陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

職場で濡れ衣を着せられた話

2024-07-10 | 仕事・雇用・会社・労働衛生

NHKの朝ドラ「虎に翼」を興味深く視聴しています。
日本初の女性弁護士かつ裁判所所長をつとめた三淵嘉子をモデルとした、伊藤沙莉主演ドラマ。この主役の猪爪寅子(いのつめともこ)の父である銀行の経理課長が、身に覚えのない贈賄罪に問われ、裁判にかけられる、というのが今週のストーリー。

猪爪父は検察官のパワハラめいた尋問にあい、自白を強要されていました。
戦前には予審制度があり、自白をしてしまうと正式な判決で覆すのはほぼ不可能。しかし、主人公や家族は父を救いたさに奔走し、学友たちや大学教授ら、弁護人も協力し、父親が無罪であることの証拠集めを地道にしていきます。そして、猪爪父は身の潔白を申し立て、そこで裁判官の下した判決は…――――。

この猪爪父のように、皆さんも、学校や職場で濡れ衣を着せられたことがありますか?
私はあります。今回はそのときの体験談をややぼかしてお伝えします。

あるとき、短期の派遣契約で二回ほど、とある給付金の受付事務のお仕事をいただきました。
一回目はチーム制で、書類受付の業務。現場の女性リーダーBに気に入られた若い女の子Aさんの見逃したミスが私の責任になりシフトを減らされました。ただし、Aさんはじめチーム内のみんなと私は仲が良かったので、とくに揉め事はなく。むしろ、派遣元からはチームのまとめ役として貢献したと褒められたのです。身びいきをする女性リーダーBはみんなに嫌われていました。

二回目は、三人ほどの交代制で電話受付の業務。
入力した個人情報がまちがっていた、別のひとに紐づけていた、というもの。私が呼び出され懲戒処分ですぐ契約解除という流れに。ところが、その事件の起こった日は私が体調悪くてたまたま欠勤した日。私は日々の業務を事細かに記録していて、ログイン情報も確認してもらったところ、その該当の一件は別の人が担当だったことが判明しました。派遣先が派遣社員を1人切りたいので、私に白羽の矢をたてた、というわけです。他の同僚も、LINEの交換や飲み会を断った私に腹が立って、自分のミスを私におしつけたのです。この同僚には過去の仕事で仲良くなった友人もいましたが、縁を切りました。

この私の冤罪の主張は派遣元に認められ、派遣会社の人事部からも直々に謝罪がきまして、契約は続行のまま数箇月間の休業補償をもらえることに。
私はそのあいだに、就職活動をおこない、みごとに正社員で念願だった経理総務事務職にありつくことができました。

この一件のみならず、ほかの職場であっても、私がやっていないミスを責任転嫁されたことはいくどかあります。
たいがい、私が交流行事を断ったり、目上の人に気に入られ過ぎていたりする場合なのです。私自身は他の同僚の悪口を吹聴したりもせず、あいさつも欠かさず、適度に休憩室での談話には応じたり気を遣っていたのですが。こうした理不尽はもちろん派遣で働き方が多かったのですが、直接雇用でもよくありました。

私自身、仕事を完璧にこなせているかといえば、そうでもない。
簡単なミスはしますけれども、都度謝ってはいますし、とくに顧客との取引に関わる失態はかならず上長に報告しています。ミスを他人に押し付けている人は、やはり、その職場でキャリアが長く、組織内で意見が通りやすいポジションの方が多いですね。中年期になると再就職もしづらい。保身に走らないと職を失う怖さがあるからでしょう。

近年、若い働き手不足のために新卒者の初任給を大幅に増やす傾向があります。
非正規雇用であっても、物価高を反映して最低賃金があがっていますので、中途採用者でも月給がよかったりもします。
となると不満が募るのは、中小企業で長年身を粉にしながら働いているのにほとんど昇級しないベテラン勢。指導放棄をしたり、誤った指示や責任転嫁で、新人さんが不本意に怒鳴られたり、悲しい目に遭ったりするのではないか。人間だから、こうしたあてこすりはあるものです。許してはいけないのだけども。

対策としては、業務の記録をつけて持ち歩くことですね。
これはサービス残業の証拠にもなります。パワハラ言動があれば、日時と場所、そのときの立会人を詳細に書きしるしておきましょう。人事部に相談窓口があればよいのですが、小さな会社ではないことが多いです。各都道府県ごとの労働局には労働相談コーナーがありますので、そちらにコンタクトをとりましょう。パワハラの認定は難しいようですが、心身に支障をきたした場合ははやめに病院にいきましょう。

職場で責任転嫁されやすい人は、正しさを主張しすぎるきらいがあり、孤立しやすいともいえます。理屈っぽい私も人間関係の輪よりも、論理を重んじてしまう方です。私のような我が道をゆくタイプはほんらいは組織勤めになじまないのでしょう。

冒頭に紹介したドラマでは、ヒロインの父の無罪は認められます。
なにより、こころ温まるのは、世間からの風当たりの強さにめげずに、彼の家族や知人すべてが見限らずに潔白を信じ続けたことです。それにしても、あの日和田という検察官、ひどいですよね。裁判中も音をたてて威圧して、罪を是認させようとしていた。厚労省の女性キャリアが冤罪に陥れられた件を想起させます。私も職場で似たようなことがありましたので、義憤に駆られます。


(2024.05.02)







この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 映画「ゼロ時間の謎」 | TOP | いにしえのアニオタはビデオ... »
最新の画像もっと見る

Recent Entries | 仕事・雇用・会社・労働衛生