ロンドンの廚(くりや)

ロンドンに住むフードライター Yasukoの「廚(くりや=台所)事情」ブログです。

ロンドンのここでしか買えないアロマ:ミシェリーン・アーシエー

2008-07-28 | UK-Japan 2008
今どき支店も出さず、デパートなどでの販売も拒み、ただ一筋に手作りの商品を提供し続ける、という頑固なお店はめずらしくなりました。

先週訪ねた「Micheline Arcier ミシェリーン・アーシエー」は、そんなお店。
アンティークのフレンチ家具がとても可愛いインテリアです。

ここで売られているアロマオイルやアロアセラピー用品は、創設者でフランス人アロマセラピストだった、アーシエーさんのレシピに忠実に作られているそう。

フランスやイギリスでは、ホメオパシー、アロマテラピなど現代西洋医学とは流れを別にする代替医療が昔から盛んでした。アーシエーさんは、医学博士と組んで、西洋医学の手が及ばない症状にアロマが効くかどうか徹底的に研究、実験を重ねてその効果を確信し、独自のオイル調合に至ったそうです。しかし、完璧主義者なため、工場での量産などぜったいに受け入れませんでした。小さな商売のままでい続ける事を、後継者の娘さんにもしっかり言い含めてこの世を去ったとか。
ここで売られているアロマオイルは、今もすべてこの娘さんの手による調合なのだそうです。

利潤を追う事だけがもてはやされる時代にあって、なんという心意気。
専属アロマセラピストのジュリさんにお話を聞きながら、すがすがしい気分になりました!

王室御用達のサインが、誇らしげにドアに掲げられていますが、この御用達の認証というのも、数年ごとに厳しい審査をクリアしなくてはならず、いちど御用達になったからといって安心などできないのです。そのタイトルをもう10年以上も保持しているのも、ここの製品の質の高さのあらわれでしょう。

ハロッズなど有名デパートがならぶ地域、ナイツブリッジにあるこの小さなお店。
うっかりすると通り過ぎてしまいそうです。(マップ)

ベルを鳴らしてドアを開けてもらうと、ラヴェンダーの香りにふわーっと包まれ
、外の喧噪がうそのようにリラックスできます。旅行者にも利用しやすいエステルームも地下にあり、フェイシャルからボディまでさまざまなトリートメントを受けることもできます。

かわいい薄荷色の袋に入れてくれるバスオイルセットは、今度里帰りするとき、大事な友達へのおみやげにしようと思っています。

お店のHP

「フェアリーズ」Faeries: Royal Opera Houseにて

2008-07-20 | UK-Japan 2008
6歳の娘につられて、不思議なバレエ+人形劇を見てきました。

タイトルは「フェアリーズ」。人魚だの妖精だのお姫様だのが大好きな年頃の娘は、きっと、虹色の舞台で美しい衣装を着たバレリーナ達が舞い踊るのを期待していたと思います。ところが、これは第2次世界大戦のころのロンドンと田舎を舞台にした、かなり暗いおとぎ話でした。にもかかわらず、怖いのは大嫌いな娘が、最後まで憑かれたように舞台を見つめ、笑ったり、恐怖に思わず耳を塞いだりしてすっかり魅了されていました。

舞台は、ロンドンの王立オペラ劇場の最上階、屋根裏のような所にあるクロア・スタジオという小さなホールです。
小さいとは言えここもロイヤル・オペラ・ハウス。粒ぞろいのパフォーマンスばかりが上演されるプレスティージャスなステージです。

昨日のプロダクションも、ほんとうにトップクラスのダンサーの信じられないような表現力と、可愛いとはお世辞にも言えないけれど妖しい魅力を讃えた妖精、憎めない妖怪達がとても印象的でした。特に、妖精といっしょに森で暮らすトンボかハチのような生き物が出てくるシーン。懐中電灯に羽がくっついたような「虫」を、ダンサー達が手につけて操るのですが、トンボの動きばかりでなく、操者そのものの動きも、つま先でホバリングしたと思うと、目にも留まらぬ早さで横にシュッと移動したりと、あまりに羽虫らしくて目が釘付けになってしまいました。

