新潟市にある山田コンサルティング事務所

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マニュアルの誤解

2008年06月30日 | 経営
「マニュアル」と聞いて、みなさんは何を思い浮かべるでしょうか。

以前、私はマニュアルをつくる仕事をしていたことがありますが、「マニュアルをつくりましょう」というと、「マニュアル?うちの仕事はマニュアルどおりにはいかないよ。経験と勘が大事なんだから。マニュアルなんてムダ、ムダ」とおっしゃる方が、結構、いらっしゃいました。
マニュアルといえば、ファーストフードのマニュアル、マニュアル人間、マニュアルどおりにしか動けない、うちの会社にもあるよ(埃をかぶっているけど)などなど…あまりいいイメージではなく、どちらかという少しバカにした印象があります。

多分、マニュアルに対して誤解があるのだと思います。

その誤解とは、マニュアルを「満点」だと思っていることです。満点とは、マニュアルは完璧で、だから、マニュアルどおりにしていれば十分であり、マニュアルに書いてある以外のことをしてはいけないといったような意味です。

私は、いつも、マニュアルは「及第点」だと申し上げています。
最低限これだけはきちんとやってくださいね、これすらできないようだと落第ですよ、というのがマニュアルなのです。
マニュアルに書いてあることを押さえたうえで、自分なりの創意工夫をしてください。そして、その工夫がいいものであるなら、マニュアルに書き加え、他の従業員にも伝えてください。現場の実態に合わせて、常に書き換えていくのが正しいマニュアルの使い方です。つまり、マニュアルは進化するのです。ですから、百科事典のように立派で分厚いマニュアルではダメなのです。区切りのいいまとまりごとにファイルし、用紙を加えたり、内容を修正したりできるようなバインダー式がいいのです。

そして、「プロに全部おまかせ」にしてはいけません。つくり方を教わり、つくったものをチェックしてもらうことは必要ですが、内容は、自分たち(現場の従業員)でつくってください。そうしないと、使えるマニュアルはできあがりません。

著作権:山田まり子

【論理思考】 解決策

2008年06月23日 | 経営
「売上が落ちている」というのは、たいがいの商売にとって問題といえるでしょう。そのときに、例えば「コーヒーがまずい」といったような見つけやすい現象に惑わされ、それをひっくり返した(つまり、コーヒーの味を良くするといった)解決策を立てるのは早計だということを、2008年6月2日【論理思考】問題と原因で説明しました。
では、どうすればいいのでしょう。

売上を回復させたいのですから、まずは、売上が何からできているか見てみます。売上は、お客さまがお店に来てくださって(=客数)、代金を支払ってくださる(=客単価)ことによって成り立ちます。

◆売上=客数×客単価

売上が落ちた原因は、客数が減ったのか、客単価が落ちたのか、あるいは両方か。そして、客数が減った内容は、既存客のリピート率が下がったのか、新規客が増えていないのか。客単価のほうは、注文してくださる品数が減ったのか、それとも、値段の高い商品(メニュー)が売れず、安い商品(メニュー)の注文が増えたのか。…というふうにブレークダウンしていきます。そして、その原因に対応した解決策を立てることになります。

解決策を立てるときには、もう一度、目標を確認します。落ちた売上を回復させることが目標になると思いますが、利益にも注意する必要があります。自分の立てた解決策が利益にどのような影響を与えるかということです。例えば、利益率を多少、犠牲にしても売上を伸ばし、結果として利益額が増えればいい、といったように、何を重視するかによって解決策を絞りこんでいきます。

また、制約条件をクリアしているかということも大事です。例えば、お店の椅子の数には限りがありますから、ランチタイムが混んでいるお店で、さらにランチタイムの売上を伸ばすような実施策を考えても売上を伸ばすことはできません。

このようにして解決策を絞りこんでいくわけですが、もっとも大切なのは、お店のコンセプトとの整合性です。どれほど優れた解決策でも、「私はそれはやりたくない」「うちの店には合っていない」ということであれば、成果には結びつきません。
「誰に」「何を」「どのように」提供するか。ストア・コンセプトなどといいますが、このコンセプトについては、また別の機会に説明したいと思います。

