日にちがたってしまいました。
今回は、教育のついての一般質問の内容をお知らせします。
「教育機会確保法」
3年前に成立しましたが、未だに知る人ぞ知る状態の法律の画期的な中身について、正面から取り上げました。
未定稿
2019.6月議会 一般質問 宇田たか子
大項目の2 「教育機会確保法」にもとづき、すべての子どもに学習権の保障と居場所を
本市においては不登校対策として、教育委員会や各学校、一人一人の担任において、さまざまな地道な努力がおこなわれていることと思います。しかし不登校の子どもやその保護者の状況は本当にさまざまで、何とか学校に行けるようになりたいと、学校の支援を受けながらあらゆる方法で学校復帰への努力をしようとするケースもありますが、学校からの援助が子どもや保護者の求めるものとなかなかかみ合わず模索するケース、もうかかわらないでほしいと学校を拒絶するようなケースもあるかと思います。
一方不登校の子どもやその保護者は、学校に行けない、学校がつらいということで非常に苦しみ、自分を責めたり、学校に行かずにどこで何をしたらよいのかと途方にくれたり、どう未来を展望したらよいのかわからず絶望的になったりしています。
国においては、「就学年齢の子どもは学校に行って学ぶ」ということを定めた「学校教育法」に対し、2016年12月、初めてそれを補完するような法律、「義務教育の段階における普通教育に相当する 教育の機会の確保等に関する法律」略して「教育機会確保法」が制定されました。
この法律は、義務教育を保障するのは「学校教育法」の言うところの学校だけであり、子どもは学校へ行かなければ学ぶことを保障されない、という従来の制度に対して、増え続ける不登校と、その子たちの居場所や学習の場となったフリースクール、そして親たちの運動を背景にして作られ、不登校の子に対して何が必要か、不登校の子どもたちが学校に不適応なのではなく、むしろ学校が変わりなさいという発想に立っています。また不登校であってもその学習権は保障されるべきこと等が明文化された画期的なものであり、全ての国民の学習権を保障した憲法26条の精神により、近づいた法律と言えます。
そこでこの法律が成立して3年、本市において、どのように学校が変わろうとしているのか、不登校対策がどう変わろうとしているのか、伺います。
(1)学校はどう変われるか
1点目 この法律の基本理念では「全ての児童生徒が豊かな学校生活を送り、安心して教育を受けられるよう、学校における環境の確保がはかられるようにすること」と言っていますが、この文言をどのように受け止めるでしょうか、伺います。
2点目 本市において、「全ての児童生徒が豊かな学校生活を送り、安心して教育を受けられるように」するために、どのようなことをお考えか、伺います。
(2)学校における個別の配慮について
次に「教育機会確保法」で言っている、個々の不登校児童生徒の状況に応じた支援をおこなう、ということについて、伺います。
学校に行くのがつらくて不登校になる原因の1つに発達障害が起因していることは少なくないと思います。しかし、その子その子の 障がいに応じた配慮が適切におこなわれれば、苦しまずに学校生活をおくれる可能性は大きくなります。学校現場が個々の子どもたちに必要な配慮をなるべく早い段階で適切に判断し、柔軟に対応できるようにする為に、教育委員会は何をしなければならないとお考えか伺います。
(3)不登校の子の学習権を保障する為に
教育機会確保法では、不登校になっても、教育を受ける機会は保障されるべきとしています。病気など以外の理由で年間30日以上欠席すると不登校とカウントされますが、1年間ほとんど学校へ行けてない、中には2年も3年も学校へ行けない子もいます。それでも、卒業年度になれば小学校あるいは中学校の「全過程を修了したことを証明する」という卒業証書をもらうことになります。
そこで子どもの意思を尊重するということを大前提にしたうえで、不登校の子どもに対して、行政としてどのような学習機会の保障ができるのか、伺います。
(4)「いちょう広場」が安心できる居場所となるために
「教育機会確保法」では、不登校児童生徒の休養の必要性が明記されています。
多くの不登校の子は、学校へ行けない自分を責め、自分の家以外 もうどこにも居場所がないことに苦しんでいます。日中、学校にいなければならない時間帯に家の外に出るのが怖い、ひたちなか市にいられない、市外に出るとやっと安心するという子、あるいは、昼間起きているのがつらくて昼夜逆転の生活を送っている子。毎日そんな苦しみをかかえる小中学生に対して、行政はどういう形で向き合えるのか。
ひたちなか市に安心できる居場所をつくることがどうしても必要です。
本市においては「いちょう広場」を適応指導教室というのをやめ、教育支援センターに改めていただいたこと、嬉しく思います。
文字通り「いちょう広場」が不登校の子を学校に適応させるために指導する場ではなく、不登校の子を支援する場として、心から安心できる居場所となることを求めます。そのために専門スタッフの配置、カリキュラムの工夫、研修の充実、室内環境の整備等必要と思いますが、いかがでしょうか。
答弁 野沢教育長
(1)学校はどう変われるか
