山の天気予報

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猪熊隆之の観天望気講座64

2015-05-26 20:50:18 | 観天望気

今回は直近の話題です。昨日は、天気予報では「晴れ」の一言で終わりだったのに、朝から雲が多い天気でした。

上の写真は事務所からの八ヶ岳方面の写真ですが、空一面に羊雲(高積雲)が出ています。大気の状態が乱れていて、狭い範囲で空気が上昇と下降を繰り返しているときにできる雲です。乱れの原因は何でしょうか?

まず、地上の天気図を見てみましょう。

日本の南海上には梅雨前線があり、紀伊半島の沖合には低気圧がありますが、陸地からかなり離れており、八ヶ岳方面への影響はなさそうです。一方、北海道の東と東シナ海と黄海の境目付近には高気圧があります。本州付近はこの2つの高気圧の間の弱い谷に入っていることが、雲が多い原因のひとつと思われます。

ただ、ひつじ雲は3~7km付近(今回の雲は5~7km付近)に現れる比較的高い雲です。したがって、雲を発生させる原因は、もっと高いところにありそうです。そこで、500hPa(高度約5,700m)の天気図を見てみましょう。

山陰地方の沖合に低気圧があります。等高度線(実線)で囲まれて周囲より高度が低くなっている部分が低気圧です。上層の低気圧は上空に寒気を伴っていることが多く、この前側(多くは東側や南東側)で、大気が不安定になることが多いのです。また、この低気圧の南側は等高度線の間隔が狭くなっており、強風帯となっています。次に500hPaの気温を見てみましょう。

25日9時の天気図では、北陸沿岸に-15℃の線がかかっており、21時になると線がもっとも南側に張り出しているところ(寒気の勢いが強いところ)が能登半島付近にかかっています。この周辺(特に南東側)で大気が不安定になり、北アルプスでは広い範囲でにわか雨が降りました。

八ヶ岳では寒気や低気圧からやや離れていたため、雨は降らなかったものの、少し雲がやる気を出しているようでした。

上はお昼頃の蓼科山から南八ヶ岳方面を見た写真です。もう少し、寒気が南にまで下がってくれば、雲はもっとやる気を出して、にわか雨や雷雨をもたらす積乱雲に発達したかもしれないですね。

※地上天気図は気象庁提供、ほかは、「山の天気予報」専門天気図より。

※図、文章、写真の無断転載、転用、複写は禁じる。

文責:猪熊隆之


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