日本艦隊司令部

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出航

2010-12-06 15:56:21 | マクロス 小説 第一部 運命の出航編
 お待たせしました。やっと出航です。


 瀬戸基地の沖合いに投錨している空母「天龍」の出航の日が来た。右舷前寄りに配置された第一艦橋(ブリッジ)から司令の早瀬未沙中佐は双眼鏡で基地内の滑走路を見ていた。滑走路では現在搭載される予定のバルキリー隊が集まってきていた。
「参謀長、着艦訓練開始まであとどれくらいですか?」
 そう言って未沙は後ろに控える艦隊参謀長のデビッド・E・スプルーアンス少佐に双眼鏡をはずして向き直った。
 スプルーアンス参謀長は腕時計を見て答えた。
「あと20分後です。まもなく出航ですから。すでに護衛艦隊の第8戦隊重巡「雲仙」「白神」の二隻が合流すべく紀伊水道を北上しております。」
「ありがとう。時間通りですね。とにかく最初の訓練だからといって失敗は許されません。事故も然りです。」
 そういうと未沙はブリッジ中央の海図へと向かい、ある一箇所を見ながら言った。
「今回の演習は統合軍東洋艦隊に大西洋艦隊、それに太平洋艦隊による戦後最大の一大演習です。とくに我々は日本艦隊の代表として行くのですから。」
 すると通信席のエマ・グレンジャー大尉がインカムを抑えながら報告を寄越した。
「早瀬司令、瀬戸基地の天龍第一航空隊長一条少佐から通信です。『準備完了、これより発進す。最終確認の為命令を願いたい。』以上です。」
「では了解しましたと返信を。文面は任せるわ。」
「はい、先輩!!」
 その返答に対して未沙が一瞬鋭い視線を見せた。
 それに気付いたエマ大尉はあわてて訂正した。
「し、失礼しました、司令。」
 それを聞き未沙は再び基地へと向き直った。
 エマ大尉は未沙の士官学校時代の後輩にあたる。マクロス航海時代にもシャミー少尉と同じく未沙の次席オペレーターとして働いていた。その頃の癖が抜けていないのだ。
 続けて未沙は舵輪を握り出航命令を待つ航海長の天野純大尉へと命令を発した。
「天野大尉、出航用意。」
「了解。出航用意。」
 すると天野はインカムで機関室への通信チャンネルを開いた。
「機関長、出航用意。機関始動、缶圧上げ、巡航速度は20ノットをキープする。錨も上げてくれ。」
 すぐに了解の返事が来た。艦がエンジン音を響かせ始めた。
 未沙の最初の号令が艦橋に響き渡った。
「「天龍」出航。」

 一方瀬戸基地では各滑走路に総数34機のバルキリーが並び脇では航空隊長の一条輝少佐と沖野誠二少佐による点呼および最終確認が行われていた。32名の男女がその言葉に耳を傾けている。
「いいか、空母とは洋上の滑走路だ。したがって少しでもはみ出せばそこは海。落下でもすれば命に関わり、着艦方向を誤れば艦橋やマストへの激突の危険性もある。その為諸君らにはあらかじめ着艦訓練は受けてもらった。今日はそのテストの仕上げでもある。よって失敗した者には厳罰を下す。各自気を引き締めて掛かってくれ。」
 それを聞き部下がざわめき始めた。すると誠二が声を発した。
「何か質問はあるか?」
 すると1人の部下が手を上げて。
「厳罰とは何ですか?」
 と質問してきた。
「失敗したものは、夕方まで甲板掃除任務を命じる。」
 するとざわめきがいっそう高まった。
「隊長、新造空母の甲板を掃除して意味あるんですか?」
 その質問に数名が笑った。だが輝は表情を崩さずに答えた。
「この厳罰は今後の訓練の失敗でも行う。つまり予行演習ということだ。」
 それを聞くと全員が静まり返った。
「では各自は自機へと乗り込んで待機。発進準備を整えておくように。」
 解散すると輝と誠二は自らの機体へと向かった。
「きにいらねぇな。」
 そう言ったのは輝の隊の第4小隊長ロメル・ウォーカー少尉だった。彼は5日前の「天龍」進水式での模擬戦以来少々気が立っていた。
「変な気起こすなよ。着任早々からな。」
 そう言ったのは第1小隊長の久野一矢中尉だった。
「ロメル、一条少佐にかなわないことはこないだ分かっただろ。」
 そう言われロメルは一矢に食いついた。
「かなわないと分かればその上司にしっぽを振れってんですか?」
 一矢は落ち着いて返した。
「そうじゃない。相手をよく見ろといいたいんだ。戦う相手を見極めろ。」
「戦う相手ね、おれはあの上司がそう思えるんだがね。」
 そう言うとロメルは自分のバルキリーへと小走りに向かっていった。
 一矢は振り返り、隣の滑走路の尾翼に骸骨の描かれたバルキリーへと視線を向けた。
「戦う相手か…。」
 一矢はそう言い残し自分の機へと向かった。