1点目 義務教育においてはすべての児童生徒が等しく教育を受ける権利を有するところであり、不登校児童生徒においても十分な教育的支援をおこなうことが重要であるととらえています。また、不登校については、どの児童生徒にも起こりえるととらえ、学校・家庭・社会が不登校児童生徒に寄り添いながら、共感的理解と受容の姿勢で取り組む必要があると認識しています。
その視点に立ち学校は、すべての児童生徒が安心して生活できる魅力あふれる学校となるよう、本法律の文言にある通りその環境の整備に邁進していかなければならないと考えています。
2点目 すべての児童生徒が豊かに、そして安心して学校生活をおくれるようにするためには、学校生活の様々な場面で自分の居場所が保障されたり、友達との絆を深めたりすることが大切だと考えます。本市では、昨年度から市内全小中学校で魅力ある学校つくりに取り組んでいます。これは、日々の授業や行事等においてすべての児童生徒が活躍し、互いが認め合える場面を実現する絆つくりと、学級や学校をどの児童生徒にも落ち着ける場所にしていく居場所つくりを目指すものであり、これらの取り組みを通して、すべての児童生徒に対して不登校の予防と改善を図っています。
(2)個別の配慮
不登校児童生徒に対しては個々の状況や背景が異なることから、一人一人の実態に応じた支援が必要であると考えています。教育委員会としましても、特に発達障害などのある児童生徒に対しては適切な配慮や支援を早い段階からおこなう必要があると認識しています。
本市においては専門家による教育支援委員会を年に6回開き、幼児、児童生徒一人一人が、どのような教育的ニーズを必要としているのかを審議しています。
学校ではその内容をふまえ、個々の特性に応じた支援をおこなっています。また、市内には専門的な機関として、かなりや教室やみんなの未来支援室、医療機関や勝田特別支援学校などがありますので、教育委員会としましては早期の段階において支援機関と学校とをつなぎ、幼児、児童生徒に適切な支援ができるように努めているところです。
さらに障害に対する理解やかかわり方についての研修を実施し、教職員が適切に対応できるようにするとともに、各学校の特別支援教育コーディネーターを中心に学校内の研修の実施や支援体制の充実が図られるように助言指導をしています。
(3)不登校の子の学習の保障
一人一人の状況に応じて、学校や教育支援センターでどのような学習が提供できるか本人と相談したり、保護者と連携を図ったりしながら取り組んでいるところです。
教育支援センター、いちょう広場では通所する児童生徒一人一人に対応した学習支援をおこなうとともに、タブレットを活用した学習も展開しています。
家から外に出られない児童生徒については、心理学を専攻している大学生が心のサポーターとして家庭を訪問し、個々に寄り添った学習の支援もおこなっているところです。
また、学校においては、放課後の登校や別室登校による対応をおこなっており、登校できない児童生徒に対しては担任などが家庭訪問の際に個々の実態に応じた支援をおこなっています。
今後さらに教育支援センターや各学校の環境整備を進めるとともに、一定の要件を満たしたフリースクール等の民間施設との連携を図り、学校・家庭・民間施設と適切に情報を共有しながら学びの機会の充実に努めていきたいと考えています。
(4)いちょう広場について
現在いちょう広場では心理面、社会面から児童生徒を支援できるよう教員経験者や心理学専攻のスタッフを6名配置し、不登校児童生徒や保護者のニーズに応じた支援をおこなっています。
いちょう広場のカリキュラムについては、児童生徒の実態に応じて、心の居場所つくりから社会的自立に向け、キャッチ・トライ・チャレンジの3段階で活動目標を決めて支援をしています。
学習内容は、教科の学習の他、調理実習等体験を伴った様々な行事も実施しています。
また、いちょう広場の相談員は教育事務所や県の研修会に定期的に参加し、研鑚をつんでいます。
研修内容としては、他市町村の教育支援センターと現状や課題について情報交換等を行い、多様な支援のスキルを向上させているところです。
さらに本市の教育支援センターにおいて、週一回事例検討会をおこない、支援の在り方について所内研修をおこなっています。
室内環境の整備としては、本年度いちょう広場が温かく明るい雰囲気となるよう教室の床の張替えをおこなう予定です。また個々の特性や実態に応じて机の配置や活動場所を工夫し、通所児童生徒のさらなる居場所つくりに努めていきます。
今後も教育支援センターが不登校児童生徒への支援の中核となり、心から安心できる居心地の良い場所となるように努めていきます。
再質問 宇田
答弁で述べられたようなすべての子どもたちに居場所があり活躍の場のある学校にしていく、教室にしていくというご答弁をいただきました。けれどもそのような環境をつくっていくためには、先生方に目の前の子どもとじっくり向き合う時間がどうしても必要だと考えます。同僚議員のご答弁の中でも、「業務の効率化を進めていくけれども、なかなか時間の縮減は難しい、今後に期待したい」、というようなご答弁だったかと思いますが、私は根本的には教員を増やし少人数学級を実現するしか解決の道はないと考え、国・県に対して市として強く求めていただきたいと考えますが、いかがでしょうか。
答弁 教育長
