全体についての説明と、登場人物名の史実との対応一覧は、
「序段」ページにありますよ。
桃井若狭助館 もののい わかさのすけ やかた
「松切りの場」と呼ばれます。
現行上演めったに出ません。通し上演のときでもこの二段目はカットです。出せよ、討ち入りなんか出すヒマあったらさあ。
ていうか、歌舞伎と違ってノーカットが売り物のはずの文楽の通し上演ですら、前半カットしてました。
マジですか、出そうよ。
一応ノーカットで書きます。でないと意味通らないですよ。
桃井 若狭助(もものい わかさのすけ)というのは、序段で高 師直(こうの もろのう、史実だと吉良上野介にあたります)に苛められた人です。
まだ若い、正義感の強い直情型のキャラクターとして描かれます。
そのひとのお屋敷です。
下男たちが庭の掃除をしながら、ご主人様が師直に苛められたというウワサ話をしています。
これは文楽の時代物作品の、定番の状況説明テクニックです。
女性がふたり出てきます。
家老の加古川本蔵(かこがわ ほんぞう、史実だと梶川殿にあたる役です)の、奥さんの戸無瀬(となせ)さんとお嬢さんの小浪(こなみ)ちゃんです。
家老の妻と娘なので、主君のお屋敷の手伝いにきています。正確には奥様が病弱なのでお見舞いです。
下男たちを追い散らしたふたりですが、やはりウワサ話が気になっています。
奥様が病弱なので心配かけてはいけないし、困っています。
ここで家老の加古川本蔵(かこがわ ほんぞう)が登場します。
チナミにこの段の主人公はこのかたです。
妻と娘を叱ります。そんなウワサ信じてないで奥様のめんどうを見なさい。
本蔵は一度退場します。
ところで、前半すーっと加古川本蔵さんの一家しか出てこないのでうっかり勘違いしそうになりますが、
ここは加古川さんの家ではなく、
主君の桃井さんのお屋敷です。加古川一家は仕事やお手伝いに来ているだけです。
ここで塩治判官(えんや はんがん、浅野内匠守にあたります)の家から使者がやって来ます。
桃井さんと塩治さんは、都から来た足利義直の饗応をする係なのです。
なのでその打合わせにやってきたのです。
来たのは塩治判官の家老、大星由良之助(大石蔵之助だ)の息子の大星力弥(おおぼし りきや)くんです。
美青年ですよ。
実は、この力也くんと小浪ちゃんとは許嫁(いいなずけ)なのです。
昔ですから家が決めた縁談なのですが、美男美女で性格もいいふたりなので、すでにお互い愛し合っていますよ。
というわけで、恋しい力也くんがやってきたので小浪ちゃんはうきうき。
お母さんの戸無瀬さんが、気を利かせて小浪ちゃんに使者の応対をさせ、ふたりっきりにして自分は退場します。
ところで、
ここでの小波ちゃんのセリフですが、
「(使者の口上を)お前の口から私の口へ直に(言ってください)」
って、ナマナマしい。
浄瑠璃のこういうきわどいセリフというのは、本当に「ここまで言うか」ってかんじですよ。
使者の用事は明日の登城の時間がどうこうという細かい事です、ストーリーには大きく関係ありません。
ここは小浪ちゃんと力弥くんの関係を見せるだけの場面です。
力弥くん退場します。
と、現行上演ここまで全部カット。どうよ。
ここが出ると、後半の「山科閑居」でのふたりの気持ちがよくわかるのですが、
時間の制約があるとはいえもったいないことです。
まあ出しても、後半に行き着くころにはこの場面は忘れてしまうかもしれないですが。
さて後半です。
小波ちゃんも退場し、家老の加古川本蔵さんがまた登場します。
ご主人の桃井さまが、イジワルな師直とモメているらしい。困ったものだ。
ご主人はもともと短気な性格、大事にならなければいいが、と、気を揉む本蔵です。
ここで主人の桃井若狭介さんが出てきます。
本蔵を呼んで心の中を語りますよ。
つまり、
「師直に苛められた、くやしい。
ていうかあんなの生かしておいては世の中のためにならないし。
明日会ったら斬ってやる」
とそんな内容です。やっぱりか。
異見しても聞かないに決まっているので、本蔵はその場では賛成します。
このとき庭の松の枝を切って「このようにすっぱり斬れ」というようなことを言う場面があるので、
二段目は「松切りの場」と呼ばれるのです。
本蔵に賛成してもらって安心した桃井くんは、明日に備えて寝ます。
「枕時計は自分が仕掛けておく(から早く寝るといいでしょう)」という本蔵のセリフがあります。
当時すでに目覚まし機能のある時計があったようです。正確な仕掛けはわかりません(余談)。
さて、主君を寝かせた本蔵は大急ぎで馬を準備させます。急なお出かけです。
夜も遅いのに、しかもこっそりどこに行くのか、というのが次の段への前フリになります。
二人の話を聞いていた妻と娘が心配して本蔵を引き留めますが、本蔵、ふたりを蹴散らして走り去ります。
本蔵が何をしようとしていたかというと、
急いでいろいろ豪華な品物を準備して、
翌朝、主君の若狭之介より早く登城して、それを師直に賄賂として渡すのです。
師直の機嫌はなおり、若狭之介へのイジメもやみます。
というオトナの対応です。
というわけで、
歌舞伎だとこの段全部カットです。
…いいんですけどね。
=三段目に=
=全段もくじ=
=50音索引に戻る=