振り付けと監督は、熊川哲也さん主宰の Kバレエカンパニーにも作品を提供した事のある、ウィル・タケット。自身が有名なバレエダンサーながら、枠にはまらない独特の劇をたくさん作ってきた人。ちょっとだけ不満だったのは、背景音楽はとても美しいのだけど、常に音が鳴り続けていてうるさかったことかな。静寂という最高のサウンドトラックを活かしていないのが残念でしたが、子供も喜んだし、いい気分で劇場を後にしました。

ところが....帰路で、ロンドンの地下鉄につきものの「信号故障」で、蒸し暑い車内に缶詰に。普通なら30分で帰れるところが1時間以上かかり、へとへとに疲れました....。

Claire Sproule - UK-Japan 2008 イチ押し。

2008-07-14 | UK-Japan 2008
UK-Japan 2008のキャンペーンでは、まだ日本に全く紹介されていない「注目の新人アーティスト達」を紹介する、と言う心憎い事をやっています。yasukoはひさびさに、音楽聞きっぱなしの午後を過ごしましたー。

ダントツに気に入ったのが、クレア・スプロウル Claire Sprouleです。アコースティックなのにファンキーなサウンド+しみじみとしてはいるけれど、湿っぽくはない歌声、というコンビネーションが絶妙!

好きなアーティストはジョ二・ミッチェル、エルビス・コステロ、トム・ウェイツ、エラ・フィッツエラルド、ランディ・ニューマン...と聞けば、このコンビは納得です。yasukoも大好きな面々ばかり。ユニバーサルで渋ごのみなんだわー。

yasukoはすっかりなごんでしまい、聞きながらどんどんソファの背もたれに沈んでいきました。

北アイルランドのドゥネガル出身のクレアは、すでにアル・グリーンやDr. ジョンなど、ファンキー/ブルーズ系の重鎮と共演を果たし、UKでのファンベースもどんどん厚くなっているようです。

日本でまずブレークして、世界のスーパースターの座に昇ったUKアーティスト/バンドと言えば、クィーン、デュラン・デュラン、ジャパンなんかがいますが、彼女は、スーパースターやセレブになる夢などを見ているのではなく、アーティストとしてしっかり地に足の着いた活動をしたい、もっとたくさんの人に自分の音楽を聞いてほしいとがんばっているそう。これにも好感度ばっちり。ぜひ、日本から大応援をしてあげようではありませんか。

蒸し暑くて、何をしてもいらいらする時....聞いてください、クレアの涼しくファンキーな声を。

クレア・スプロール Clair Sproul

「F」

シフォンケーキ悲話

2008-07-09 | 料理本・撮影秘話
"Fresh Japanese"という本を、今年の1月に上梓しました。
ヘルシーと世界中で評判の日本料理の中でも、とりわけカロリーと栄養に注意したレシピを集めたものです。
発芽玄米、黒ごまアイス、どれも欧州に初めて紹介したものばかりです。
日本は、健康とグルメへの志向がみごとに一致している数少ない国ですが、そのことも序章で伝えています。

本に掲載されている料理の写真は全部自分で作り、飾りつけもしました。
自分でレシピを書く所から撮影まで全部やるのは、これで4-5回目。
撮影は緊張もするけど、本の制作のプロセスで一番楽しい部分です。普通は丸一日で4レシピ撮影できればいい所なのですが、今回の出版社さんは経費削減!ということで、一日7つも作ることになってしまい、汗かき通しでした。

本を一つ作るたびにいつも、味覚から盛りつけ感覚まで欧米人と日本人の違いが浮き彫りになり、面白いエピソードが残ります。

今回の発見は、抹茶シフォンケーキ。

撮影スタジオで、自分でも満足なふわふわの焼き上がりによしよしと思っていたのです。
...でも、デザイナーとエディターの反応は妙に静か。
そして、撮影後のお味見会になったら、スタッフ一同口を揃えて、「アワみたい」「食べた気がしない」ですと。

