの浦路と絵栖の二人は、ベンチの両端に腰を下ろしている。
浦路は先日同様に新聞を読んでいる。
絵栖「また新聞を読んでいるのか」
浦路「ああ」
「よく飽きないなあ。たいした記事があるわけではないだろう」
「つまらない記事ばかりだ」
「記事では腹の足しにもならないしな」
「腹の足しにはならないが、腹の立つ記事はあるぜ」
「ほう、どんな記事?」
「赤福の餅が、作った時期を偽装していた。それで販売が禁止になっている」
「赤福って、あのあんこをまぶした餅?」
「おまえ、食べたことがあるのか?」
「あるさ。子供の頃。あれはおいしかった。お袋が勝ってきてくれた。そういやあんこの餅なんて、ずっと食べたことがない。コンビニのごみ箱にはないし」
「赤福は期限が切れた餅は回収して、もう一度リニューアルして店に出すんだって」
「ああ、それで、餡の入った餅はごみ箱に捨てないのか」
「あんこは腐らないからな」
「あんこは腐らない? 本当か」
「ああ、砂糖をいっぱい使っていると腐らない。飴もチョコレートも腐らない」
「だから、白い恋人とか、不二家とか、お菓子はいろいろ怪しいことをしていたのか?」
「まあ、多かれ少なかれ、菓子の業界ではやってるらしい」
「腐らないものに賞味期限をつけるのか?」
「そういう決まりだ」
「あんこは腐らないのに、うんこは腐るのか」
「何でうんこの話を持ち出す。うんことあんこはまったく次元が違う問題だ」
「あんこを食べると、おなかの中でうんこにはならないのか」
「そりゃなるさ」
「じゃあ、あんこもうんこも似たようなものだろう」
「あんこは食べられるが、うんこは食べられない。まったく違う」
「どうして? うんこを食べちゃいけないのか」
「大体臭いだろう。うんこは、もう身体の中で腐っているものなんだ」
「えええっ、うんこは腐っているのか。俺たちは腐ったものを身体の中に入れているのか」
「いや、腐っているから、外へ出すんだ」
「あんこは、人間の身体の中に入ると腐るのか?」
「まあそういうことだ」
「じゃあ、どの辺で腐るんだろう。この辺か、それともこの辺?」
絵栖は手で腹部を示す。
「そんなのどうでも良い」
「どうでも良い? それはよくない。あんことうんこはまるで違うだろう。あんこはおいしいけど、うんこはオエッとなる。根本的に異なるんだけど、どっかで中間の時期があったはずだ。子どもと大人には思春期がある。昼と夜には夕暮れがある。当然あんことうんこに中間があっていいはずだ。あうんこ、とか」
「だからどうしたと言うんだ?」
「だからどうした、とはどうした」
「どうしたと言うことは、胴の下か、うんこの出るのは?」
「汚い話はよそう」
間
「赤福、食べたいな」
「ああ、食べたい」
「別に賞味期限も製造日も関係ないんだけどな」
「ああ、めったに腐らないものな」
「砂糖や塩には賞味期限はないんだぜ」
「砂糖にないのか?」
「ああ、砂糖にはない。砂糖は腐らないから。砂糖たっぷりの赤福も腐らない。赤福が消えて腐るのは消費者と会社だけ」
「でも、どっちかいうと腐りかけがうまいけどな。幕の内弁当も、期限が切れて、少し匂い始めた頃のものがおいしい」
「ちょっと糸を引きはじめたご飯もおいしいな。カビを横によけて食べたり」
「そうさ、人はめったなことで腹を壊したりしないからな」
「ああ、食べたいな、赤福」
「売れなくなった赤福、どうするんだろう」
「捨てるのじゃないか」
「それはないよ。もったいない。俺は食べたい」
「俺も食べたい」
「捨ててくれれば拾うんだけど」
「でも三重県だぜ」
「遠いなあ。この近辺でも、どこかで捨てないかなあ、期限切れの大福」
「コンビニのごみ箱、探しに行くか?」
「ああ、行こうか」
二人、動こうとしない。
尊敬し敬愛し神と崇めるノーベル文学賞劇作家サミュエル・ベケット大先生の名作「ゴドーを待ちながら」を下敷きとした第3弾の6回目。
