今日は先日、おこなわれた「山の天気ハイキング達磨山~金冠山ツアー」で見られた雲について説明します。
伊豆半島から箱根、丹沢などは関東近郊の他の山と同様に、冬型の気圧配置になると、晴れることが多いです。ただ、関東平野を吹く北風と駿河湾から伊豆半島に向かう西風がぶつかる位置にあるため、上昇気流が発生しやすく、雲が広がることもあります(下図参照)。
上層の寒気が強いと、この雲が発達して、時ならぬ雪を降らせ、箱根や伊豆の有料道路が通行止めになったりすることがあります。このようなとき、東京や横浜は晴れていることが多いので注意が必要です。
さて、ハイキング当日は、冬型の気圧配置となっていましたが、等圧線の間隔が次第に開き(天気図参照)、大陸から張り出す高気圧に覆われて穏やかに晴れそうな感じでした。
しかし、細かく見てみますと、7日9時の予想天気図①では、伊豆半島の南側に気圧の谷(破線部分)があり、それが7日18時の予想天気図②を見ると、北上しています。この予想天気図は5日3時を基準としたもので、かなり古い天気図ですが、実際と大きな違いはなく、精度の高いものでした。冬は、予想天気図の精度が高く、2日先の予想図でも十分に使えます。さて、気圧の谷の部分では風と風がぶつかり合って上昇気流が起きやすく、雲が発生しやすくなります。その雲が下の写真です。
また、このときは、850hPa(高度約1,500m)で-6℃という強い寒気が入りこんでいました。一方、相模湾や駿河湾の海面水温は18℃以上です(下図参照)。
24℃以上の気温差があります。暖かい海面の上の空気は暖められて、上空との気温が大きくなります。すると、対流という空気の流れが発生します。暖かい空気が上に、冷たい空気が下にそれぞれ動いていきます。暖かい空気が上にあがるところで上昇気流が起き、雲が発生するのです(下図参照)。
上の写真は対流によって発生した雲です。このように同じような雲が並んで連なることが多くなります。
写真の雲は対流によって上昇気流が発生したところでできていますが、このときは上層の寒気が弱く、上空に安定層(この場合は恐らく逆転層)が出来ていたため、安定層の上まで発達することはありませんでした。これが大気が不安定な状態だと、雲は上へ上へと発達し、降雪をもたらします。
伊豆半島の南側にあった気圧の谷に伴う雲は予想天気図では北上していましたが、その通り、北上して下山する直前にはご覧のように、箱根付近にまで達しました(下の写真)。
次の山の天気ハイキングではどんな雲が見られるでしょうか?ワクワクします。
※地上天気図は気象庁提供。その他の図は猪熊隆之作成または山岳気象大全(山と渓谷社)より。図、文章の無断転載、転用、複写は禁じる。
文責:猪熊隆之