陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

映画「鋼の錬金術師 シャンバラを征く者」

2011-07-03 | 感想・二次創作──鋼の錬金術師
2005年の映画「鋼の錬金術師 シャンバラを征く者」は、大人気ファンタジーアクション「鋼の錬金術師」の劇場版第一作。本作は、テレビ版第一期の最終回を受けたサイドストーリーとなっております。以前おふざけ半分でレヴューした(劇場版 「鋼の錬金術師 シャンバラを征く者」(前)劇場版「 鋼の錬金術師 シャンバラを征く者」(後))のですが、映画版第二作公開記念で地上派放映にあたり再レヴューしてみました。

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1923年10月、ワイマール共和国ミュンヘンに暮らすエドワード・エルリック。
近代科学が発達した20世紀前半、錬金術が使えないエドワードは義足義手を嵌めています。相手のこころが読めるジプシー女・ノーアをかくまったエドは、この世界では異邦人である寂しさを打ち明けてしまいます。ノーアは何者かに追われていました。

とにかくこの映画、異世界なのにそっくりさんが頻出。
エドが身を寄せる科学通の若者アルフォンス・ハイデリヒはじめ、本編で登場したあの人この人が。ホムンクルスのあれもこれも出てきますが、性格をつくりかえられた別人のように思えてしかたがないですね。旧作オリジナルキャラもいますので、旧シリーズを観ておかないとわからない。

エドのいる世界側のドイツの軍人たちの野望によって、弟アルフォンスやウィンリィのいる錬金術世界への道が通じてしまいます。20世紀ドイツの人間は、エドが生まれた世界を理想郷「シャンバラ」と呼んでいるのですね。扉を開けて元の世界に戻りたいという渇望と、錬金術世界が戦争の道具に利用されてしまうことへの恐れ。しかし、夢の国を願うミュンヘン世界の善意と悪意のまじった思惑と、弟アルのあまりに純粋すぎる切望が最悪の事態を招いてしまいます。その災厄を引き起こした責任をとって、兄弟は夢を追うことのできず不自由な世界で生きることを選択してしまいます。

当時はアニメ製作者が原作を無視して自分の趣味をふんだんに注ぎ込んだ二次創作まがいだと思っていたのですが、鎧のアルとエドが接触するからくりなど工夫が凝らされておもしろいですね。旧シリーズ独自の設定であるイズミ師匠と水樹奈々さん演じるラースの関係への埋め合わせともなっています。ただ原作に忠実なFAシリーズを観たあとでは、あのホーエンハイムの扱いはずいぶん酷いと思われます。そして前半のマスタング大佐の無能っぷりがなんとも…。

あの結末、兄弟としてはハッピーエンドですけれど、ウィンリィにはかわいそうですね。このあたり原作派には評価が分かれるところでは。核をあつかった点では今となっては非常にタイムリーな問題を投げかけた意欲作と見ることもできますね。監督のしたい放題につくったという印象があったのですが、あえてオリジナルアニメーションではなく人気作の主人公にそれを言わしめたというのは、子供世代に対する影響をかんがえてのことだったと言えなくもないでしょう。

監督は水島精二。脚本は會川昇。
劇場版オリジナルキャラの声には有名人があてられていますが、原作キャラは当然ながら旧シリーズの声優が担当しています。


(2011年7月1日)

劇場版 鋼の錬金術師 シャンバラを征く者 - goo 映画

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