いよいよ第三部の始まりです。新たに加わる艦は…
オーストラリア東部ブリスベン沖、南太平洋の暑い日差しが照り付けるこの海では現在南太平洋艦隊第一訓練艦隊が進出し訓練を行っていた。
「進路そのまま、機体回収用意。」
双眼鏡を構えた艦長兼艦隊司令官ノーマン・F・キンケイド大佐は左舷からこちらへ接近してくるヘリコプター編隊を見つつ指示を出していた。齢58歳になる退役前の身であった。
「進路クリア、ようそろー。」
航海長の声が艦橋に響く。この言葉を何回言って何回聞かされていたのかキンケイド大佐はふと思った。彼が乗っているのは航空戦艦「ノースカロライナ」。元々は「ミズーリ」よりも古株の1941年製アメリカ海軍の戦艦「ノースカロライナ」である。完成当初は40・6センチ45口径砲を三連装九門を搭載し、速度も最速クラスの28ノット(時速約53キロ)を誇るアメリカ史上最大にして最強の戦艦であった。統合戦争中に補助艦艇として博物館から最就役して現在は訓練艦として乗組員の習熟訓練や映画撮影などに使われている。
「後部飛行甲板、着艦準備完了!!」
なお、「ノースカロライナ」は再就役の際に前線における航空機の補給目的の為に後部砲塔と後艦橋の一部を撤去、航空戦艦へと改造された。もっとも地下ドックにて改造中に統合戦争は終わり、地下で封印されていた。そのため星間戦争に生き残れたのであった。戦時にはヘリコプターを搭載したり、バルキリーへの洋上補給基地としての役割を担うことになる。
「ようし、収容後再訓練だ。今度のプログラムは艦隊奇襲とその迎撃だ。」
「キンケイド司令、南太平洋艦隊司令部より通信です。」
通信オペレーターの報告にキンケイド大佐は怪訝な表情を見せる。
「はて?何用かな?」
彼はオペレーターから通信用インカムを渡された。
「はい、艦隊司令官キンケイド大佐であります。はい…、そうですか…、では…、はい、かしこまりました。」
間もなくインカムを外したキンケイド大佐は新たな命令を発令した。
「本艦隊は現時刻を持って訓練を中止し北上する。ポートモレスビー基地で補給を受け、シンガポールより来る日本支部特務艦隊と合流、その指揮下に入る。」
一方その頃シンガポール基地。
「沖合いに艦隊を目視で確認。巡洋艦1、駆逐艦1です。」
見張り員からの報告が「天龍」の艦橋に響いた。
「早瀬司令、やっと増援が来ましたね。」
未沙に天野純少佐(戦時特例措置のため昇進)が語りかけていた。いつも控えているスプルーアンス参謀長は基地へと出かけている。
シンガポールで共に戦った軽巡洋艦「金剛」「比叡」駆逐艦「コロラド」「リットリオ」は修理のためシンガポール基地へと残すことになった。
そのかわり正木俊介大佐の第20艦隊が指揮下に入り戦艦「ミズーリ」、航空巡洋艦「伊勢」「日向」駆逐艦「冬月」「雪風」が加わり、また東洋艦隊から応援として軽巡洋艦「エルトゥール」と駆逐艦「ロドネイ」が戦列に加わることになった。
「いよいよ出港だわ。」
そして彼女は時計を見た。現在午後3時。
「そろそろ基地からスプルーアンス参謀長が戻る頃だわ。私は出迎えに甲板まで降りるからあとお願いね。」
そう言うと彼女は第一艦橋を降りて言った。建物で言えば四階分螺旋階段を下りる。重い鉄扉がありその前に立っている歩哨役の兵士が扉を開ける。
「ありがとう。」
そう言って敬礼しながら扉を出た時だった。
「ちょいとお嬢さん。」
一瞬自分の事か分からなかったが。
「えっ!?」
と言って振り向くと今時分が通った扉の脇に一人の男性が立っていた。身長は180ほどでブラウンの髪の毛をきれいに整えている。白いジーパンに同じく白い半そで、黒い皮ベストといういでたちの端整な顔立ちの持ち主でここがどこかの街角ならほとんどの女性が振り向きかねないほどの魅力といえる。
「はじめまして、綺麗なお嬢さん。いい日和ですがあなたはまるでこの降り注ぐ暖かな陽光のように思えます。」
このような場所に似つかわしくないナンパであった。それも歯が浮くような台詞回しの。
「あなたは何ですか?ここをどこだと思っているんです?」
きつく言いたく思う未沙だったが初対面であるしここで大声を出して人に注目されるのを嫌い、できる限りやんわりと答えた。
「男女の間柄というものに場所など関係ないでしょう。それにこういう場所であるからこそ逆にこういう交流というものを大切にすべきではありませんか?」
言いながらその男は未沙へと近づいてきた。
「もしよろしければそのあたりのお話をゆっくりといかがです?ご一緒にお茶でも飲みながら。」
そしてここぞとばかりに右隣に立って左腕を未沙の肩に回しかけてきた。
「あらそうですか、でしたら丁重にご辞退させていただきます!!」
そういうと未沙はその男の左足を自身の右足の靴のかかとで思いっきり踏みつけた。
「だぁぁぁぁー!!」
しかもちょうど小指の付け根辺りに直撃を受けた為男は左足を抱えて飛び上がった。
「ふぅ、まったく何を考えているのかしら。」
その一撃で少し離れたその男を見ていた未沙の背後から声が掛けられた。
「ほう、さすがにやりますな。」
未沙はその声に聞き覚えがあった。
(えっ!?提督!?)
