陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

「鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST」 第三話

2009-04-19 | 感想・二次創作──鋼の錬金術師
ほんの出来ごころで時計をばらばらに分解してしまう。部品はちゃんとぜんぶ揃っている、だいじょうぶ。また、組み立てなおせば、もとどおりに刻をきざみはじめるだろう。しかし、どうしたものか。きちんと細部まで組み直しても、二度とその針は動いてはくれない。
その時計には時計が生まれてからの滔々と流れる時間があった。その時間をいったん止めてしまったら、もうおなじ時間をはじめることはできない。あるいは、その時計をうごかす原動力がもはや電池ではなくべつのエネルギーに変わってしまったからか。
壊れたのが時計ならばまた買えばいいかもしれません。しかし、人間はそうはいくまい。


「鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST」 第三話「邪教の街」
旧作でも原作でも記念すべき第一回にあたるエピソードですが、おそらく二回分を一話にまとめておりました。旧作アニメですと、もっとロゼの悲嘆をえぐる描写や、エドたちがいったん囚われてしまうピンチの場面、そして戦闘ももっとコマを多く割いていたように記憶していますが、さて。
錬金術を奇蹟と売り込んで、信者を増やし国の乗っ取りをたくらむコーネル神父(声が星一徹!)率いるカルト集団。エドとアルはそれに挑みますが、彼らの悪事をあばきたてるお手並みがあざやかで、しかも笑いを誘ってしまいます。

期待をかけていた賢者の石はにせものだった。失意の兄弟が向き合わなければいけないのは、また可能性を探しつづける日々。壊れたラジオは両手で直してしまえる能力をもつのに、自分の望むものを戻せないという不条理。

恋人もうしなった、神父にも裏切られ、宗教ももはや頼れないとわかって、涙にくれる少女。すがりつくように懇願するロゼに、エドが言い放った言葉が重いですね。

「そんなこと、自分で考えろ。あんたにゃ、立派な足がついてるんだから」

冷たいかもしれないですけど、胸にずしりと響きますよね。このエドの態度は、俺たちゃ、あんたよりももっと酷い状況なんだぜ、という弱者ゆえの奢りと受けとるべきか。もしくは、俺たちみたいになってくれるな、というぶっきらぼうな親切心からなのか。それは視聴者の感じかたしだいですけど。あえて、つき放した物言いは、あやまちを犯した自分を慰めたくないからなのでしょう。

旧作では前髪が奇抜な色だったり、再登場時にはさらに哀しみを背負わされてしまうロゼですが、今作はこれで見納めなのか。
次回はいよいよ、あのショー・タッカーとの出会い編ですね。



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