新潟市にある山田コンサルティング事務所

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パート労働法(3)

2008年05月26日 | 法律
(前回からつづく)
次に、正社員への登用について考えてみます。
パート労働法(1)でご説明したとおり、「通常の労働者と同視すべきパートタイマーの差別的取扱の禁止」が法律で明確になりました。ですから、通常の労働者と同視すべきパートタイマーを正社員にするほうが、事業主、正社員を希望するパートタイマー双方にとって良いことにつながると考えられます。
そこで、制度を具体的に実現する場合、パートタイマー就業規則に正社員登用の規定などを作成することになります。制度作成については、次のようなポイントを検討することから始めます。
・本人が希望すること
・過去○回の人事評価において連続して「B」以上の結果を得ていること
・直属上司の推薦があること
・正社員登用試験に合格すること 等

ここまで進めば、次はパートを含む人事労務制度を導入することについて検討をします。
人を育てる人事労務制度の構築を目指します。
私が提案する人事労務制度は…
◆20人から150人くらいの企業に適しています。
◆運用が簡単な人事制度です。
◆社員の育成が自然とできる制度です。
◆管理者や社員と一緒に考え作成します。
◆具体的な能力と行動を明確にします。
◆年功制度ではない評価をします。

現代の企業経営において、パートタイム労働者は欠かせない存在です。このパートタイム労働者がやる気をもってイキイキ働く場合と、不満をもちながらイヤイヤ働く場合では、業績が大幅に違ってくると思いませんか。もちろん、正社員だって同じです。働く人一人ひとりが本当に能力を発揮できる風土づくりをすることが、最終的には企業の業績の向上につながると私は信じます。

人件費削減の目的でパートタイム労働者を活用している企業も多いと思いますが、ここ数年はパート・アルバイトの不足から「パート・アルバイトが集まらないから派遣社員で対応したら、人件費が膨らんでしまった」企業も出てきています。そこで、大手企業は、改正パートタイム労働法への対応を含め、パート・アルバイトの獲得のための制度導入をどんどん進めています。(日経ビジネス2008年4月28日・5月5日号より)

このような状況のなか、これからの中小企業では「人を育てる」人事労務制度、「人が育つ」企業風土こそが企業を発展させる原動力となります。今回のパート労働法の改正にあわせ、取り組んでみてはいかがでしょう。パートタイム労働者の就業規則の作成、正社員登用についての検討、パートを含む人事労務制度の導入まで、ひとつ一つ丁寧にサポートいたします。

※パート労働法の正式名称は「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」です。

著作権:山田 透

ヒロタの事業を再生した広野道子氏のセミナー

2008年05月22日 | 見聞録
去る5月19日、セミナーを聞きに行ってきました。講師は広野道子氏(21LADY株式会社 代表取締役)、洋菓子のヒロタを再生させた方です。以前、日経CNBCテレビのエコノWOMANに出演しているのを観たことがありますが、やはり、生でお話を聞くのはいいですね。迫力が違います。

1時間めいっぱいという感じで、次から次へと、いろいろなお話が飛び出したのですが、もっとも印象に残ったのは『人の再生』という言葉です。ヒロタを、なぜ、たった3年で再生できたのかというお話のなかで、その理由のひとつとして、『人の再生』ということをおっしゃっていました。

再生の場合は、問題解決においてスピードが大事で、それには人だと。人それぞれ欠点もあるけれど、必ず長所があるので、それを活かす。教育の前に、各人の長所を活かす人員配置をするだけで、かなり業績が上がるというお話でした。

私も外部の専門家として企業経営に関わるなかで、広野氏と同じように感じることがあります。短所や問題点を指摘するのは簡単ですが、指摘してもあまり意味がないのです。もちろん、問題解決のために問題の原因を分析するのは大切ですが、ややもすれば「誰が悪い?」という悪者さがしになりがちです。しかし、「誰が」ではなく「何が」問題なのかを見極め、どうすればいいか、そのためには「どのような人が」担当するのがいいか、というように考える必要があります。

悪者さがしをしない問題解決で、働く人のやる気を引き出し、新しい仕組みをつくっていけば、結果は後からついてきます。

著作権:山田まり子

パート労働法(2)

2008年05月19日 | 法律
今回は、改正パートタイム労働法にどのように対応するかを考えたいと思います。この際ですから人事労務制度まで含めて積極的に取り組んでみては、いかがでしょう。

具体的には、まず、パートタイム労働者の就業規則があるか、ないかを確認します。次に、パートタイム労働者の正社員登用について検討します。そして、パートタイム労働者を含む人事労務制度を導入するといったことが考えられます。

まずは、パートタイマー労働者の就業規則について確認します。
一般的な正社員用の就業規則では、適用対象または適用範囲として、「本就業規則は社員を対象とし、パートタイマーは別に定めるパートタイマー就業規則による。」などとして、正社員の就業規則は適用されないようになっています。しかし、正社員の就業規則はあるが、パートタイマー用の就業規則は作成していない事業所もかなりあります。そのような事業主は、パートタイマーとは個別に契約を結んでいるのでパートタイマーの就業規則なくても問題は特にないと考える傾向があります。

ところが、パートタイマーの就業規則がない場合は、事業主にとって困ったことが発生します。労働基準法第93条や労働契約法第12条では、「就業規則に定める基準に達しない労働条件を定めた労働契約は、その部分について無効とする。この場合において無効となった部分は就業規則で定める基準による。」とあり、就業規則が個別契約よりも優先することが明記されています。つまり、パートタイマーの就業規則がない場合は、正社員の就業規則に定める基準に達しないパートタイマー労働契約は無効になってしまい、パートタイマーにも正社員の就業規則に定める基準が適用されます。