驚いて振り向くとそこに居たのはパイプではなく葉巻を咥えた銀髪の男性であった。左隣にはがたいのいいモヒカンの黒人男性と反対側にスプルーアンス参謀長が立っていた。
「早瀬司令、只今戻りました。ご命令にあった方をお連れ致しました。」
スプルーアンス参謀長が敬礼して報告すると葉巻の男性が携帯灰皿に葉巻を入れると敬礼して言葉を発した。
「早瀬少将ですな。自分は今回指揮下に入ることになりました統合軍特殊部隊Aチームのリーダージョン・スミス大佐です。ハンニバルとお呼びください。」
そう言って笑顔を見せたハンニバルは右手を差し出した。改めて聞いたこえはグローバル提督にそっくりであり、未沙は内心驚いていた。
「シンガポールで地上戦の指揮を執っていた方ですね。よろしくお願いします。」
二人は握手を交わした。すると今度は隣に居た黒人男性が一歩前へ進み出てきた。
「B・A・バラカス、通称コング。メカニックマンです。整備や力仕事などはお手の物です。」
少し無理矢理敬語を使っているような言い回しに少し滑稽さを感じながら未沙は彼とも握手をした。
「ところでどうやら早速私の部下がご迷惑をお掛けしたようで…」
突然ハンニバルが言った言葉に未沙は小首をかしげた。
「えっ!?どなたのことですか?」
するとハンニバルは未沙の後方を指差した。
「さっきあなたに足を踏みつけられたあの男ですよ。」
指を差した先にはばつが悪そうな顔で立ってこちらを見ているさっきの男が居た。
「いやぁ、まさか艦隊司令官殿とは思いもしませんでした。テンプルトン・ペック中尉です。愛称はフェイスマンです。」
「全くこのドジがっ!!」
「大方顔ばかり見て階級章の類を見ていなかったんだろう。まったく恥をかかせおって。」
などといいながらもハンニバルとコングは笑っていた。
「ハンニバル大佐、寄港中の今は構いませんが今後こういった行動は自粛していただきたいので部下の方にはよく言っておいてください。ここは軍艦ですので。」
静かに未沙が言うとハンニバルは頭を下げた。
「どうも失礼しました。」
そう言った時、スプルーアンス参謀長が未沙の脇へと来た。
「司令、作戦室にて今後の航海についてのブリーフィングの時間です。作戦室へおいで下さい。」
彼の進言に未沙は自身の時計を確認した。
「そうでしたね。参謀長、ハンニバル大佐、行きましょう。部下の方の部屋へはこちらから案内の者を回しますので。」
「分かりました。フェイス、コング、おとなしくしていろ。」
二人は手を上げて答えた。
「天龍」の第一艦橋下の作戦室において今後の航海についての確認が行われた。草鹿長官からの指示に従って南太平洋に向かうことになる。目的は最近頻発している真帝国によるものと思われる輸送船などの不審事故の調査であるがなぜ南太平洋なのか?それはAチームがこの艦隊に配備されたこととあわせて後に明らかとなる。この大海戦の鍵を握るある事実として…
第三部です。少しスピードアップさせないと現実の時間が追い越してしまうような危惧を抱いている今日この頃です(汗)。
またテンプレートを変えました。秋らしいものを探していたら夕焼けが目に付きましたのでこれに決定。何となく「だーれも知らない、知られちゃいけーないー」と聴こえた気がします。(分かり辛いネタですいません。)
なんだかんだでもう十月も終わりです。寒い冬が今年もいよいよ来ますので皆様風邪などにお気をつけてください。
次回は輝とロメル少尉の絡みとモンキーの登場を予定しております。
オーストラリア東部ブリスベン沖、南太平洋の暑い日差しが照り付けるこの海では現在南太平洋艦隊第一訓練艦隊が進出し訓練を行っていた。
「進路そのまま、機体回収用意。」
双眼鏡を構えた艦長兼艦隊司令官ノーマン・F・キンケイド大佐は左舷からこちらへ接近してくるヘリコプター編隊を見つつ指示を出していた。齢58歳になる退役前の身であった。
「進路クリア、ようそろー。」
航海長の声が艦橋に響く。この言葉を何回言って何回聞かされていたのかキンケイド大佐はふと思った。彼が乗っているのは航空戦艦「ノースカロライナ」。元々は「ミズーリ」よりも古株の1941年製アメリカ海軍の戦艦「ノースカロライナ」である。完成当初は40・6センチ45口径砲を三連装九門を搭載し、速度も最速クラスの28ノット(時速約53キロ)を誇るアメリカ史上最大にして最強の戦艦であった。統合戦争中に補助艦艇として博物館から最就役して現在は訓練艦として乗組員の習熟訓練や映画撮影などに使われている。