 またその頃、太平洋東シナ海九州沖の深海底に巨大な鉄の塊がいた。それは巨大な潜水艦であった。
 その司令室では1人の女性が中心となって数人が海図を囲んでいた。全員の眼が据わり、異様に白い顔をした者もいる。
「司令、紀伊水道に配置した58潜水艦報告によりますと二隻の巡洋艦が瀬戸内海へと入ったそうです。」
 そばの部下の報告を聞き司令と呼ばれた女性は冷静に返した。
「おそらく空母の護衛艦でしょう。豊後水道と足摺岬沖に配置した第3潜水戦隊からは?」
「まだ何もありません。」
「そうですか。」
 そう言ってその女性は窓へと歩み寄った。
「まさか67年後に同じようなことが起こるとは彼らは思いもしなかったでしょうね。」
 その視線の先には照明で薄く照らし出された鉄の船が横たわっていた。
 その船は1945年に沖縄へと山口県の徳山から出撃し、豊後水道で敵潜水艦の追跡を受けここで果てた古い軍艦であった。
 そうして感慨にふけっていた時通信員が声を発した。
「司令、大西洋の本部より通信が入っております。」
 それを聞き彼女はすぐに振り返った。
「すぐにつなぎなさい。」
「了解!!」
 すぐさま通信用スクリーンに映像が映し出された。
「全員そろっているようだな。」
 落ち着いた声が司令室に響き渡った。相手の顔は暗くて見えないがその人物の着ている軍服には卍のマークが刻まれていた。
 そして司令室の全員が踵を合わせ、片手を上げて敬礼した。
「ハイル!!」
 それを確認すると映像の人物も敬礼を返した。
「ハイル。早速本題に入ろう。あの空母の行き先が諜報部の調査で判明した。インド洋、おそらくは統合軍シンガポール基地だろう。」
「シンガポール?何故ですか?」
 女性は聞き返した。
 映像の人物は静かにそれに答えた。
「どうやら統合軍の海上戦力による演習が予定されているらしい。」
 司令室の1人が声を発した。
「では、あの空母はその演習に参加する為に。」
「そのとおりだ。そこで我々の東洋艦隊も動くことになった。諸君らは当初の予定通りに進めてくれたまえ。よい報告を期待しているぞ。」
「ハイル!!」
 再び敬礼が響いたのを確認すると映像の人物は消えた。
「全艦に発令。我らが真帝国の名の下に作戦を開始せよ。」
 司令室のメンバーはそれぞれの部署へと戻っていった。

 その日の夕方、太平洋へと入った空母「天龍」の甲板に二人の人物がいた。第4小隊長のロメル少尉と第1小隊の柿崎幸雄伍長だった。彼らはモップで必死に甲板を磨いていた。彼らは訓練でそれぞれ失敗を犯したのだった。
 ロメル少尉はイライラの為か着艦用のフックを掛けられずに甲板を素通りしてしまいあわててガウォーク形態で着艦し、柿崎伍長は自分の着艦する順番を間違えた為だった。
(いつか見返してやるからな。今に見てろ。)
 そう思いながら夕焼けの色に染まる甲板でロメルはモップを絞っていた。

 その夜各地で謎の船舶の目撃や事故が発生した。だが、それが人為的に行われたものであると判明したのは3日後のことであった。時に西暦2012年1月17日のことである。


 冬期休暇取り今日やっと出航です。みなさんにいつも見ていただいているのに遅れてしまってすいません。次回はいよいよ敵の登場です。