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公民権行使の保障

2013年04月08日 | 法律
自衛隊の予備自衛官が訓練に参加する場合や非常勤の消防団員が職務に従事するための休暇を請求された場合は、与えなければならないのか、また、与えるとしたら有給にするか、無給でよいか考えてみます。

労働基準法第7条に以下のような公民権行使の保障の条文があります。
「使用者は、労働者が労働時間中に、選挙権その他公民としての権利を行使し、又は公の職務を執行するために必要な時間を請求した場合においては、拒んではならない。但し、権利の行使又は公の職務の執行に妨げがない限り、請求された時刻を変更することができる。」

公民権行使の保障とは、労働者が公民としての権利の行使や職務を行なう為に必要な時間を請求した場合に、使用者がその時間を与えなければならないという制度です。ただし、使用者には、時刻変更権はありますが、就業時間内の行使ができないような定めは違法になります。

公民としての権利とは、選挙権・被選挙権、最高裁判所裁判官の国民審査、特別法の住民投票、憲法改正の国民投票、地方自治法による住民の直接請求、選挙人名簿の登録の申出、民衆訴訟・選挙人名簿に関する訴訟・選挙又は当選に関する訴訟等があります。
※個人としての訴権の行使(民法による損害賠償に関する裁判所への訴え)は、一般的には、「公民としての権利」の行使ではありません。(昭63.3.14基発150号)

公の職務とは、衆議院議員その他の議員、労働委員会の委員、陪審員、検察審査員、民事訴訟による証人としての出廷、労働委員会の証人、選挙立会人等の職務があります。
※単に労務提供を主たる目的とする職務は、公の職務には含まれません。予備自衛官の防衛招集・訓練召集や消防組織法の規定による非常勤の消防団員の職務は、この公の職務には該当しません。(昭63.3.14基発150号)

したがって、予備自衛官や非常勤の消防団員が、職務としての召集に応じて休む場合は無給であっても問題ありません。また、労働基準法が定める公民権行使の保障の対象にもなりませんので、必ずしも休暇を与える必要もありません。

平成16年に成立した「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」では、裁判員(裁判員候補者)として裁判所へ出向くことは、労働基準法第7条の「公民権行使の保障」(選挙権その他の公民権行使)の適用があるとの政府の見解がありますので、注意が必要です。

著作権:山田 透


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