「後部飛行甲板、着艦準備完了!!」
なお、「ノースカロライナ」は再就役の際に前線における航空機の補給目的の為に後部砲塔と後艦橋の一部を撤去、航空戦艦へと改造された。もっとも地下ドックにて改造中に統合戦争は終わり、地下で封印されていた。そのため星間戦争に生き残れたのであった。戦時にはヘリコプターを搭載したり、バルキリーへの洋上補給基地としての役割を担うことになる。
「ようし、収容後再訓練だ。今度のプログラムは艦隊奇襲とその迎撃だ。」
「キンケイド司令、南太平洋艦隊司令部より通信です。」
通信オペレーターの報告にキンケイド大佐は怪訝な表情を見せる。
「はて?何用かな?」
彼はオペレーターから通信用インカムを渡された。
「はい、艦隊司令官キンケイド大佐であります。はい…、そうですか…、では…、はい、かしこまりました。」
間もなくインカムを外したキンケイド大佐は新たな命令を発令した。
「本艦隊は現時刻を持って訓練を中止し北上する。ポートモレスビー基地で補給を受け、シンガポールより来る日本支部特務艦隊と合流、その指揮下に入る。」
一方その頃シンガポール基地。
「沖合いに艦隊を目視で確認。巡洋艦1、駆逐艦1です。」
見張り員からの報告が「天龍」の艦橋に響いた。
「早瀬司令、やっと増援が来ましたね。」
未沙に天野純少佐(戦時特例措置のため昇進)が語りかけていた。いつも控えているスプルーアンス参謀長は基地へと出かけている。
シンガポールで共に戦った軽巡洋艦「金剛」「比叡」駆逐艦「コロラド」「リットリオ」は修理のためシンガポール基地へと残すことになった。
そのかわり正木俊介大佐の第20艦隊が指揮下に入り戦艦「ミズーリ」、航空巡洋艦「伊勢」「日向」駆逐艦「冬月」「雪風」が加わり、また東洋艦隊から応援として軽巡洋艦「エルトゥール」と駆逐艦「ロドネイ」が戦列に加わることになった。
「いよいよ出港だわ。」
そして彼女は時計を見た。現在午後3時。
「そろそろ基地からスプルーアンス参謀長が戻る頃だわ。私は出迎えに甲板まで降りるからあとお願いね。」
そう言うと彼女は第一艦橋を降りて言った。建物で言えば四階分螺旋階段を下りる。重い鉄扉がありその前に立っている歩哨役の兵士が扉を開ける。
「ありがとう。」
そう言って敬礼しながら扉を出た時だった。
「ちょいとお嬢さん。」
一瞬自分の事か分からなかったが。
「えっ!?」
と言って振り向くと今時分が通った扉の脇に一人の男性が立っていた。身長は180ほどでブラウンの髪の毛をきれいに整えている。白いジーパンに同じく白い半そで、黒い皮ベストといういでたちの端整な顔立ちの持ち主でここがどこかの街角ならほとんどの女性が振り向きかねないほどの魅力といえる。
「はじめまして、綺麗なお嬢さん。いい日和ですがあなたはまるでこの降り注ぐ暖かな陽光のように思えます。」
このような場所に似つかわしくないナンパであった。それも歯が浮くような台詞回しの。
「あなたは何ですか?ここをどこだと思っているんです?」
きつく言いたく思う未沙だったが初対面であるしここで大声を出して人に注目されるのを嫌い、できる限りやんわりと答えた。
「男女の間柄というものに場所など関係ないでしょう。それにこういう場所であるからこそ逆にこういう交流というものを大切にすべきではありませんか?」
言いながらその男は未沙へと近づいてきた。
「もしよろしければそのあたりのお話をゆっくりといかがです?ご一緒にお茶でも飲みながら。」
そしてここぞとばかりに右隣に立って左腕を未沙の肩に回しかけてきた。
「あらそうですか、でしたら丁重にご辞退させていただきます!!」
そういうと未沙はその男の左足を自身の右足の靴のかかとで思いっきり踏みつけた。
「だぁぁぁぁー!!」
しかもちょうど小指の付け根辺りに直撃を受けた為男は左足を抱えて飛び上がった。
「ふぅ、まったく何を考えているのかしら。」
その一撃で少し離れたその男を見ていた未沙の背後から声が掛けられた。
「ほう、さすがにやりますな。」
未沙はその声に聞き覚えがあった。
(えっ!?提督!?)
