山の天気予報

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猪熊隆之の観天望気講座91

2016-12-23 10:31:25 | 観天望気

今回は11月下旬に中日ツアーズで行われた、山の天気ハイキング中に見られた雲について紹介します。この日のハイキングでは、これまで学んできた雲が沢山現れましたので、良い復習になると思います。

ハイキングの舞台は岐阜市最高峰の百々ヶ峰。当日は、素晴らしいお天気で眼下には長良川がキラキラと輝きながら流れ、岐阜市街が手の届くような距離にあり、遠く名古屋の高層ビルも見ることができました。反対側には白銀に輝く御嶽山や乗鞍岳、中央アルプスや南アルプス、恵那山と絶景が広がっていました。

この好天をもらたしたのは高気圧です。高気圧は下降気流が起きるため、雲が発生しにくく、天気が良くなります。この日の天気図(図1参照)を見ると、東北地方の太平洋沿岸に高気圧があります。この高気圧に覆われて岐阜市を含む中部地方は良い天気になりました。

図1 ハイキング当日の地上天気図(△印は百々ヶ峰の位置)

 

上空にはほとんど雲がありませんでしたが、養老山地には鈴なりの積雲(せきうん。別名わた雲)が現れていました。

写真1 養老山地上空の積雲とスモッグ

 この雲は伊勢湾からの湿った空気が養老山地にぶつかって上昇し、発生したものです。「海側から風が吹く、風上側の山で天気が崩れる」という山の天気のキホンを目の当たりにすることができました。 

図2 平地では天気が良く、山で発生する雲の仕組み(山の天気リスクマネジメント「山と渓谷社」より)

また、この雲とは別に、山の下の方に少し汚い空気の層が見られます(写真2の青い囲み線)。これは人為的に排出された窒素酸化物などによるスモッグです。この層はデコボコしておらず、スモッグの上端が綺麗に同じ高さで揃っています。

これは、上端の下側では冷たい空気が溜まり、上側では温かい空気となっていて、大気が安定した状態になっているためです。大気が安定していると、雲は上昇することができず、左右に広がっていくため、上端がそろいます。雲海の場合も同様です。詳しくは第59回 http://blog.goo.ne.jp/yamatenwcn/e/4bb0094b9a7d20171b5155eabc082f63 をご参照ください。

さて、高気圧が東へ遠ざかるにつれて午後は巻雲が広がってきました。天気が崩れるときに最初に現れる雲です。上空の水蒸気量が多く、湿った感じの雨巻雲となっていました(写真2)。

写真2 雨巻雲が広がる

巻雲には雨巻雲と晴れ巻雲があります。雨巻雲と晴れ巻雲については過去の観天望気講座をご参照ください(下記URL)。

http://blog.goo.ne.jp/yamatenwcn/e/047f57fe1b62d34335c45c35a0661f1f

http://blog.goo.ne.jp/yamatenwcn/e/712288252cf223bda87307278cfcfc84

文、写真:猪熊隆之(株式会社ヤマテン)

※図、写真、文章の無断転載、転用、複写は禁じる。

 

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