教員を増やすということに関しては、本市では加配教員という形で毎年要望しています。今年も数十名の教員が加配ということで、少人数加配とか専門教科を教えるとか、それから36人以上の学級に対して新たに非常勤として付けるとか、さまざまな対応をしていますが、今後さらに増えるように県にも要望していきたいと思います。
再質問 宇田
次に学校における個別の配慮についてですが、一人一人の実態に応じた支援をおこなっていくという場合に、言うまでもなく子ども本人やその保護者の気持ちに寄り添う、その意向を十分に尊重して対応することが重要だと考えます。その際、子どもやその保護者は、心がすでに傷つき非常に弱っている、あるいは学校や教師に対して懐疑的・批判的な感情を抱いていることが多く、対応には、特別の配慮が必要だと思います。その対応次第で、言っていることは正しくても、子どもや保護者との関係でいわゆるボタンを掛け違えてしまうような状況におちいり、必要な支援につながらなくなるということは少なからずあるのではないかと思います。
そういう点で、教育委員会として考えていること、教育委員会が学校に対してできることは何か、伺います。
答弁 教育長
議員ご指摘の通り、一人一人の気持ちに寄り添うということは、大変重要です。さらにその一人一人の気持ちが大変デリケートで多様であることも認識しています。また心が傷つき弱っている児童生徒そして保護者に対しては、私たちは慎重にそしてかつ丁寧にかかわっていかなければならないと感じています。そういった点で教育委員会としては、まず一人一人の児童生徒に対して、またご家庭に対して、学校から相談を受けたもの、また報告を受けたものに対して適切な指導助言ができるよう専門家を含めた配置、助言ができるよう、チームとしてかかわっていきたいと思います。
一人の見立てではなく、また担任だけが抱え込むことなく大勢の目でどうしたら不信感を払しょくしたり、また適切な対応ができるかをみんなで考え支援していきたいと考えています。
再質問 宇田
チームとして、そして担任だけが抱え込むことがないようにというご答弁をいただきました。まず最初に、子どもとの最初の接点というのは学級担任なので、そこでこじれることが無いように、学級担任が抱え込むことが無いように、いろいろな制度を本市は持っていますので、スムーズにその制度につながるような支援をしていただきたいと思っています。
(4)いちょう広場についてですが、いちょう広場のカリキュラムとしてキャッチ・トライ・チャレンジというものがあるということで、以前にもこのことについ詳しく教育長からご答弁していただいたことがありますが、文科省がこの教育機会確保法を受けて出した基本指針の中で、「不登校児童生徒の支援に際しては、登校という結果のみを目標にするのではなく、児童生徒が自らの進路を主体的にとらえ、社会的に自立することを目指す必要がある」と述べています。
「いちょう広場」での支援において、「登校という結果のみを目標にするのではなく」という言葉を、私は、最大限尊重していただきたいと考えます。結果的に学校に行けるようになるのは素晴らしいことですが、支援の目標に最終段階であるにせよ「学校復帰」をあげることは見直す必要があると、この基本指針からも言えるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
答弁 教育長
議員ご指摘の通り、最終目標は学校の登校ではなく、私たちは社会的自立を目指した目標を持っています。そのために最初は人と触れ合うことができるようになる、まず心の安定から、そして自分に自信を持ちいろいろなものにチャレンジしていきそして困難なものにトライできる、この3段階をめざし、これは学校登校をめざした活動目標ではなく、社会自立をめざした活動目標であるとかかげやっているところです。
再質問 宇田
いちょう広場のカリキュラムの中に金曜日はチャレンジデーだと、言うことで「学校に行ってみない」というような、いろんな言い方でされているんだと思いますが、でも金曜日はチャレンジデーで学校に行く日だというのがある以上、やはり学校復帰が目的になるという圧迫というんですか、ストレスはいちょう広場にいく子どもたちにやっぱり絶えずかかるんじゃないかと思いますので、そこのところもぜひ今後は見直していただきたいと思います。
最後に、申し上げたいことは、以前も紹介したことがありますが、栃木県の高根沢町にある、教育委員会が運営する「ひよこの家」という教育支援センターでは、設立当初から学校復帰を目的にしない不登校の子のための支援をおこなっています。「学校に行く必要はないよ。ここで、勉強も受験の準備もなんでもできるからね。何も心配しなくていいよ」と言い続けていたら、逆に子どもの方から「そろそろ学校に戻ろうかな」と言い出した。そしてほとんどの子は在学中に学校に復帰している、ということをお聞きしました。この逆転現象に支援員自身が、驚かされた、ということです。
私は、この話をお聞きして、「学校」というものの魅力と、子どもが本来持っている力に信頼を寄せることが必要だと改めて感じました。
不登校の子が、就学年齢を過ぎれば、「引きこもり」という状態になります。
不登校の子が就学年齢にある間に、自己肯定感を取り戻し、自らの未来に希望が持てるような働きかけをお願いし、次の質問に移ります。