驚いて振り向くとそこに居たのはパイプではなく葉巻を咥えた銀髪の男性であった。左隣にはがたいのいいモヒカンの黒人男性と反対側にスプルーアンス参謀長が立っていた。
「早瀬司令、只今戻りました。ご命令にあった方をお連れ致しました。」
スプルーアンス参謀長が敬礼して報告すると葉巻の男性が携帯灰皿に葉巻を入れると敬礼して言葉を発した。
「早瀬少将ですな。自分は今回指揮下に入ることになりました統合軍特殊部隊Aチームのリーダージョン・スミス大佐です。ハンニバルとお呼びください。」
そう言って笑顔を見せたハンニバルは右手を差し出した。改めて聞いたこえはグローバル提督にそっくりであり、未沙は内心驚いていた。
「シンガポールで地上戦の指揮を執っていた方ですね。よろしくお願いします。」
二人は握手を交わした。すると今度は隣に居た黒人男性が一歩前へ進み出てきた。
「B・A・バラカス、通称コング。メカニックマンです。整備や力仕事などはお手の物です。」
少し無理矢理敬語を使っているような言い回しに少し滑稽さを感じながら未沙は彼とも握手をした。
「ところでどうやら早速私の部下がご迷惑をお掛けしたようで…」
突然ハンニバルが言った言葉に未沙は小首をかしげた。
「えっ!?どなたのことですか?」
するとハンニバルは未沙の後方を指差した。
「さっきあなたに足を踏みつけられたあの男ですよ。」
指を差した先にはばつが悪そうな顔で立ってこちらを見ているさっきの男が居た。
「いやぁ、まさか艦隊司令官殿とは思いもしませんでした。テンプルトン・ペック中尉です。愛称はフェイスマンです。」
「全くこのドジがっ!!」
「大方顔ばかり見て階級章の類を見ていなかったんだろう。まったく恥をかかせおって。」
などといいながらもハンニバルとコングは笑っていた。
「ハンニバル大佐、寄港中の今は構いませんが今後こういった行動は自粛していただきたいので部下の方にはよく言っておいてください。ここは軍艦ですので。」
静かに未沙が言うとハンニバルは頭を下げた。
「どうも失礼しました。」
そう言った時、スプルーアンス参謀長が未沙の脇へと来た。
「司令、作戦室にて今後の航海についてのブリーフィングの時間です。作戦室へおいで下さい。」
彼の進言に未沙は自身の時計を確認した。
「そうでしたね。参謀長、ハンニバル大佐、行きましょう。部下の方の部屋へはこちらから案内の者を回しますので。」
「分かりました。フェイス、コング、おとなしくしていろ。」
二人は手を上げて答えた。
「天龍」の第一艦橋下の作戦室において今後の航海についての確認が行われた。草鹿長官からの指示に従って南太平洋に向かうことになる。目的は最近頻発している真帝国によるものと思われる輸送船などの不審事故の調査であるがなぜ南太平洋なのか?それはAチームがこの艦隊に配備されたこととあわせて後に明らかとなる。この大海戦の鍵を握るある事実として…
第三部です。少しスピードアップさせないと現実の時間が追い越してしまうような危惧を抱いている今日この頃です(汗)。
またテンプレートを変えました。秋らしいものを探していたら夕焼けが目に付きましたのでこれに決定。何となく「だーれも知らない、知られちゃいけーないー」と聴こえた気がします。(分かり辛いネタですいません。)
なんだかんだでもう十月も終わりです。寒い冬が今年もいよいよ来ますので皆様風邪などにお気をつけてください。
次回は輝とロメル少尉の絡みとモンキーの登場を予定しております。