例えば、正社員用の就業規則に退職金の規定があって、パートタイマーと個別結んだ雇用契約書や労働条件通知書に「退職金は支給しない」と記載していても、パートタイマーの就業規則がなく、正社員の就業規則に退職金の支払いを予定していれば、正社員の就業規則がパートタイマーにも適用される可能性があります。パートタイマー自身は、退職金がないことを承知の上で入社したとしてもそれは通用しません。そして、このようなパートタイマーの就業規則がないことによる問題点は、退職金だけでなく、賞与、年次有給休暇、慶弔休暇、休職等さまざまな労働条件に及びます。

しかも、「パートタイマーは別に定めるパートタイマー就業規則による」とうたっていながらパートタイマー用の就業規則がない場合は、就業規則作成が義務づけられている労働基準法第89条違反となり、結果的に30万円以下の罰金に処せられる可能性まであります。

これらに対応するためには、正社員の就業規則と、パートタイマー用の就業規則を別々に作成することがポイントになります。
…次回へつづく

著作権:山田 透

パート労働法(1)

2008年05月12日 | 法律
総務省の労働力調査では、平成18年のパートタイム労働者(この調査では、週間就業時間が35時間未満)は約1,205万人で、雇用者全体の2割強を占めています。
こうした中で、仕事の内容・責任等が正社員と同様であるのに、賃金等の待遇が見合っていないなどの問題も多く存在するため、パートタイム労働者の働く環境改善を目的とする“改正パートタイム労働法”が今年の4月1日から施行されました。今回は、この“改正パートタイム労働法”について簡単にご説明します。

まず、パートタイム労働法の対象である「短時間労働者」(パートタイム労働者)についてですが、規定では、「一週間の所定労働時間が、同一の事業所に雇用される通常の労働者の一週間における所定労働時間に比べて短い労働者」と定義されています。
例えば「パートタイマー」「アルバイト」「臨時社員」「契約社員」「嘱託」「準社員」など、さまざまな呼称がありますが、呼び方が異なっていても、先の条件に当てはまる場合は“パートタイム労働者”として改正法の対象となりますので、注意が必要です。

次に、“改正パートタイム労働法”のポイントを挙げます。

【1】労働条件の文書交付等
労働基準法で義務付けている労働者(パートタイム労働者を含む)を雇入れる際の労働条件明示事項に加え、「昇給の有無」「退職手当の有無」「賞与の有無」の文書明示が義務づけられました。

【2】通常の労働者と同視すべきパートタイマーの差別的取扱の禁止
「職務の内容(業務の内容と責任の程度)」「人材活用の仕組みや運用など」「契約期間」の三要件が正社員と同じパートタイム労働者は、正社員と就業の実態が同じと判断され、賃金の決定をはじめ教育訓練の実施、福利厚生施設の利用、その他のすべての待遇について、パートタイム労働者であることを理由に差別的に取り扱うことが禁止されます。

【3】正社員への転換の推進
正社員として働くことを希望する者が少なくないことから、正社員への転換を推進するために、事業主に対し次のいずれかの措置を義務付けています。
●正社員を募集する場合、例えばその募集内容を事業所内に掲示する等して、既に雇っているパートタイム労働者に周知をすること。
●正社員のポストを社内公募する場合、すでに雇っているパートタイム労働者にも応募する機会を与えること。
●パートタイム労働者が正社員へ転換するための試験制度を設ける等、転換制度を導入すること。

それでは、これらの法改正に対して、企業はどのように対応したらよいでしょうか。次回は、この点についてご説明したいと思います。

著作権:山田 透

他所懸命、多所懸命

2008年05月12日 | 経営
一所懸命…〔武士が〕昔、ただ一か所の領地を死守して生活の頼りとしたこと。(新明解国語辞典、三省堂)

一所懸命に対して、私は他所懸命や多所懸命(※)をお勧めしたく思います。
自分の会社の中だけを、自分の取り扱う商品だけを見ていたのでは、「何を」「どのように」改善したらいいかが見えてこないからです。

他所、つまり、異業種を見ることで、新しいヒントを得ることができます。ある業界ではごく当たり前に行われていることが、自分の業界では「そんなこと考えたこともない」ということが、よくあります。それを工夫して実現できれば業界初のパイオニアになれるのです。

多所、つまり、直接の顧客だけでなく、その先のエンド・ユーザー、さらに、地域社会や行政、法制度の改正などを見ることで、自分の会社の進むべき方向性が見えてきます。また、川上にあたる仕入先や原材料の情報を得ることで、自社の効率化やリスク回避の方策を思いつくかもしれません。

スーッと後ろに引いて、全体を見回したり、何かと何かを比較したりすることで、「他所」や「多所」が見えてきます。そして、それが最終的には「一所」を守ることにつながります。

そのときに必要となるのが、コンセプチュアルスキル、ロジカルシンキング(論理思考)、構造化などです。
このあたりのスキルがないと、いくら知識の勉強をしても自分の事業に活かすことができませんし、他業界や他社の成功事例を聞いても「それはうちでは無理」「あの会社だからできたこと」など、“自社には役に立たない理由”ばかりを挙げるようになります。
逆に、これらのスキルを身につければ、セミナーを聞きにいっても、新聞を読んでも、町を歩いているだけでも、事業のヒントとチャンスが身のまわりに溢れてきます。

※「他所懸命」「多所懸命」は、私の造語です。

著作権:山田まり子