「序段」ページにありますよ。
桃井若狭助館 もののい わかさのすけ やかた
「松切りの場」と呼ばれます。
現行上演めったに出ません。通し上演のときでもこの二段目はカットです。出せよ、討ち入りなんか出すヒマあったらさあ。
ていうか、歌舞伎と違ってノーカットが売り物のはずの文楽の通し上演ですら、前半カットしてました。
マジですか、出そうよ。
一応ノーカットで書きます。でないと意味通らないですよ。
桃井 若狭助(もものい わかさのすけ)というのは、序段で高 師直(こうの もろのう、史実だと吉良上野介にあたります)に苛められた人です。
まだ若い、正義感の強い直情型のキャラクターとして描かれます。
そのひとのお屋敷です。
下男たちが庭の掃除をしながら、ご主人様が師直に苛められたというウワサ話をしています。
これは文楽の時代物作品の、定番の状況説明テクニックです。
女性がふたり出てきます。
家老の加古川本蔵(かこがわ ほんぞう、史実だと梶川殿にあたる役です)の、奥さんの戸無瀬(となせ)さんとお嬢さんの小浪(こなみ)ちゃんです。
家老の妻と娘なので、主君のお屋敷の手伝いにきています。正確には奥様が病弱なのでお見舞いです。
下男たちを追い散らしたふたりですが、やはりウワサ話が気になっています。
奥様が病弱なので心配かけてはいけないし、困っています。
ここで家老の加古川本蔵(かこがわ ほんぞう)が登場します。
チナミにこの段の主人公はこのかたです。
妻と娘を叱ります。そんなウワサ信じてないで奥様のめんどうを見なさい。
本蔵は一度退場します。
ところで、前半すーっと加古川本蔵さんの一家しか出てこないのでうっかり勘違いしそうになりますが、
ここは加古川さんの家ではなく、
主君の桃井さんのお屋敷です。加古川一家は仕事やお手伝いに来ているだけです。
ここで塩治判官(えんや はんがん、浅野内匠守にあたります)の家から使者がやって来ます。
桃井さんと塩治さんは、都から来た足利義直の饗応をする係なのです。
なのでその打合わせにやってきたのです。
来たのは塩治判官の家老、大星由良之助(大石蔵之助だ)の息子の大星力弥(おおぼし りきや)くんです。
美青年ですよ。
実は、この力也くんと小浪ちゃんとは許嫁(いいなずけ)なのです。
昔ですから家が決めた縁談なのですが、美男美女で性格もいいふたりなので、すでにお互い愛し合っていますよ。
というわけで、恋しい力也くんがやってきたので小浪ちゃんはうきうき。
お母さんの戸無瀬さんが、気を利かせて小浪ちゃんに使者の応対をさせ、ふたりっきりにして自分は退場します。
ところで、
ここでの小波ちゃんのセリフですが、
「(使者の口上を)お前の口から私の口へ直に(言ってください)」
って、ナマナマしい。
浄瑠璃のこういうきわどいセリフというのは、本当に「ここまで言うか」ってかんじですよ。
使者の用事は明日の登城の時間がどうこうという細かい事です、ストーリーには大きく関係ありません。
ここは小浪ちゃんと力弥くんの関係を見せるだけの場面です。
力弥くん退場します。
と、現行上演ここまで全部カット。どうよ。
ここが出ると、後半の「山科閑居」でのふたりの気持ちがよくわかるのですが、
時間の制約があるとはいえもったいないことです。
まあ出しても、後半に行き着くころにはこの場面は忘れてしまうかもしれないですが。
さて後半です。
小波ちゃんも退場し、家老の加古川本蔵さんがまた登場します。
ご主人の桃井さまが、イジワルな師直とモメているらしい。困ったものだ。
ご主人はもともと短気な性格、大事にならなければいいが、と、気を揉む本蔵です。
ここで主人の桃井若狭介さんが出てきます。
本蔵を呼んで心の中を語りますよ。
つまり、
「師直に苛められた、くやしい。
ていうかあんなの生かしておいては世の中のためにならないし。
明日会ったら斬ってやる」
とそんな内容です。やっぱりか。
異見しても聞かないに決まっているので、本蔵はその場では賛成します。
このとき庭の松の枝を切って「このようにすっぱり斬れ」というようなことを言う場面があるので、
二段目は「松切りの場」と呼ばれるのです。
本蔵に賛成してもらって安心した桃井くんは、明日に備えて寝ます。
「枕時計は自分が仕掛けておく(から早く寝るといいでしょう)」という本蔵のセリフがあります。
当時すでに目覚まし機能のある時計があったようです。正確な仕掛けはわかりません(余談)。
さて、主君を寝かせた本蔵は大急ぎで馬を準備させます。急なお出かけです。
夜も遅いのに、しかもこっそりどこに行くのか、というのが次の段への前フリになります。
二人の話を聞いていた妻と娘が心配して本蔵を引き留めますが、本蔵、ふたりを蹴散らして走り去ります。
本蔵が何をしようとしていたかというと、
急いでいろいろ豪華な品物を準備して、
翌朝、主君の若狭之介より早く登城して、それを師直に賄賂として渡すのです。
師直の機嫌はなおり、若狭之介へのイジメもやみます。
というオトナの対応です。
というわけで、
歌舞伎だとこの段全部カットです。
…いいんですけどね。
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