昔、上官の両親が健在の時、実家に遊びに行った時、義理の父は八〇代の大先輩。
口数は少なく 和室の畳の居間のこたつの前に座り、なにか用事があるときは義理の母親に
声をかけるだけ、自分からは動こうとはせず 今では想像できない亭主関白
大きなお腹を支えながら、口にはタバコ、白髪の頭はきちっと整えてる。
永年、金融関係の仕事一筋、会社まで電車で一時間三〇分、人に囲まれ、揺られ 無遅刻
無欠勤の生活を四〇年。ようやく 開放されて夫婦二人の生活。
そんな時 たまに遊びに訪れる義理の息子との会話には戸惑うこともあったのでしょう
二人の前には小さな白黒のTVがあり、こたつのテーブルの上には新聞、灰皿、赤鉛筆、リモコンが置いてある。
上官が義理の母親と台所に入ると、廊下を挟んだこの部屋は小生と義理の父の二人だけの世界。
沈黙、沈黙 、、、
タバコの煙が目の前をゆらゆら、、、
話のきっかけをどうしょうか、どんな話題にしたらいいのかなど 頭の中はグルグル
そんな時は必ず、目の前に置いてる新聞のTV番組表を見ることにした。
そのTV番組表に必ず、赤線が引かれてる。
今日見る番組を赤の鉛筆で印をつけることが父の一日の始まりである。
最初は何のことかわからず、聞くこともなんだか出来ず、ただただ、二人で思い沈黙の中で
時間を過ごした。
それさえわかれば年代差が大いあっても、
「お父さん、今日見る番組の中ではどれが一番好きですか」
其の質問がきっかけで話が進みましたね。
其の赤線は全て NHK、ドキュメント、日本映画など。
今、TV番組を眺めるときに、ついつい 義理の父親の顔と赤鉛筆が思い出される。
松尾和子 父の大好きな歌手
今 小生もは父と同じような番組表を眺めてる。