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労働28事件 人格権の尊重―関西電力事件

2012年03月07日 | 労働百選

労働28事件 人格権の尊重―関西電力事件

関西電力株式会社
http://www.kepco.co.jp/
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%96%A2%E8%A5%BF%E9%9B%BB%E5%8A%9B
関西電力株式会社(かんさいでんりょく)は、近畿地方2府4県(京都府、大阪府、滋賀県、兵庫県(赤穂市福浦を除く)、奈良県、和歌山県)および福井県(三方郡美浜町以西)、三重県(熊野市[1]以南)、さらには岐阜県不破郡関ケ原町の一部を営業区域とする電力会社。

略称として関電(かんでん)や、KEPCO(Kansai Electric Power Co., Inc.=ケプコ)が使われる。

関西電力株式会社
The Kansai Electric Power Company, Incorporated 

KEPCO-bldg-01.jpg

関西電力本店がある関電ビルディング(奥の高層ビル)。手前のビルはダイビル本館(旧大阪ビルヂング:解体済み)。
種類 株式会社
市場情報 東証1部 9503
大証1部 9503
名証1部 9503
 
略称 関電、KEPCO
本社所在地  日本
〒530-8270
大阪府大阪市北区中之島三丁目6番16号
設立 1951年5月1日
業種 電気・ガス業
事業内容 電気事業、電気機械器具の製造・販売、熱供給事業他
代表者 取締役会長 森詳介
取締役社長 八木誠
資本金 4893億2000万円
(2011年3月31日現在)
売上高 連結 2兆7697億円
単体 2兆4759億円
営業利益 連結 2738億円
単体 2251億円
純利益 連結 1231億円
単体 1033億円
純資産 連結 1兆8324億円
単体 1兆4948億円
総資産 連結 7兆3101億円
単体 6兆4575億円
従業員数 連結 3万2418人、単体 2万277人
(2011年3月31日時点)
決算期 3月31日
主要株主 大阪市 9.29%、日本生命 4.76%、日本トラスティ・サービス信託銀行(信託口)4.28%、神戸市 3.03%、日本マスタートラスト信託銀行(信託口)2.44%、関西電力持株会 1.77%、みずほコーポレート銀行 1.44%、三井住友銀行 1.23%、三菱東京UFJ銀行 1.05% 2010年3月31日時点「関西電力 アニュアルレポート p.66」より
主要子会社 きんでん、ケイ・オプティコム


http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=73145&hanreiKbn=02
事件番号 平成4(オ)10
事件名 損害賠償
裁判年月日 平成7年09月05日
法廷名 最高裁判所第三小法廷
裁判種別 判決
結果 棄却
判例集等巻・号・頁 集民 第176号563頁
原審裁判所名 大阪高等裁判所
原審事件番号 昭和59(ネ)1072
原審裁判年月日 平成3年09月24日
判示事項 会社が職制等を通じて特定政党の党員又はその同調者である従業員を監視し孤立させるなどした行為が人格的利益を侵害する不法行為に当たるとされた事例
裁判要旨 会社が、特定の従業員につき、同人らにおいて現実に企業秩序を破壊し混乱させるおそれがあるとは認められないにもかかわらず、特定政党の党員又はその同調者であることのみを理由として、職制等を通じて、職場の内外で継続的に監視する態勢を採った上、極左分子であるなどとその思想を非難して同人らとの接触、交際をしないよう他の従業員に働き掛け、同人らを職場で孤立させ、その過程の中で、退社後尾行したり、ロッカーを無断で開けて私物の手帳を写真に撮影したりしたなど判示の事実関係の下においては、右一連の行為は、職場における自由な人間関係を形成する自由を不当に侵害するとともに、その名誉を毀損し、プライバシーを侵害するものであって、人格的利益を侵害する不法行為に当たる。
参照法条 民法709条,憲法19条
全文 http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/js_20100319133119343257.pdf