えーっ、口の中で溶ける感覚がよくないですか?
「だから満服感がない」
...でも、スフレは好きですよねみなさん。
「あれはセイボリー(しょっぱい食物)だからいいんだ」
......でもでも、メレンゲは泡のお菓子でしょう?
「あれはイギリスのお菓子じゃない」

結局、傑作シフォンケーキの写真は「ドライに見える」と、使ってもらえませんでした。

イギリス人に取って「ケーキ」と言えば死ぬほど甘いフルーツケーキやパイやなどで、パイ皮もフランス式のさくさくタイプはだめ、噛むとギシギシ言うような(笑)どっしりタイプがお気に入り。

食べる時には、シングル・クリームと言う脂肪分がやや低い生クリームを、絶対に泡立てずそのまま、どばっとかけていただきます。「名パティシェの作る凝った美しいケーキ」は、イギリスではほんとに受けませーん。

こんな食文化に、すっきりさっぱりの日本料理を受け入れてもらうにはいろんな工夫が必要ですが、それも楽しみのうちです!

フレッシュ・ジャパニーズ(英語)好評発売中....

UK-Japan 2008を盛り上げよう。

2008-07-04 | UK-Japan 2008
UK-Japan 2008は、芸術、科学技術、クリエイティブ産業の3分野にわたって、英国の「いま」を日本に紹介し、日本とイギリスの相互コラボを促したり、交流を深めようというキャンペーンです。年末まで、いろいろなイベントが日本で行われます。

yasukoはここの公認ブロガーになりました!

なんで今年こういうことが行われているかと言うと、まず今年は日英修好通商条約調印150周年、という記念すべき年なんですね。イギリスと、まだ鎖国時代だった日本は、実は1857年からおつきあいを始めていたのです。

だいたい、日本はとイギリスの縁は深いんです。
スコットランド人のトーマス・グラバーさんが、若い藩士たちをこっそりイギリスへ渡航させたのは有名ですね。たしか日本で映画になったのではなかったでしょうか。その中には伊藤博文など、のちに日本に戻り現代日本の礎を敷いたエラい人がたくさん、います。

スコットランドの都市グラスゴーに取材に行くと、今でも「あんたは日本人かい。昔、刀をさしたサムライがこの道を歩いていて、通行人を驚かせたそうだ」という話を聞かされる事がよくあります。密航組は、かたくなに洋装を拒んだ人と、率先して燕尾服に手を通し社交ダンスを習ったという人とに分れていたようですが、それぞれの感性で受け取った英国文化を、日本に伝えてくれたんですね。

それから150年、日本はG8のホスト国を務める先進国となりました。イギリスは伝統を越えてイノベーション、クリエィティブ産業がものすごく盛んな国。バイオなどの科学もすごいです。なにせ、ケンブリッジ、オクスフォード、インペリアルカレッジ、UCLなど世界でも最高クラスの大学はあるし、そこに世界中から優秀な頭脳が集まってとんでもないパワーを形成してますからねー。

日英関係の歴史は、掘れば掘るほど面白いです。また書きますが、その間に日本で繰り広げられるさまざまなイベント、どうかお見逃しなく!!

yasukoもノーベル賞受賞者ハロルド・クロトー卿の講演なんて、絶対聞いてみたいです。好きなイギリス映画も上映されたりするので、そんなこんなもまた。

UK-Japan 2008 公式サイト

驚きのエコレストラン。

2008-07-02 | お店
ここまで徹底して環境に優しくしちゃうひともいるんですね....。

というのが、先週取材したロンドンのレストラン「エイコーン・ハウス」のオーナーシェフ、アンソニー・ポッツ=ドーソンさん。



2メートル近い長身に人懐っこい笑顔のイケメン、テレビでもお馴染みのセレブシェフなんです。
日本でもよく知られている、ジェイミー・オリバーとは、リバーカフェで一緒に働いた仲で、彼の最初のレストラン「15」のヘッドシェフも務めました。