著作権:山田まり子

就業規則の見直しについて(2)

2008年06月16日 | 労務
【企業の経営理念との整合性】
次に経営理念についてですが、現代のように先行きが不透明の場合には、従業員に自社の経営理念、方針などを周知することや、将来に対するビジョンを明確にすることが重要です。そうすることで、従業員の仕事に対する協力体制を確保できるようになり、モラールの向上につながります。
そして、経営理念が明らかになれば、就業規則にも反映されることになります。

例えば、近年「うつ」の増加など、メンタルヘルス対策が必要とされるケースが増えています。部下が「うつ」あるいは、それに近い状況になったとき、上司(管理職)はどのように対応するかを判断しなければなりません。
このようなケースに対応する就業規則の規定として「休職制度」があります。
休職制度
1 休職は就業規則に必ず記載すべき事項ではないので、休職を設けるか否かは、企業の自由です。
2 休職期間をどの程度にするかも、労働基準法に規定がありませんから、これも自由に設定できます。

経営理念に「従業員を育て、共に伸びていこう」と謳っていれば、休職制度を設けることになりますね。休職期間についても、1ヵ月にするか1年にするか、勤続年数を考慮するかといったことなどをその会社の経営理念に沿って考えることになります。
ただし、一般的には休職期間は無給ですので、あまり長く休職期間を設けても本人のためにならないという考え方もあります。とくに、メンタルヘルスの場合、中小企業では代替要員の問題など、難しい面があるのも事実です。

ですから、就業規則の見直しは、現法令に適合しているかどうか、経営理念に基づいているかを確認したうえで、規則の適用を受ける従業員側の要望を捉えるため、事前に意見を聴き、くみ取る姿勢を示すとともに、会社側の状況や考えも理解してもらえるような努力をすべきだと、私は思います。それが、従業員のモラールアップにつながるのです。
なお、これらのことは、休職だけでなく、年次有給休暇災害補償表彰懲戒など、ほとんどの規定に影響を与えます。

ここまで、2回にわけて「就業規則の見直し」について説明をしてきました。「それでは、これを機会に一度、就業規則を見直してみよう」と思われた方もいらっしゃることと思います。
そこで、当事務所では、就業規則の見直しに関して、次のようにご提案します。

1 就業規則の見直し(チェック)だけを依頼したい
法令改正の内容を知り、見直し後は自社で修正することを考えている企業が対象になります。
◆当事務所がチェックして、現行法に適正でない箇所、および労務管理上、トラブルがおこりやすい事項について、指摘のうえ、改正案を提示します。
◆労働基準法上必ず記載していなければならない事項に漏れがないかをチェックし、漏れがあるようでしたら、アドバイスをいたします。

就業規則をメールで添付するか、あるいは、印刷物を郵送してください。
就業規則を当事務所が受け取り後、3週間程度でご返送いたします。
《価 格》 30,000円(+消費税)
※なお、ここでいう就業規則は、就業規則、賃金規程、育児介護規程程度の内容を想定しています。

2 経営理念を含め、就業規則の改定を考えているので、訪ねてきてほしい
◆相談事項には、経営理念と就業規則との整合性を図る必要もあり、依頼後およそ2~3ヵ月で終了します。面談は4回前後となります。

《価 格》 160,000円~300,000円(+消費税)
※交通費につきましては、新潟市とその近郊は無料ですが遠方の場合、実費を負担していただく場合があります。

著作権:山田 透

就業規則の見直しについて(1)

2008年06月09日 | 労務
就業規則とは、会社と従業員が守るべき規則を定めたものです。
就業規則は、書店、インターネットなどにモデル就業規則がありますし、労働基準法第89条などで、就業規則の作成および届出の義務、作成の手続、周知などが義務づけられていますので、それらを参考にしながら作成することになります。

就業規則の見直し(新規作成を含む)を行う際は、最新の諸法令に注意を払うことは当然ですが、企業の経営理念に基づいて作成することも大事です。
そこで、就業規則の見直しについて、今回は最新の諸法令への適合性という観点から、次回は企業の経営理念との整合性という観点から説明したいと思います。