赤福編。
長いベンチがあり、その背後に3個の風船が浮かんでいる。
赤、青、黄色の信号色の風船。
それに枯れ木が1本。
ホームレスの浦路と絵栖の二人は、ベンチの両端に腰を下ろしている。
浦路は先日同様に新聞を読んでいる。
絵栖「また新聞を読んでいるのか」
浦路「ああ」
「よく飽きないなあ。たいした記事があるわけではないだろう」
「つまらない記事ばかりだ」
「記事では腹の足しにもならないしな」
「腹の足しにはならないが、腹の立つ記事はあるぜ」
「ほう、どんな記事?」
「赤福の餅が、作った時期を偽装していた。それで販売が禁止になっている」
「赤福って、あのあんこをまぶした餅?」
「おまえ、食べたことがあるのか?」
「あるさ。子供の頃。あれはおいしかった。お袋が勝ってきてくれた。そういやあんこの餅なんて、ずっと食べたことがない。コンビニのごみ箱にはないし」
「赤福は期限が切れた餅は回収して、もう一度リニューアルして店に出すんだって」
「ああ、それで、餡の入った餅はごみ箱に捨てないのか」
「あんこは腐らないからな」
「あんこは腐らない? 本当か」
「ああ、砂糖をいっぱい使っていると腐らない。飴もチョコレートも腐らない」
「だから、白い恋人とか、不二家とか、お菓子はいろいろ怪しいことをしていたのか?」
「まあ、多かれ少なかれ、菓子の業界ではやってるらしい」
「腐らないものに賞味期限をつけるのか?」
「そういう決まりだ」
「あんこは腐らないのに、うんこは腐るのか」
「何でうんこの話を持ち出す。うんことあんこはまったく次元が違う問題だ」
「あんこを食べると、おなかの中でうんこにはならないのか」
「そりゃなるさ」
「じゃあ、あんこもうんこも似たようなものだろう」
「あんこは食べられるが、うんこは食べられない。まったく違う」
「どうして? うんこを食べちゃいけないのか」
「大体臭いだろう。うんこは、もう身体の中で腐っているものなんだ」
「えええっ、うんこは腐っているのか。俺たちは腐ったものを身体の中に入れているのか」
「いや、腐っているから、外へ出すんだ」
「あんこは、人間の身体の中に入ると腐るのか?」
「まあそういうことだ」
「じゃあ、どの辺で腐るんだろう。この辺か、それともこの辺?」
絵栖は手で腹部を示す。
「そんなのどうでも良い」
「どうでも良い? それはよくない。あんことうんこはまるで違うだろう。あんこはおいしいけど、うんこはオエッとなる。根本的に異なるんだけど、どっかで中間の時期があったはずだ。子どもと大人には思春期がある。昼と夜には夕暮れがある。当然あんことうんこに中間があっていいはずだ。あうんこ、とか」
「だからどうしたと言うんだ?」
「だからどうした、とはどうした」
「どうしたと言うことは、胴の下か、うんこの出るのは?」
「汚い話はよそう」
間
「赤福、食べたいな」
「ああ、食べたい」
「別に賞味期限も製造日も関係ないんだけどな」
「ああ、めったに腐らないものな」
「砂糖や塩には賞味期限はないんだぜ」
「砂糖にないのか?」
「ああ、砂糖にはない。砂糖は腐らないから。砂糖たっぷりの赤福も腐らない。赤福が消えて腐るのは消費者と会社だけ」
「でも、どっちかいうと腐りかけがうまいけどな。幕の内弁当も、期限が切れて、少し匂い始めた頃のものがおいしい」
「ちょっと糸を引きはじめたご飯もおいしいな。カビを横によけて食べたり」
「そうさ、人はめったなことで腹を壊したりしないからな」
「ああ、食べたいな、赤福」
「売れなくなった赤福、どうするんだろう」
「捨てるのじゃないか」
「それはないよ。もったいない。俺は食べたい」
「俺も食べたい」
「捨ててくれれば拾うんだけど」
「でも三重県だぜ」
「遠いなあ。この近辺でも、どこかで捨てないかなあ、期限切れの大福」
「コンビニのごみ箱、探しに行くか?」
「ああ、行こうか」
二人、動こうとしない。