一見、お洒落なカフェのよう。しかし、実はここは、環境への負担を出来るだけ減らそうと言う、半端じゃない努力が結実したエコハウスなのであります。

床と調理台はリサイクルされたプラスティック、家具にはサステナブルな木材が使われ、照明は風力発電。
イギリスのレストランでは、日本のように「お冷や」がタダで出されることはなく、有料のミネラルウォーターを頼むことになりますが、ここでは、再使用可能な特製ガラスボトルで、自然な方法で不純物を取除いた水道水を無料で提供してます。

そして、肝心の料理と言えば、「産地産消」を可能な限り貫き、しかもグルメでヘルシーなメニューが並ぶんです。
出来るだけ国産の有機栽培食材をつかって公害、食害を減らすのに貢献。
だから、「カリフォルニア産のオレンジジュース」など、遠距離輸入を伴う素材の使われるメニューはいっさいありません。コーラもないよ。

キッチンを覗けば、ここでも徹底してゴミの量を減らす努力がなされ、生ゴミのうち青果物はすべて温風で顆粒状に乾燥させてから土に戻しているそうです。だから、普通のレストランでは毎朝行われるのが当然の生ゴミ回収も、ここでは2週間に1度で十分、と言う驚きもの。

出される料理の量も、おなかの空き具合でサイズを選べるようになっており「なるべく残飯を出したくない」アーサーさんの意向が現れています。胃袋の小さい日本人にもこれはとてもうれしい。

その上「地元の若い人たちにもっとこの世界に入ってほしい」と、地域コミニュティーと連携してシェフトレーニングまでやってしまっています。ジェイミーのレストラン「15」も、学校を中退し、グレていた若者を集めて育てていますね。イギリスのレストランが近頃、外国から来たシェフやスタッフばかりに占領されているトレンドを懸念してということもあるそうです。

ほれぼれするようにかっこいいアーサーさん、セレブシェフとしてお金儲けだけ考えていてもよさそうなのに、全くその逆みたいです。老子の本を読み、中国哲学が好きというインテリな面と、ものすごーくざっくばらんで「気取ったやつはさあ、大嫌えなんだヨ、オレ」(ほんとにこういう感じの英語を話すんです、ロンドン子なのだ)と言い捨てる素顔の、取り合わせが超面白い人でした。

エイコーン・ハウス
Acorn House Restaurant

69 Swinton street
London WC1X 9NT
電話:0207 812 1842


愛の手編み本、「ペット・ヘヴン」

2008-07-01 | おすすめ本
ワタシは動物はなんでも好きだけど、とりたてて犬や猫の大ファン、というわけでもないんです。
だけど、この本はとにかく写真がかわいくて、かわいくて、かわいくて....



犬、猫、馬、ハムスター、かめ、うさぎ......
ペットのための、手編みの服や小物がたくさん載っているんです。もちろん編み方、ニットパターンもあります。
デザインの素敵なことはもちろんですが、写真のかわいさ!が普通じゃありません。

この写真を撮ったのは、ダイアナ・ミラーさん
フードフォトグラファーとしてもとっても有名な方ですが、とりわけこの写真には「愛」が溢れています。
上の名前をクリックすると、彼女のHPからこの本に掲載されている写真のページを見ることができます。

ペット達のカメラを見つめる視線をご覧下さい。信頼しきったこの表情...
かわいいだけではなく、動物達のしぐさやその作品を通して、とっても「イギリス的」な品の良さが感じられるんです。

本の名前は 「ペット・ヘヴン」Pet Heaven

実際に手に取って見てもらわないと、ほんとの良さが伝わらない!
日本でも手に入りますが、日本語版が出てなくてとっても残念です。

興味のある出版社さん、いませんか?_是非_ご連絡下さい!
交渉から翻訳まで、お力になりたいですっ(リキんでいる)