はーぴー日記

イラストレーター&デザイナーはらだゆきこの日記です。

ピナ/渚/通夜

2006-04-18 02:18:54 | Weblog
3月後半から続いた仕事がやっとフィニッシュ。
今朝まで、台割に無いページのデザインをやる→あれ?このページどこに入るの?
→っていうかテキストも古いのじゃね?→とにかく今日全部上げないとまずいよ→
といった混乱した夢を何度見たことか…あとは色校戻しで終わりじゃ!!!

その仕事の合間に、半年前からチケットを買っていたピナ・バウシュを
むりやり見に行く。寝ぼけ眼でよろよろと。
演目は「カフェ・ミュラー」と「春の祭典」。
「トーク・トゥ・ハー」という映画の冒頭で二人の男主人公たちが出会うのが
このカフェ・ミュラーの舞台の客席。
真っ暗なステージ、乱雑に並ぶイスとテーブルのシルエット。
かすかな明かりで浮かび上がるふたつの回転扉。(最高に美しい!!)
そこから両手を上げて(ゾンビみたく)カフェの中を漂うピナ。
何千人も観客がいるのに、舞台のイスが1センチ動く音さえ
みんなが集中して聞いてるのがわかる。
音楽のライブで、こんなに舞台を注意深く見ることはないので、
そういうところに身を置いているだけで来て良かったなぁと思う。

痴話喧嘩のごとく、壁にお互いの身体をつかんではぶつけ、つかんではぶつけている男女。
激しく夢遊病者のように踊る女性がぶつからないように、ぎっしりならぶイスを
かきわけかきわけ踊るスペースを作る奉仕男。
この男が激しく踊る女性と恋に落ちるかと思えば、
なんだかもっさりした男がやってきて、激しく踊る娘とくっつく。
くっつくというか、奉仕男が二人をせっせとキスさせたり、
お嬢様だっこさせたりとここでも世話を焼く。
誰ともかかわらず、ひっそりとすみっこで踊るピナ。
すみっこだけど、存在感はすごい。哀しくて、ときにヒステリックな、
女の生理そのものな感じのその動きは、どこかに嫌悪を感じつつ
引き込まれる。
ステージの上では、現実だったらやりきれない思いが充満しているんだけど、
こちらに伝わるときには、「今、すごいものを見ている!!」というなんだか言葉にできない
気持ちになった。
不幸を煮詰めて、このうえなく美しいものに変えてしまったような舞台。

「春の祭典」はストラビンスキーの曲に合わせての、群舞。
いままで、かなり芝居の要素を取り入れた演目しか見てなかったので、
今回のように二つとも台詞なしでひたすら踊るのを見るのはとても新鮮。
ステージに土が盛られて、40人ほどが男女別に群舞。
こりゃすごい。どんどん土で汚れていく男女。
生命力に満ちた春の精がわっさわっさと踊り狂ってるような
光景。桜が咲く前の桜の木の中じゃ、こんなことが起こってるんじゃないかと思った。

ちなみに会場は、半蔵門の「国立劇場」。※新国立劇場じゃないよ。
この建物、最高にかっこいいんですよ。
一~二階には吹き抜けになっていて、周りがぐるーっと回廊になっており、
日本の名画(巨大/本物)がずらっとかかっていて、これを全部見るのにもかなり時間がかかる。
絵のセレクトもなんか微妙にいい。無料のひろびろとしたお茶処もあるし、
花火をそのままガラスで固めちゃったような巨大照明、
一階ロビーの日の丸を表してるっぽい巨大ソファー(赤くて丸くてきっちり座ったら
30人くらい座れそう)がいくつも!ぜひ何かの際、足を運んでみてください。

先週日曜日は渚音楽祭。
久しぶりの開放感ーーーーーーーー
いくら仕事が好きでも、何週間もパソコンの前に日に20時間もいたら(そんなにいない)
やはりなにかが澱のようにたまってくるものです。
そのあたりを、渋さ(あと2時間見たかった!!)とサンパウロ(かっこよすぎーー)
が洗い流してくれました。


今日は知人のお通夜。
突然人が亡くなると、現実感が持てない。
本人もぴっくりしてるんじゃないかなぁ。
なんだか顔も見れなかった。
帰り道、彼女はいつもこの電車に乗っていたんだなぁと思うと
やっぱりまだこのへんにいるような気がしました。
あっちでも、こっちにいたときみたいに楽しく暮らしてください。