ロンドンの廚(くりや)

ロンドンに住むフードライター Yasukoの「廚(くりや=台所)事情」ブログです。

西洋の「主食」はパンではないのです。

2010-08-11 | ここまでちがう!日英のごはん事情
やっとこの話を書くチャンスがめぐってきました。

日本では「主食」はお米。
お肉や野菜やお魚はどんなに量が多くても「副食」ですよね。

私たちは「きょうは、何でごはん食べる?」と言います。
レストランで、ステーキやハンバーグを頼むと「ライスとパンのどちらをおつけしますか?」と聞かれます。

また、「ごはん」とは、炊いたお米のことであり、また「食事」そのものも意味します。

すべてはごはん、またはその代替えとしての麺やパン、つまり炭水化物が「主役」なのですよね。

と、しつこくシツコク確認したところで、西洋の食事をみてみましょう。

「西洋では、ごはんのかわりにパンが主食なのよ」
「北欧はお芋でしょう?」

いいえ。

西洋の食事の主役は、基本的に「肉」=タンパク質なのです。
パンやパスタなどの炭水化物は、ステーキに添える茹でたにんじんのように「脇役」でしかありません。




イギリスでレストランに入ってみましょう。

オーダーがすむと、まずパンが前菜の前に出されます。
日本人は「あら、パンが先に来ちゃったわ」
と思って、食べずにキープしようとします。

前菜を食べ終わると、手をつけていないパンは下げられてしまいます!

「なんだ、あのパンは前菜と一緒にいただくためだったのね。新しいパンを持って来てくれるのだわきっと」

待つ事しばし、メインコースが供されました。
ふっくらとした牛フィレ肉のステーキに、野菜のソテーが添えられて。

でも、パン...ちっとも出てくる気配がありません。

必死に視線を送ってもこちらを向いてくれないウェイター。
料理はどんどん冷めていく...
ちょっとお兄さん、じゃない、エクスキューズ・ミー!

「あの、パンは...?」

そう聞かれて不思議な顔をするウェイターさんは、日本人客を相手にしたことがない人です。
やれやれ、またかという態度で「パン、ですかあ?」と言いながらも持って来てくれるのは、日本人客を知っている人です。

私の友人は、ジャガイモがつけ合わされているのを見て、それが「主食」だと解釈し、
「ポテト足りないよこれじゃ。おかわり!」
と要求しました。

ヨーロッパでは「主食と副食」という考え方がないんですよ、とお話しするとたいがい驚かれてしまいます。

そして、こちらのレストランのウェイターさんからは逆に、
「なぜ日本人のお客さまは、メインコースと一緒にパンやライスを欲しがるんですか?量が足りないんでしょうか」
と聞かれた事もあります。

日本やアジアの国では、ごはんなどの炭水化物がどんな場合でも「主食=メイン」なのです、おかずは牛フィレだろうと野菜の煮物だろうと、ごはんを食べるためにあるのです、と主食と副食のことを説明するとあちらもびっくり仰天。

あるイギリス人フードライターに「それはきっと、日本がとても貧しくて、庶民には肉が食べられなかった昔に根付いた食習慣なんでしょうねえ」と見下したようにに言われたこともあります。

このすごい解釈は、ヨーロッパでは野菜は貧しい人の食べ物だった、という位置づけから出たみたいです。
どう説明しても、野菜(お米も麦もイモもすべて彼らに取っては「野菜」なのです)を重要視するという食文化は、貧しさから起こったものではないということを理解してもらえませんでした。

あまりに違う二つの食文化世界。
これを理解するにはまず、ヨーロッパが狩猟文化であったことを思いださないといけません。
そして、この「主食」と「おかず」の観念を持っているのは、私たち日本を含む農耕文化の国なのです。

つづきは、また。


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