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わかっちゃいるけど浮かれちゃう

課題図書『遺伝子インフェルノ』/ありきたりの裏にあるモノ

2004-05-21 23:02:33 | 課題図書
前回からだいぶ間があいてしまったが、読了したので、つらつらと書いていこうと思う。

本作はSFである。がしかし、二瓶氏も指摘していた通り、SFとしてはありきたりで、正直新味はない。しかし、本作で注目すべきは、SFとしての道具立てではない。

それは、あくまで文明を肯定していることであると見た。一見、行き過ぎた人類文明に警鐘を鳴らしているかのようにも読めるが、そうでは無いと思えた。
最もはっきりとその事が表れた一編は、以下の様なものである。
文明を拒絶し、世間と隔絶され、採集生活をして暮らしていたムラの中で、一人の若者が蒸気機関を発明してしまう、というエピソード。

結局人間とは文明を形作るものであり、現在の姿は必然であると受け取れる。だから、人類は文明とうまく折り合いを付けることができる。無闇に恐れるなかれ、というようなメッセージだと思えた。

そして、ラストシーンでは人類は新たな可能性を見出す・・・
と、こういう風に書くと、余計陳腐に見えてしまうが、もちろん作品自体はそんなことはない。SFを敬遠している様な人にこそ、読んでもらいたい一冊だ。

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