陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

オンライン学習で板書ノートの授業が終わる?!

2020-05-30 | 教育・資格・学問・子ども

さくらももこの何かのエッセイに、子どもの頃、睡眠学習教材を買ったものの、効果がなくて、代金の支払いを渋っていたら督促がきた、という話があります。
この人の漫画、人生舐めてるような主人公が嫌いですが、その本質がわかるエピソードだと思います。記憶術がよくなる教材とか、昔の漫画雑誌によく宣伝がありましたよね。

そのいっぽうで、武内直子原作の『美少女戦士セーラームーン』の、天才少女と謳われる水野亜美の初登場回。
パソコンで授業を行う進学塾で、独りだけペンを使って勉強したので、洗脳されなかったという。いまのインターネット浸透時代の動画やSNSに夢中になって言論を牛耳られる世の中を予言していると、ひさびさに読み返して驚いたものでした。

コロナ禍で求められたソーシャルディスタンス。
大学ふくめ学校の授業がオンライン発信になっているようですが。うちの地元県はあまり対応していないのか、情報教育推進モデル校の小学校のわりには、手作りプリントが休校中の課題だったり。塾や家庭用学習教材への出費もかさむようで、政府や自治体は子持ち家庭向けに補助金を出すようです。

小学校低学年から英語もプログラミングも必修になる。
まだ漢字の書き順もあいまいで、アルファベット順すら覚えておらず、九九もうろ覚えの子もいるだろうに。生まれながらネットがある世界で育った子は、字を書くことにかなりの苦痛を覚えているように感じられます。豊かな色彩、弾むような音の動画になれてしまったら、平面の文字や絵の魅力がかすむのは致し方ないこと。いずれ、私のような旧世代の学習法は時代遅れになるのかも。

私は高校時代までは、とにかくアナログな勉強法でした。
5科目の授業ノートや参考書をひたすら書き写していく。社会、理科、英語の科目はとくにそうですね。国語は暗記が問われる古典漢文が得意、数学は解法パターンを丸覚えしていただけで、数学的なひらめきやセンスとは無縁でした。暗算だけは早かったものの。

私は塾に通わなかったので、高校受験までは学校指定の問題集や参考書ばかりを繰り返しやりました。学校の教師に頼めば、ハイレベルな問題集のプリントはタダでもらえました。今の学校の先生は雑事に追われて、放課後、職員室に通ってくる子どもの面倒をみるなんてできないのかもしれませんね。

現在では、とくに公立校の授業の進捗は遅れていて、学習塾に通わせなければまともな学力は身につかないとまで言われています。
親も仕事が忙しく、子どもを塾に通わされば友達と遊べるし、子守りもしてもらえる。でも、学校でも勉強して、塾でも塾の教材で勉強して、さらには他に習い事もして、それで子どもは楽しいのかなと思います。

オンライン授業の推進が叫ばれていますが、けっきょく、利益を得るのはもともとも自主学習ができる子のみ。
ネットでゲーム動画を探しあてる子はたしかにパソコン操作に詳しくなるけれど、基礎学力がそこでしっかり身につくかは疑問です。他ならぬ私が、大学時代にはじめてネット触れて研究が疎かになりかけたことがありましたから。ネットサーフィンの楽しさにハマったら、抜け出すのは一苦労です。


不登校経験者なので、学校嫌いが自宅で学習できるシステムはいいと思うのだけど。
そもそも人間嫌いな人が、人間が教師面してでてくる動画好きですかっていうと、そうでもなく。時間割があって、教室移動があって、席替えがあって。行事や窓から見える景色や、迷い犬騒動、部活、放課後のお喋りとか。そういう学習ではない、無駄な学校の時間って、けっこう与えてくれるものはあったはずなんですよね。それを取っ払って、機械的な目的達成のためだけのオンラインで区切られた時間のみで、達成感を計ってもよいものかと。冒頭の睡眠教材ではないけれど、一度限り見た聞いただけで覚えたら苦労しません。

最近は国内外ふくめた大学の授業をMOOCで公開してもいます。
大学の講義ノートを受講生がネット上で公開する事例もあります。大学の講義はそもそも講師に著作権がありますが、その講義内容が独自の研究成果ではなく、一般教養程度ならば「表現物」にあたらない、あるいは受講生が独自に構成したものならば違法にあたらずとする見解もあります。

大学の講義といえば、高校時代までのように板書してはくれず、口頭説明がほとんど。
律儀な聴講生はそれを一字一句拾って書き写したものでした。私は一時期、日本人の講義者の言葉は英語に翻訳してノートにするというチャレンジをしてみたこともあります。それはともかく、敬虔な学徒からすれば大学の話者というのは神格化された存在。それを昨今の学生のように、スマホで板書を撮影保存するなんて、という思いがありました。しかし、こんな旧弊な考えも、オンライン授業で変わるかもしれません。大学の講師がユーチューバーよろしく、自身で抗議の動画を編集して発信せねばならない時代とは。本当にまあ驚きです。

私にとってのオンライン学習は、社会人になってから。
職場の研修で、オンラインで個人情報保護法上のリテラシーを学ばねなばならない機会があったり。テキスト部分を動画でさらっと流されて、一問一答式で正解を答えます。ノートもとれないし、マーカーも引けません。新社会人の方で部署配属前のOJTでオンライン研修されている方もいるのかもしれませんね。でも、このオンライン学習、ほんとうに私は苦手です。資格の勉強すらテキストでオーディオ学習したことすらないのに。

ただ人の身振りや声が乗ったりした動画で学ぶ方が、記憶に残りやすいのはほんとうなのかもしれません。
私は音や光がざわざわしてうるさいのは苦手なので。今の子みたいに小学生からパソコンに触るような生活の時代に生まれなくてよかったとも。

しかし、今の若者はとても優しすぎるのか。
ネットで心ない発言に傷つくことが多く、最悪命を絶ってしまうのは胸が痛みます。学校や職場なら行かなければ逃げられるけれど、ネットでは全世界から責められている脅迫感があるから怖いですね。知らないうちに、素性の怪しげな人から、おかしな思想を吹き込まれてしまうのがネット。電子書籍は駄目、紙の本がベストで神聖視できた教育のテリトリーがネットにも広がってしまうことで、壊れていく価値観、失われていく倫理は多いのでしょう。


★新型コロナウイルス感染症関連の記事一覧★
2020年初春に発生した新型コロナウイルス感染症に関する記事のまとめです。今回のコロナ騒動は、医療崩壊の危機や労務管理の諸問題を含め、実にわたしたちの暮らしを根本から覆すような課題を提示してくれました。


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