【最新の諸法令への適合性】
ここ数年、労働法に関する改正頻度が高かったため、意外に多くの企業が対応していないようです。自社の就業規則をご覧になってみてください。以下に、よく見られる例を示します。

例)定年
第○条(定年)
1 ……
2 ……
3 会社は定年に達した従業員で、会社が必要と認め、本人が希望するときは、1年契約の嘱託として、65歳まで再雇用する。
★この条文は平成18年4月前までは適法でしたが、平成18年4月以降は違法になります。高年齢者雇用安定法(高齢法)の改正により“会社が必要と認め”の文言が法令上、合わなくなりました

例)年次有給休暇
第○条(年次有給休暇)
1 ……
2 ……
3 年次有給休暇の取得は1日単位とする。ただし、従業員からの1時間単位の申し出があった場合は、1時間単位を認める。
★時々見かける条項ですが、現状では昭和63年の通達で、半日単位の年次有給休暇の取得までが認められており、時間単位の取得までは認められていません

他の法令の改正について、チェックすべきポイント(抜粋)をあげます。
労働基準法 平成11年:退職時の証明(退職の事由が追加)、年次有給休暇(6.5年以上で20日)、就業規則の別規程(すべて別規程可)
平成16年:有期労働条件の上限(原則3年)、解雇自由の明示(就業規則にて明示)
育児介護休業法 平成14・17年:子の看護のための休暇措置の義務(1年で5日)、育児休業期間(勤務時間の短縮等)、介護休業の取得回数(通算93日)
男女雇用機会均等法 平成19年:セクハラ禁止の義務化、間接差別禁止(体力要件や転勤要件)
労働安全衛生法 平成18年:月100時間以上の時間外労働をした者に対し、医師による面接指導の義務化
高齢法 平成18年:65歳までの雇用確保措置の義務化(定年の廃止、または定年年齢の引上げ、または継続雇用制度の導入)
パートタイム労働法 平成20年:5月にこのブログで説明

これらの規定は就業規則のなかに盛りこむこともありますし、別規定として作成したほうがいい場合もありますので、この点も検討します。他にも、平成17年に施行された個人情報保護法および次世代育成対策推進法、平成18年に施行された公益通報者保護法、同年に改正された不正競争防止法、平成16年改正の道路交通法も就業規則に関わります。また、今後も平成21年に施行される裁判員制度をはじめ、いろいろな法律が就業規則に関わる可能性がありますので、継続的に注意をする必要があります。

著作権:山田 透

【論理思考】 問題と原因

2008年06月02日 | 経営
ある飲食店で「コーヒーがあまり美味しくないなぁ」ということがあって、「これを美味しくしたらお客さんが増えるのでは?」と思うことは、ありませんか。
この場合、コーヒーが美味しくないことが問題であり、コーヒーを美味しくすることが解決策に該当します。
でも、これって、ホント?

もし、このお店が大繁盛していたら、コーヒーが美味しくないことは大した問題ではありませんよね。
では、このお店が、お客さんが減って困っているとしたら、コーヒーが美味しくないことは問題でしょうか。
否。この場合は、コーヒーが美味しくないことではなく、お客さんが減っていることが問題です。
だとすると、コーヒーが美味しくないことは、お客さんが減っているという問題の原因なのでしょうか。

それは、わかりません。
お客さんが減る原因となり得る因子はたくさんあります。それを洗い出して、何が本当の原因らしいかを調べます。原因は1つとは限りませんし、互いに影響し合っているかもしれません。
そして、その結果、かなりの確度(かくど=確からしさ)でコーヒーの味が原因の1つであるという結論に至り、かつ、コーヒーを美味しくすれば客数が増える見通しが立てば、「コーヒーを美味しくしよう」という解決策が立てられる可能性が出てきます。

「コーヒーが美味しくない」というのは、わかりやすくて見つけやすい現象なので、つい指摘しがちですが、本当の問題と、その問題の原因を考えるときには、惑わされないよう注意が必要です。

著作権:山田まり子