         主    文
     本件上告を棄却する。
     上告費用は上告人の負担とする。
         理    由
 上告代理人松本正一、同野嶋董、同山田忠史、同竹林節治、同橋本勝の上告理由
第一点の一ないし三及び五について
 所論の各文書は、その元となる文書に代わる写しとしてではなく、それ自体が原
本として提出されたものであり、記録によれば、その元となる文書の存在及び成立
並びに右各文書がその写しとして作成された過程についての立証がされたという原
審の認定も是認し得るところであるから、右各文書を証拠として採用した点に所論
の違法はなく、その他右各文書の取調べの適否に関する原審の判断は、いずれも正
当として是認することができる。したがって、原判決に所論の違法があるとはいえ
ない。論旨は、右と異なる見解に立って原判決を論難するか、又は、帰するところ、
原審の専権に属する証拠の取捨判断を非難するものであって、採用することができ
ない。
 同第一点の四について
 原審の認定するところによれば、所論の各文書又はその元となった文書が、窃取
されたものとすることは困難であるし、仮に窃取されたものであるとしても誰が窃
取したかは不明であるというのであり、右認定は、原判決挙示の証拠関係に照らし
て肯認するに足りる。そうであれば、上告人においてこれらの文書を保管中に紛失
し、その不知の間に相手方挙証者である被上告人らの入手するところとなったとい
うだけでは、右各文書の証拠能力は否定されないとした原審の判断は正当であって、
原判決に所論の違法はない。証拠能力に関する立証責任についての所論を含め、論
旨は、原審の認定しない事実をまじえ、独自の見解に基づいて原判決を論難するも
- 1 -
のであって、採用することができない。
 同第二点及び同第三点について
 所論の点に関する原審の事実認定は、原判決挙示の証拠関係に照らして肯認する
に足りるところ、これらを含む原審の適法に確定した事実関係によれば、上告人は、
被上告人らにおいて現実には企業秩序を破壊し混乱させるなどのおそれがあるとは
認められないにもかかわらず、被上告人らが共産党員又はその同調者であることの
みを理由とし、その職制等を通じて、職場の内外で被上告人らを継続的に監視する
態勢を採った上、被上告人らが極左分子であるとか、上告人の経営方針に非協力的
な者であるなどとその思想を非難して、被上告人らとの接触、交際をしないよう他
の従業員に働き掛け、種々の方法を用いて被上告人らを職場で孤立させるなどした
というのであり、更にその過程の中で、被上告人B1及び同B2については、退社
後同人らを尾行したりし、特に被上告人B2については、ロッカーを無断で開けて
私物である「民青手帳」を写真に撮影したりしたというのである。そうであれば、
これらの行為は、被上告人らの職場における自由な人間関係を形成する自由を不当
に侵害するとともに、その名誉を毀損するものであり、また、被上告人B2らに対
する行為はそのプライバシーを侵害するものでもあって、同人らの人格的利益を侵
害するものというべく、これら一連の行為が上告人の会社としての方針に基づいて
行われたというのであるから、それらは、それぞれ上告人の各被上告人らに対する
不法行為を構成するものといわざるを得ない。原審の判断は、これと同旨をいうも
のとして是認することができる。また、原判決が上告人による行為として認定判示
するところは、右に説示した限りにおいて、不法行為としての違法性評価が可能な
程度に各行為の態様を示しており、その特定に欠けるものではない。論旨は、帰す
るところ、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するか、前記説
示と異なる見解に立ち若しくは原判決を正解せずにこれを非難するか、又は原判決
- 2 -
の結論に影響しない説示部分を論難するものであって、採用することができない。
 同第四点について
 原審の適法に確定した事実関係の下においては、被上告人らが本件損害及び加害
者を知ったのは、労務管理懇談会の報告書を見た昭和四六年のことであって、本訴
請求権は時効によって消滅していないとした原審の判断は、正当として是認するこ
とができ、原判決に所論の違法はない。論旨は、原判決を正解せず、又は右と異な
る見解に立って原判決を論難するものであって、採用することができない。
 よって、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主
文のとおり判決する。
     最高裁判所第三小法廷
         裁判長裁判官    千   種   秀   夫
            裁判官    園   部   逸   夫
            裁判官    可   部   恒   雄
            裁判官    大   野   正   男
            裁判官    尾   崎   行   信