ロンドンの廚(くりや)

ロンドンに住むフードライター Yasukoの「廚(くりや=台所)事情」ブログです。

ロウランドのウィスキーを訪ねて(スコットランド取材1)

2009-08-26 | お仕事
たまに、寝酒としてストレートでいただくくらいだったスコッチ・ウィスキー。
今回の蒸留所取材ですっかり、好きになってしまいました。
訪れたのは、グラスゴー郊外にある「Auchentoshan オーヘントッシャン」。

スコットランドの南側で作られるウィスキーはlow land ロウランドもの、北側はhigh land ハイランドものと呼ばれ、どちらかといえば、ハイランドのスコッチのほうが日本では知られているかもしれませんね。
でも、このオーヘントッシャンはロウランドを代表する名門で、ここのシングルモルトは日本でもスコッチ通の方なら絶対ご存知とか。現在は、サントリーの所有になっています。



元気のよいグラスゴーなまりの若所長に出迎えられてまず、1823年に始まったという歴史を聞きながらテイスティング。
古いボトルから注がれたグラスをなめてびっくり!

この、絹のようにスムーズなのどごしはなに!?
これって、ウィスキー?

今まで自分が持っていたイメージが吹き飛びました。
感激しながら味わっていると、所長さんいわく
「これは、一度も市場に出されなかった40ウン年物です。なぜなら、この年にものすごい悲劇があったからです。いったい、何でしょう」

天災?事故?見当もつかず、答えを伺うと...

「スコットランドが、宿敵イングランドにサッカーで惨敗した年 (61年)なのです、あああ!!(頭を抱えて泣き崩れる)」

...なかなか、面白い所長さんです。

とにかく、とんでもない年代物から味見させていただき、興味津々で中を案内していただきました。
その過程過程でティスティング。
オランダやベルギーなどの白ビール(濁りビール)にそっくりな味のモルト原液は、ほんとに「麦のジュース」そのものな感じ。

それを、ハイランドでは2回蒸留するところを、ロウランドでは3回するのが特徴なのだそうです。
その結果、特有のスモーキーな香りが薄らぎ、さらさらののどごしと淡い色のスコッチができます。

そして、赤ワインやポート酒、バーボンなどが入っていた樽に寝かされ、それぞれのフレーバーを得て熟成するのです。
まったく同じ日にできたスコッチでも、寝かせる樽毎にかなり違う味になって生まれるそうで、とても神秘的でした。



スコッチのスモーキーな香りは、通の方にとってはたまらない魅力でしょうが、ちょっと苦手でした。
しかし、オーハントッシャンのシングルモルトは、気品のある水、という感じ。
舌にあたった時のアルコールの刺激、口の中に含めば体中にふうわりと広がる香り、すべてがスムーズで快感。

これはもう、やみつきになりそうです。
しっかり、家へ一本持ち帰り、受売りの「ウィスキーうんちく」を家族に披露したのでした!